【毎週日系企業ウォッチ】


研究院オリジナル 今週のテーマは、「なぜ日系企業は中国人に引き継がれると“卷”(インテンシブ、過酷な競争)」になるのか?」、「広汽ホンダは完全撤退の危機に瀕しているのだろうか?」、「ユニクロの成功を支える中国企業とは」などである。


日本本社の「寛容さ」がなければ、在中国法人は「巻」になる


近年、多くの在中国日系企業が経営体制を大きく見直している。日本本社は駐在員を派遣せず、年間の利益評価権限のみを掌握する。日常運営・人事・コストはすべて中国側責任者に委ねる。その結果、わずか1~2年でこれらの日系企業の社風は一変し、それまでの「穏やか」な特徴が次第にすっかり失われていった。


まず変わったのは給与・業績評価だ。数十年にわたる年功序列型賃金が、中国民間企業のような高強度の業績連動型に切り替わった。月次目標が個人単位に細分化され、週ごとにデータをレビューし、四半期ごとにランキングを公表する。下位ランクの者は異動やボーナス減額の対象となる。勤続年数はもはや「保護傘(うしろだて)」ではない。長年勤めてきたベテラン社員でも、成果が目標に届かなければ収入は大幅に減少する。一方、若い営業職や業務の中核人材は実績を出せば短期間で賃金・役職がベテランを超える。内部競争は意図的に激化させられ、全員が毎月の数字に常に不安を抱えるようになる。


次に顕著なのは、限界までのコスト圧縮だ。これも中国側マネジメントの最も際立った特徴である。かつて日本側管理職は、利益が多少薄くても、従業員福利厚生を十分に維持し、残業手当を適正に支払い、チームビルディング予算も確保していた。今や中国側マネージャーは本社の厳しい収益目標を背負い、利益の穴は内部の圧縮で埋めるしかない。年次健康診断の縮小、祝日手当の削減、チームビルディング経費のカット。人員枠を厳しく制限し、一人多役が常態化し、容易に新規採用は行わない。労働時間管理を緩め、残業を黙認あるいは暗に促し、長時間労働で人件費を薄める。


最も顕著な違いは、失敗を許容する余地が消えたことだ。日本側主導の時代には、新事業や新製品には試行錯誤が許され、市場変動や短期的な損失もコミュニケーションを通じて調整できた。中国側運営後は、すべてが当期の決算報告を中心に動く。ある製品ラインが2四半期連続で目標を下回れば、即座に予算削減・チーム縮小が行われる。新プロジェクトは短期的な成長が見込めなければ、すぐに中止・損失カットされる。かつての「着実に進め、長期的に布石を打つ」思考は完全に消え去り、全員が持続的な全力疾走のストレス状態に陥る。


なぜ中国人が引き継ぐと“卷”(インテンシブ、過酷な競争)になるのか。経営文化の違いに加え、直接的な原因は、中国法人の日常管理を中国人に任せた後、遠くの日本本社が中国国内の経営プロセスに関与せず、最終業績データだけを見て、赤字になればすべて中国側経営陣のせいにするため、緩衝の余地がないことだ。かつて中国法人の日本人管理職は、業界の低迷や為替変動があれば、本社に直接働きかけて評価基準の緩和を求めることができた。今や中国側管理職には本社の「寛容さ」がなく、コスト削減と業績引き上げによって目標を達成するしかない。


広汽ホンダは次の撤退者となるだろうか?


2026年6月、広汽ホンダの黄埔工場、このホンダが中国に初めて設立した合弁完成車工場が正式に生産を停止した。5月の広汽ホンダの販売台数はわずか9,058台で、前年同月比32.5%減だった。わずか4年前の2022年にはこの数字は7万4,000台にものぼっていた。


広汽ホンダの合弁契約の期限は2028年5月13日である。これまでにスズキ、アキュラ、三菱などの日本ブランドが相次いで中国市場から撤退しており、業界では次は広汽ホンダではないかとの見方が出ている。


象徴的な出来事として、日系電気駆動コアサプライヤーのニデックが、広汽との合弁会社を解散することを決定した。この企業はホンダの中国向けハイブリッド・純電動車両にモーターやインバーターなどのキーコンポーネントを供給してきた。


実際、ホンダの中国事業は非常に厳しい状況にある。2025年のホンダの中国実生産台数は約68万台であったが、生産能力は約120万台規模のため、設備稼働率は約5割にとどまる。多くのラインが遊休状態にあり、固定費を償却できず、1台あたりの製造コストは上昇し続けている。日本経済新聞の試算によると、広汽ホンダの1台あたりの損失は約19万円に上る。


財務状況の悪化はさらに深刻だ。2025年、広汽ホンダの親会社帰属純利益は878億4,000万円(87.84億元)の巨額赤字となり、2005年の株式改革以来初の年間赤字となった。合弁セグメントの収益力は「キャッシュカウ(稼ぎ頭)」から完全に損失源に転落した。広汽ホンダの総資産は2023年上半期の520.36億元から、2025年上半期には250.83億元にまで急減し、2年間で約270億元(約52%)減少した。


業界では、ホンダの中国市場での敗因は、日本本社主導で開発したグローバルプラットフォームを、合弁会社を通じて導入する従来型モデルを踏襲したことにあると見る。この方式はガソリン車時代には有効だったが、中国の電動化・インテリジェント化の急速な進化の中で完全に機能しなくなった。日本本社でのプロジェクト立ち上げから中国市場での発売まで、通常3~4年のサイクルを要する。一方、中国国産ブランドの製品更新サイクルは既に12~18か月に短縮されている。


現在、広汽ホンダの合弁契約更新交渉はまだ完了していないが、両社の隔たりは大きく、更新されない可能性もあるとの見方が業界にある。東風ホンダの契約期間は2043年まで延長されているが、こちらも不透明さを抱えている。広汽ホンダの協力関係に変化があれば、東風ホンダにも影響が及ぶだろう。


ユニクロを支える中国の力


「世界一の工場がなければ、ユニクロは決して世界一のブランドになれない」。ユニクロ創業者・柳井正氏のこの言葉は、中国で見事に具現化されている。中国の2つの繊維アパレル企業が、ユニクロの背後にある強力な支えとなっている。


1990年代半ば、中国のテキスタイル素材企業である魯泰紡織(Lutai Textile)がユニクロとの協業を開始した。魯泰はユニクロのために専用の生産ラインを構築し、ユニクロのパターンに独自に対応している。綿花栽培から紡績・織布・染色加工までを一貫管理し、ユニクロの素材安定供給を保証している。


さらに重要なのは、両社が「開発パートナー」となったことだ。長年にわたる深い協力により、ユニクロのエアリズム、ヒートテック、ノーアイロンシャツなどの主力商品の開発・刷新が支えられている。特にユニクロのヒット商品である「ノーアイロンシャツ」の生地は、魯泰が10年間にわたって蓄積した技術の成果である。


もう一つの企業、晨風集団(Chenfeng Group)はユニクロのシャツの中枢を担う。晨風はユニクロのために33万平方メートル(約333畝)の専用シャツスマート工場を建設した。2025年までに、晨風はユニクロの中国向けシャツ生産能力の80%を担い、年間5,000万枚以上を供給しており、ユニクロ最大の完成品サプライヤーとなっている。さらに、ユニクロのシャツパターンライブラリや工程標準の主導権はユニクロではなく、晨風にある。


そしてこの協力は中国から世界へと広がりつつある。今年1月、ユニクロの親会社であるファーストリテイリングは、魯泰紡織・晨風集団と合弁で「天琴国際公司」を設立し、カンボジアに「紡績・織布・染色」から「縫製・ブランド輸出」までの垂直統合生産拠点を建設している。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。


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