【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 今週の注目は、アシックスの中国での利益急増の秘訣、明治の中国市場における「高級」路線の挫折、そしてマツダが中国人副総裁の起用を通じて中国を世界の「特別区」にしたことなどである。
ランニングシューズ大手アシックスの中国秘訣
世界的なランニングシューズ大手アシックスが最近発表した2026年第1四半期の決算報告によると、グレーターチャイナにおける売上高が顕著に向上し、前年同期比28.2%増、利益成長率はさらに驚異的な62.9%増を達成した。
いかにしてこれを成し遂げたのか?その秘訣は会員システムにある。アシックスは500万人の会員を抱えるシステムの構築に成功、これらの会員のリピート率は非会員よりもはるかに高い。
アシックスがどのようにして会員システムを構築したかは、中国で事業を展開する日本企業にとって非常に学ぶべき点が多い。
3月22日、成都世界遺産マラソンがスタートした。成都世界遺産マラソンは、2015年に創設された成都双遺(ダブル世界遺産)マラソンが前身で、今年で11年目を迎える。参加規模は3万5000人で、全国でも最も特色及び評価の高いロードレースの一つである。続いて3月29日には、揚州ハーフマラソン20周年記念大会が開催された。揚州ハーフマラソンは初めて世界陸連プラチナラベルに昇格し、申込総数は16万人を超えた。これらの二つの大会にアシックスは主力スポンサーとして協賛している。
ランナーはまた、アシックスのコミュニティプラットフォーム「RUN+型動社」を通じて、「型動跑馬班(マラソンクラス)」のオフライン育成キャンプに参加し、専門コーチの指導の下で科学的なトレーニング計画を立てることができる。「RUN+型動社」は、アシックスが会員システム構築のために特別に作ったコミュニティプラットフォームであり、現在は北京、上海、西安、成都の四大地域拠点を構築している。
さらに、今年でアシックスによる成都世界遺産マラソンの協賛は3年連続となる。アシックスは短期的な大会の集客効果を追求するのではなく、長期的な協力を堅持し、大会を通じてブランド価値を深め続けている。
成都と揚州の二大会連続協賛に加え、昨年ブランドがスポンサーを務めた天津マラソン、上海10キロエリートレース、上海センタータワーのタワーランニングチャレンジ、北京大学・大学対抗駅伝招待大会など、アシックスは全世代、多地域をカバーする包括的な大会システムを構築し続けている。
業界関係者は、アシックスが大会をきっかけに中国のランナーのライフスタイルと深く結びつき、フルエコシステムを構築したことは、国際ブランドのローカライゼーション発展における優れた実践例であると評価している。
明治中国は高級戦略が頓挫
明治グループが5月16日に開示した2025年度の業績によると、3月31日までの期間において、明治中国の食品事業の営業損失は60億円に達し、損失は前年比で拡大したという。過去2会計年度も明治中国は赤字が続いている。
明治は1989年に中国市場に参入した。中国の激しい市場競争の中、明治乳業は差別化を図るために高級化戦略を採用し、価格設定は長らく中国の大衆ブランドよりも高かった。例えば、2025年7月に中国で発売した戦略的商品「明治臻好喝牛乳」の900mlボトルの価格は約30元で、これは日本の現地価格(約289〜311円、約13〜15元)の約2倍に相当する。
しかし現在、中国は消費の伸びが鈍化する局面にあり、高価格設定は不利な市場環境に直面し、価格戦の破壊力には対応できない。
ある分析では、明治の高価格設定はコストを下げられないことによる余儀ない選択だと考えられている。企業規模が大きいほど、生乳調達の優位性は明らかになる。例えば、伊利集団や蒙牛集団などの中国地場大手は、その圧倒的な需要量によって、乳源調達においてより低いコストと強い価格交渉力を持っている。これに対し、明治の原料調達規模は限られており、生産コストはもともと高い。そのため、過去数年間、明治は天津、上海、広州の三都市に約450億円を投じて新工場を建設し、さらに上流の牧場にも進出している。
これらは表面的な原因かもしれないが、明治ホールディングスの松田克社長兼CEOはかつて公の場で、「中国市場では、問題の鍵は集中的かつ大規模な投資ではなく、事業思考のローカライゼーション不足と市場への対応速度の遅さにある」と述べている。
今年4月、明治(中国)投資有限公司は法定代表者を交代し、長森克史氏は正式に退任、不二靖弘氏が新たに総経理に就任した。これまでの2人の総経理がいずれも日本市場からの派遣であったのとは異なり、不二靖弘氏は中国の現地経営チームから昇格した初のトップである。
王小玲(ワン・シャオリン)――マツダの革新者
最近、マツダは世界初の純電気自動車モデルの発売を2029年まで延期すると発表した。これは予定より2年遅れるものであるが、その一方で、中国で電気自動車の生産を加速している。つい先日終了した北京モーターショーで、長安マツダは「今年、通年の新エネルギー車販売比率で70%達成を目指す」と公にした。これは、中国市場で新エネルギーを中核事業とする初の合弁自動車会社となる。
マツダの電気自動車は世界では「ブレーキ」をかけられ、中国では「アクセル」が踏まれている。業界関係者は、この背景には昨年11月に就任した長安マツダの執行副総裁・王小玲氏の存在が大きいと見ている。
マツダは2017年に販売台数30万台を達成したが、その後8年間にわたって下落を続け、2025年の年間販売台数は8万7000台まで落ち込み、ピーク時の3分の1にも満たなかった。下落の深さと期間の長さは、主流の合弁ブランドの中では珍しい。
マツダが度重なる経営陣交代、戦略の揺らぎ、内外の連携不足という困難な時期に、王小玲氏という「日本の魂を理解し、中国の手法も理解している」両方の要素を兼ね備えた人物を起用したことは、グレークスルー(現況打開)の希望と見なされている。
王氏は就任後、まず合弁自動車の電気化における最大の誤り――「技術の平準化」――から脱却することに取り組んだ。多くの合弁自動車の変革は、バッテリー、モーター、大型ディスプレイを既存の車に無理に詰め込むだけで、結果として本来のブランドの魂を失い、技術も追いつかず、いずれにも属さない中途半端なものになってしまう。彼女が長安マツダのために定めた路線は、「二つの強みの融合」である。すなわち、長安の電気化、知能化、サプライチェーンにおけるローカルの強みを基盤とし、マツダの100年にわたるシャーシ調整、デザイン美学、運転感覚を魂として、アーキテクチャー、シャーシ、操作、体験に至るまで、電気自動車時代にふさわしいマツダをゼロから作り直すことである。
明らかにマツダ本社は王氏の考えを認めており、中国はマツダの世界における電動化の「特別区」となっている。2026年第1四半期、長安マツダの全体販売台数は前年同期比27.2%増加し、新エネルギー製品の販売比率は47%を突破した。中国国内での全面的な電動化への移行に加え、長安マツダは中国の新エネルギー産業チェーンの強力な能力を活用して、中国工場を世界への新エネルギー車輸出ハブとしている。現在、EZ-6の海外版であるMazda6eはすでに欧州、オーストラリアなど20以上の国と地域に輸出されており、欧州では発売から2ヶ月で7000台以上の受注を獲得している。EZ-60をベースにしたCX-6eも2026年夏に欧州市場に投入される予定である。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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