【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 今週の注目テーマは、「日本の半導体大手企業の増産スピードが、追い上げる中国企業に比べて明らかに遅く、その代償を払う可能性があること」、「日本の介護産業における中国での3つの発展トレンド」などである。
日本の半導体企業、「抑制」が代償となる可能性
今回のAI産業の爆発的成長は、長年にわたり優位性を誇ってきた日本の半導体材料企業に好況をもたらしている。だが、注意すべき現象が一つある。それは、日本の大手企業の増産スピードが、追い上げる中国企業に比べて明らかに遅いことだ。
例えばドリルピンでは、中国の鼎泰高科(Dingtai High-Tech)は2026年の月間生産能力がすでに1億6000万本を突破し、毎月1000万本のペースで増産を続ける計画だ。電子用ガラス繊維布の分野では、中材科技(Sinoma Science&Technology)、宏和科技(Honghe Technology)、菲利華(Feilihua)など中国企業がここ2年の間に数千万メートルの特殊布の生産ラインを相次いで立ち上げている。これに対し、日本の日東紡の高機能ガラス繊維布の新ラインは量産開始が早くても2027年になる見込みだ。また、ユニオンツールのドリルピン市場シェアは低下の一途をたどっている。
なぜ日本企業はこれほど増産に慎重なのか。その一因は、過去数回の産業サイクルで刻まれた「トラウマ」にある。日本の電子材料産業は、1980年代末の半導体バブル、2000年代のDRAM崩壊、2010年代の民生電子機器産業の移転を経験してきた。完全なサイクルを経てきた日本企業は、眼前のAIブームだけで需要が長期的に続くと判断することが難しい。彼らの見方では、AIの需要曲線がどんなに急であっても、それは今日が次のサイクルのピークではないことを証明するものにはならない。
もう一つの理由は、日本の上場企業のガバナンス構造の変化だ。近年、東京証券取引所の改革や株主還元圧力を受け、日本企業は投下資本利益率(ROIC)や投資回収の確実性をますます重視するようになっている。先端材料の生産ラインには軽く数百億円の投資が必要で、回収期間は5〜8年に及ぶ。十分に確実な受注が見込めなければ、こうした投資は社内の決裁を通りにくい。
だが問題は、増産を控えることで本当に代償を払わなくて済むのか、ということだ。
技術的参入障壁が極めて高い分野では、答えは「ノー」かもしれない。供給が需要に追いつかない場合、企業は値上げでより高い利益を得られる。味の素のABFフィルムや三井のキャリア銅箔はその典型例だ。顧客が短期間で代替品を見つけられない限り、増産を抑えることは経営戦略としても成り立つ。
しかし、技術的参入障壁がそれほど高くない分野では、状況はまったく異なる。ドリルピン、1世代・2世代の低誘電率布、標準HVLP銅箔などの分野では、中国企業が認証のハードルを突破し、コストと増産スピードを武器に日本企業のシェアを奪い続けている。
日本企業がより警戒すべきは、シェア変動は氷山の一角にすぎず、真の変化は顧客のサプライチェーン内部で起きていることだ。
日本企業が「割り当て制御+価格引き上げ」の戦略を取るとき、NVIDIA、AMD、そして大手クラウドサービスプロバイダー(CSP)は供給を確保するため、やむを得ず第2、第3のサプライヤーを探さざるを得なくなる。これは実質的に、中国企業に最も貴重なものであり、認証の機会と実際の受注を提供することに他ならない。
供給不足が1年続くごとに、潜在的代替業者と日本企業との技術格差は一段階縮まる。振り返れば、日本がDRAM、パネル、リチウムイオン電池材料などの分野でシェアを失った過程には、いずれも類似のパターンがあった。すなわち、既存サプライヤーの供給能力が不足し、顧客が新たなサプライヤーを育成せざるを得なくなり、新サプライヤーが受注を得て急速に学習・改善を重ね、最終的に「予備」から「競合」へと変貌を遂げたのである。
したがって、今日の日本半導体企業の増産の遅さがもたらす真のリスクは、短期的にどれだけの受注を失うかではなく、競合他社の成長サイクルを自ら短縮させてしまうことにある。これこそが、日本の半導体が警戒すべき点だろう。すなわち、供給不足のために顧客がやむを得ず競合を育成せざるを得なくなったとき、失うのは眼前の市場だけではなく、将来の市場でもあるのだ。
日本の介護産業が中国で見せる3つのトレンド
8月、日本の介護用品企業である山下とWelfanは、2030年までに中国で「山月輪秋シルバーライフ体験館」を100店舗開設する計画を発表した。
近年、認知症ケア施設から高齢者向け用品チェーン、介護人材育成からスマート介護システムに至るまで、日本の介護産業はかつてないスピードで中国市場に参入している。なぜなら、これは巨大なポテンシャルを秘めた市場だからだ。2035年までに中国の60歳以上の人口は4億人を超えると見込まれている。中国のシルバー経済市場規模は、2025年の8兆元から2035年には30兆元に成長すると予測されている。
今のところ、日本の介護産業は中国で主に4つの協業パターンを取っている。
第1に、日系企業が直接運営し、「日本基準」を中国に持ち込むパターンで、最も代表的なのは日本美邸(MCS)だ。
第2に、介護製品を販売し、「日本製」を中国の家庭に届けるパターンで、山下とWelfanの100店舗計画がこれに当たる。
第3に、技術・人材協力で、日本の「介護経験」を輸出するパターンで、例えば威海技師学院と大阪社会福祉専門学校が連携して人材を育成している。
第4に、モデル革新で、「施設建設」から「エコシステム構築」へとシフトするパターンで、日本の木下グループは長沙で団地の管理会社と協力し、健康管理センターを開設して地域高齢者にサービスを提供している。
業界関係者の分析では、今後日本の介護産業は中国で次の3つのトレンドが見込まれる。
第1に、「製品販売」から「サービス販売」へ。第2に、「施設建設」から「コミュニティ進出」へ。第3に、「単発協力」から「システム協力」へ。
政府間の政策対話、業界間の基準接合、企業間の深層連携により、中日介護協力は点在するビジネス展開から、体系的な産業協力へと発展していくだろう。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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