海外進出をしないと、アウトする。いまや多くの中国企業が、かつてのように国内成長にのみ依拠するビジネスロジックはもはや通用しないことを認識している。生産拠点や販売市場を海外に求めることは、「選択肢」ではなく「不可欠な対応」となっている。


中国企業の海外進出は、重大な機会に直面している。世界経済発展の歴史が示すように、単なるモノの輸出から資本のグローバル展開へと進むことは、経済発展、とりわけ大国の発展に不可欠なステップである。先ごろ開催された中国共産党中央委員会の記者会見で、商務部の王文涛部長は「第15次5カ年計画」期間の対外開放について、GDP(国内総生産)のみならずGNI(国民総所得)にも注目し、「中国経済」と同時に「中国人経済」を重視していく方針を述べた。


しかし、広大かつ複雑な世界市場を前に、中国企業の海外進出は決して平坦な道のりではない。各国の投資政策の変動、市場多様化に伴う適応プレッシャー、地域ごとに異なるユーザーニーズ、現地法規制へのコンプライアンス対応、人材の不足など、かつてない現実的な課題が立ちはだかっている。「情報の非対称性」と「事業環境への不適応」は、中国企業のグローバル化を阻む最大のボトルネックとなっている。


こうしたなか、日本の五大総合商社の一つである丸紅(Marubeni)は、中国企業とグローバル市場との協調的な発展を推進すべく取り組んでいる。丸紅株式会社執行役員兼中国総代表、丸紅(中国)有限公司董事長の下司功一氏は最近、中国企業が海外進出を試みる際、丸紅は世界各地に広がる人脈やビジネスネットワークなどを活用し、業務提携という形で中国企業と共に歩むことができると示した。


「これは投資とは異なりますが、意思決定が早く、商社としての役割を即座に発揮することができます。これにより、日本と中国の間に新しいビジネスモデルを構築し、現地規制や資本効率に適合した形でビジネスを発展させることが可能になるでしょう」と下司氏は述べている。


グローバルネットワークと知見が海外進出の基盤を築く


丸紅は1972年に中国市場に進出して以来、50年以上にわたって市場を深く開拓し、130社以上の三資企業を設立し、長年にわたり高い貿易総額を維持してきた。事業分野は農業、エネルギー、物流、医療など多岐にわたる。


現在、中国企業の海外進出を支援することも丸紅の重要な事業の一つである。丸紅はこの領域での核心的な強みを以下の『事業全体を支援できる「総合力」』に帰している。


・グローバルネットワーク:世界中の拠点網を活かし、現地のリアルな情報を提供可能。


・ワンストップ機能:工業団地の提供だけでなく、各事業の専門部隊が連携し、原材料の調達から販路開拓まで一貫して支援可能。


・長期的に蓄積してきた信頼と実績:現地政府や有力企業との長年の信頼関係を活かし、お客様の事業を円滑に進めることが可能。


実際、丸紅は1980年代よりアジアの工業団地事業の推進に取り組んでいる。


丸紅はタイのラクラバン県工業団地、フィリピンのFirst Cavite工業団地、大連の工業団地を含め6ヵ国・計7ヵ所の工業団地を開発・運営してきた実績があり、現在は6ヵ国・12ヵ所の工業団地を取り扱っている。これにはインドネシアのMM2100工業団地、ベトナムの北部アマタシティ・ハロン工業団地、南部アマタシティ・ロンタン工業団地、ミャンマーのティラワ経済特区、タイのアマタシティ・チョンブリ工業団地、アマタシティ・ラヨーン工業団地、フィリピンのリマ工業団地、タ―ラック工業団地、ウエストセブ工業団地、インドのスリシティ工業団地、リライアンス工業団地およびインドスペースレンタル工場が含まれる。


中国企業がこれらのプロジェクトに進出したい場合、丸紅の「直通便」を迅速に利用できる。


丸紅は世界中での投資および事業推進に極めて豊富な経験を有しており、67か国にわたって整備された市場情報データベースを構築している。また、これらの情報を全社データベースとして一元管理を行うなど積極的にデジタルツールを活用しており、現地のリアル情報を提供することが可能である。


丸紅は多様な手法を通じて、工業団地の開発と運営に参画している。財新網の2025年9月の報道によれば、丸紅はベトナム北部の沿海クアンニン省に位置するアマタシティ・ハロン工業団地の株式20%を取得し、同国での事業展開を拡大した。アマタシティ・ハロン工業団地には、中国の太陽光発電設備メーカーであるジンコソーラーがすでに進出している。


丸紅の担当者は次のように述べている。「丸紅は、単なるコンサルタント・業務委託先ではなく、お客様の「事業パートナー」として、長年培ったグローバルネットワークと各市場に対する知見を駆使して、事業成功をご支援させていただきます。」


成功事例は協業の価値を示す


工業団地事業において、丸紅は「次世代型工業団地」を構築し、先端・デジタル技術により環境配慮と利便性向上を追求した質の高い工業団地の開発・運営に取り組んでいる。従来型の工業団地と比べ、次世代型工業団地は環境保護と運営効率をより重視している。


インドネシアのMM2100工業団地での取り組みを事例として、丸紅は高品質な工業団地の開発・運営における具体的な実践を示した。MM2100工業団地の入居企業様向けサービスの利便性向上を目指し、丸紅は2021年11月新たにサービスポータルアプリを開発・導入した。ユーザーはスマートメーターにより計測された給排水量に基づいた月次の給排水料金や管理費等をオンラインで確認できる。これら工業団地全体のデジタル化の実績が評価され、インドネシア工業省で開催されたINDI 4.0 AWARDのスマート工業団地部門において、特別賞であるSpecial INDI 4.0 AWARD 2021を受賞した。現在、丸紅は入居企業様向けサービスに加え、MM2100で働く従業員様向けのサービス開発を進めている。


MM2100工業団地は地域社会や環境に配慮した持続可能な運営に努めている。2020年、同工業団地は国際連合工業開発機関(UNIDO)およびインドネシア工業省が進めるインドネシア初のGlobal Eco-Industrial Parks Program(GEIPP)の指定工業団地に選出された。同時に、MM2100工業団地は工業団地単位の脱炭素化を検討する第一歩として、入居企業様における温室効果ガス(GHG)排出量可視化システムの導入を支援した。


丸紅は企業の海外進出支援において豊富な成功経験を積み重ねている。


フィリピン・リマ工業団地では、丸紅は事業売却を希望する日系企業と、フィリピン進出を計画していた日系企業との間で合意・契約が成立するよう支援し、両社の契約交渉に同席して専門的な助言を行った。


インド・リライアンス工業団地では、丸紅は中立的な立場から、顧客に価格・立地など基本情報の提供にとどまらず、工業団地内の規制、ユーティリティの品質・容量などの要素を詳細に分析し、最適な選択ができるよう支援した。丸紅の支援のうえ、ある日系企業は最終的に同工業団地への進出を決定した。


ベトナムのアマタシティ・ハロン工業団地の実践において、丸紅の役割はさらに明確になった。財新網の報道によれば、この工業団地の副総経理の大美賀剛氏は丸紅から派遣された。工業団地には中国からのジンコソーラーが進出しているだけでなく、フォックスコンなどの世界的な製造業者も工場を設立しており、日本の大手機械メーカーである安川電機もここに進出している。2025年12月10日時点で、団地には16社・計21プロジェクトが進出、総投資登録金額は29億ドルに達している。同工業団地は引き続き販売用地の開発を進め新規入居企業を積極的に誘致している。同団地が所在するベトナム北部クアンニン省は中国国境に隣接し、中国における既存サプライチェーンを活用しやすいことから国外生産先として適した立地である。


丸紅は、このベトナムのプロジェクトへの参画について、前述した立地の優位性、インフラ整備条件、パートナー企業の実力などの要素を総合的に検証した上で下した決定であると説明している。


情報によると、丸紅では、各国の工業団地が「開発・運営」と「販売代理」の2種類に分類されている。「開発・運営」のモデルには、丸紅が工業団地の開発・運営会社に出資、また人員も派遣する。「販売代理」のモデルには、パートナー企業が出資しており、丸紅から人員は派遣しない。モデルを問わず、工業団地と検討企業様間による区画選定、価格交渉等において、丸紅も交渉の場に入り支援する。


注目すべきなのは、工業団地事業以外では、丸紅が中国企業と第三国での協業プロジェクトはすでに50件以上となっている。


多様なニーズに対応するカスタマイズサービス


中国企業の海外進出を支援する際、丸紅は三つの段階で橋渡しを行っている。「進出検討段階」には、市場調査、ビジネスプラン・事業可能性調査、会社設立、ライセンス取得の支援を提供する。「進出決定後」には、工場建設・設備調達、人材採用、原材料・部品調達、ユーティリティサービスの支援を提供する。「運営開始後」には、最新法律・規制情報、会計・税務情報、人事・労務情報、マーケット開拓の支援を提供する。


異なる産業の中国企業に対応するために、丸紅は専門的なサービス支援体制を構築している。工業団地事業であれば、工業団地担当部門が主導し、デジタルヘルスケアなら「化学品部門」、フォレスト関係なら「ライフスタイル部門」、新エネルギーなら「電力・インフラ部門」、自動車なら「エアロスペース・モビリティ部門」など関係各部門と連携し案件を推進する。


法律、税制、商習慣、インフラなど、ビジネスの前提が国ごとに異なるため、「カスタマイズ対応」が必須だと丸紅が強調した。ある国での成功モデルをそのまま別の国に適用するのは困難であり、そこにこそ、丸紅の現地に根差した対応力が発揮される余地がある。


実際の運用において、丸紅は柔軟なサービスモデルを提供し、強制的なパッケージサービスは提供しない。企業の海外進出検討の各段階において、各々の機能部署、機能会社が各事業範囲内において支援する。丸紅で機能が充足しない場合は、専門のコンサルタント、企業を顧客に紹介する。


丸紅の実践経験から見ると、中国企業の海外進出は最初に、海外進出の目的に応じて、適切に対象国を選定することが必要だ。例えば、労働力確保が目的の場合と新市場開拓が目的の場合では適性が異なる。対象国選定の上で、また適切な工業団地を選定することが必要だ。工業団地毎に内部規則が異なり業種規制を受ける場合もあり、また地盤特性も異なる為、建設費に差異が出る場合もある。


中国企業の海外生産拠点を構える「海外進出」の支援以外、丸紅は中国企業の製品を海外市場への拡販を支援する。丸紅が取り扱う化学品、食料、機械など、ほぼ全ての分野で、世界中のネットワークを使い、中国企業に最適な市場と販路を開拓する。


製品の条件については、丸紅は国際市場で通用する「品質」「競争力」「安定供給能力」が重要だと強調した。


「海外進出」を検討中の中国企業に対して、丸紅はただお客様を説得するのではなく、まずお客様のビジョンと課題を深く理解することから始めると述べている。


「海外進出には、現地の法規制、許認可、土地探し、人材採用など、膨大な時間と手間がかかります。これらの課題を一つ一つ手探りで解決するのは、大きなリスクを伴います」と丸紅の担当者は語り、中国企業のニーズに応じて最適な専門部署、外部会社を迅速に紹介すると述べている。


現在、世界経済構造が大きく変化するなか、グローバルネットワークと豊富な現地経験、専門的な知見を有する丸紅は、中国企業の海外進出におけるパートナーとして、複雑化する国際環境への対応を支援し、成功裡の進出を後押ししたいと考えている。


中国企業の海外進出における最大のリスクは何か、との問いに対し、丸紅の担当者は、進出する国や事業領域などによってそれぞれ固有のリスクもあり、一概に申し上げることはできないが、「共通して言えるのは信頼できるパートナーを見つけることが大事だということです」と述べた。

大手企業を含む多くの日系企業が購読している『必読』

『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。


現在、『日系企業リーダー必読』の購読企業は、世界ランキング500にランクインした日本企業を含む数十社にのぼります。


サンプルをお求めの場合、chenyan@jpins.com.cnへメールをください。メールに会社名、フルネーム、職務をご記入いただきます。よろしくお願いいたします。



メールマガジンの購読

当研究院のメールマガジンをご購読いただくと、当方の週報を無料配信いたします。ほかにも次のような特典がございます。

·当サイト掲載の記事の配信

·研究院の各種研究レポート(コンパクト版)の配信

·研究院主催の各種イベントのお知らせ及び招待状

週報の配信を希望されない場合、その旨をお知らせください。