【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 今週のテーマは、「在中国日系企業には正しい戦略的ローカライゼーションが不可欠、さもなければ危険な状況に」、「日系企業は中国の地場企業が持つ、外資系には決してまねのできない“スーパーパワー”を活用すべき」、「自動車電子部品メーカーのタムラ製作所が中国市場からの撤退を加速」などである。
「現状維持」は危険、「深耕」と称する自己満足も問題を解決しない
多くの在中国日系企業は「現状維持」を安全戦略と見なしている。しかし今、この「中間ゾーン」は消えつつある。「深耕」するか、「撤退」するか。「現状維持」は「死を待つ」ことと同義になりつつある。中国の地場ブランドが次々と台頭し、欧米企業も事業調整を急ぐ中、中国市場は傍観者でいられる市場ではなくなりつつある。
では、「深耕」とは何か。
多くの日系企業に存在しているのが、中国での深耕とは単に投資を拡大し、従業員数を増やし、あるいは中国人を総経理に任命することだという誤解である。しかし、こうしたやり方では根本的な問題は解決されない。たとえ総経理が中国人でも、戦略決定は依然として本社が掌握し、中国チームは単なる「翻訳役」にすぎない。部長クラスは大幅に現地化されても、経営層は日本人主導のままである。中国現地法人にできるのは本社製品の販売だけで、地場ブランドに対抗する競争力を欠いている。その結果、中国人材は「実行能力」を身につけはしても、真の「経営判断力」を獲得できていない。
真の深耕とは、本質的に経営主体の現地化である。すなわち、中国現地法人を本社が遠隔操作する末端組織から、自律的に環境を感知し、自ら判断し、自己成長できる経営主体へと変革することである。
第一に、戦略の現地化である。中国チームは相応の経営決定権を持ち、同時に本社の戦略策定に参画し、中国市場の実情に適合した中期計画を策定すべきであり、本社の予算や任務を受動的に実行するだけであってはならない。
第二に、人材の現地化である。象徴的に中国人を総経理に任命するのではなく、体系的な人材育成メカニズムを構築し、中国人管理者が真に独立した判断と意思決定を行う能力を身につけることを可能にすべきである。
最後に、イノベーションの現地化である。中国現地法人は単に本社製品の販売チャネルであるべきではなく、中国市場に合わせて独自に製品を開発し、マーケティング、販売、サービスといったバリューチェーン全体を掌握すべきである。
在中国日系企業には成功事例が少なくない。ユニクロ中国は完全なサプライチェーン、デザイン、マーケティング体制を構築している。資生堂は中国を「第二の本社」と位置づけ、中国経営陣の決定権を引き上げた。トヨタは中国に販売体制と研究開発センターを確立している。
したがって、真に中国での深耕を目指す日系企業が自問すべきは、「中国チームは実行できるか」ではなく、情報が不完全で本社が答えを出せない状況でも、「中国チームが独自に正しい経営判断を下せるか」である。これこそが、日系企業が真の現地化を達成しているかどうかを測る鍵であろう。
日系企業は中国企業の「スーパーパワー」を活用すべし
先日、京東物流がユニクロの親会社であるファーストリテイリングと戦略的パートナーシップを締結したことを発表。京東物流はファーストリテイリング傘下のブランド向けに、アジア、北米、ヨーロッパ、中東の4市場をカバーする海外配送サービス体系を構築し、店舗とECの在庫連携を最適化し、AIを活用した需要予測精度の向上、自動化倉庫や物流ロボットの応用を探求する。
なぜファーストリテイリングは京東物流を選んだのか。重要な理由の一つは、京東が中国という極めて競争の激しい市場で約20年にわたり鍛え上げられ、強力なサプライチェーン能力を形成してきたことにある。
中国は極度の「内巻」(過当競争)市場であり、消費者は商品の質だけでなく、配送の速さも求める。EC競争に対応するため、京東は早期から自社物流網を構築し、地域ごとの消費需要を予測して、商品を消費者により近い倉庫に事前配置してきた。「211限時達」(注:午前11時までの注文で当日配送、午後11時までの注文で翌日配送)の背後にあるのは、単なる配送速度だけでなく、需要予測、在庫配置、受注変動、倉庫備蓄・配送を連携させたサプライチェーンシステムである。
ファーストリテイリングは世界有数のアパレル小売大手であり、ユニクロ、GU、Theoryなどのブランドを擁し、多くの国・地域で事業を展開している。企業規模が大きく、事業チェーンが長いほど、物流体系への要求は高度化する。
京東物流が蓄積したノウハウと、すでに海外に展開している倉庫網を活用することで、ファーストリテイリングは商品を消費者に近い場所に事前に配置し、配送時間を短縮できる。かつては「注文を受けてから中国から発送」という体制だったが、今や「商品はすでに近くの倉庫にある」という状態が実現可能になる。
この件は日本企業にとって重要な示唆を与えている。中国市場は顧客やサプライチェーン、生産能力を提供するだけでなく、世界水準のビジネス能力をも育むことができる、ということである。
当研究院では、「中国のような極端な競争環境で成長した企業は、特定の分野で極めて強い能力を持つことが多い」と見ている。日本企業はファーストリテイリングと京東の協業モデルを参考に、中国企業を単なるサプライヤーとしてではなく、彼らが既に形成している優位性を積極的に活用し、自社の事業発展を推進すべきであろう。
自動車電子部品メーカーのタムラ製作所、中国市場からの撤退を加速
先日、株式会社タムラ製作所は、自動車電子事業を手がける田村汽車電子(佛山)有限公司の譲渡を完了したと発表した。買収先は中国企業の仏山市南海矽鋼鉄芯製造有限公司であり、田村製作所は約7億円の譲渡益を見込んでいる。
近年、一部の日本製造企業は、グローバルサプライチェーンの再構築、地政学的変化、コスト上昇圧力を背景に、海外拠点網の圧縮と資産の最適化を進めている。特に中国市場では、地場サプライチェーンの成熟、競争激化、収益率の縮小に伴い、中核事業を維持し、非中核資産を売却、あるいは株式譲渡によって経営の軽量化を図る日系企業が増えている。タムラ製作所による佛山の中国子会社の譲渡は、まさにこの流れの典型例である。
実際、タムラ製作所はこれより前に在中国事業拠点の3割削減を発表している。さらに以前には、合肥博微田村電気有限公司における日本側株主の完全撤退も完了している。タムラ製作所は単発的なプロジェクト調整ではなく、在中国事業全体の体系的な再構築を進めていると思われる。
自動車電子や精密製造などの分野では、中資企業が資金力、販路、産業シナジー面での優位性を強めており、一部の外資出資案件の戦略的価値が相対的に低下している、と業界関係者は指摘する。こうした状況下で外資側が撤退を選択しても、それは中国市場がもはや重要でないことを意味するわけではなく、直接出資・経営から、資産回収、間接協力、あるいはサプライチェーン連携へと関与の仕方が変化しつつあることを物語るものである。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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