【毎週の日系企業ウォッチ】


研究院オリジナル 今週の注目テーマは、日本企業で相次ぐ賃上げ、なぜ中国の日系企業では同様の動きがないのか?円安が続く中、中国の日系企業における恩恵を受けるグループと打撃を受けるグループはそれぞれ誰か?中国の公的メディアが異例の日本のトヨタ自動車を絶賛、などである。


日本企業の賃上げ拡大、中国の日系企業はなぜ追随しないのか


2026年の日本の「春闘」(毎年恒例の全国的な労使集団交渉メカニズム)の平均賃上げ率は5.26%と、35年ぶりの高水準となった。トヨタは6.8%、ホンダは6.5%、日立と松下は一律1万8000円の引き上げ、さらにユニクロの正社員も12%の昇給となっている。中国の日系企業はこれに追随するのだろうか?


日本で賃上げが進む背景には、物価上昇率が4年連続で2%を超えていることに加え、出生数が73万人を割り込み、過去最低を10年連続で更新していることがある。企業は深刻な人手不足に陥っており、2025年には「人手不足」が原因で倒産した企業が427社に上り、過去最高を記録した。賃上げをしなければ人を雇うことすら難しい状況にある。


しかし中国の状況は異なる。現在、国内では失業率が高止まりし、かつてない雇用圧力に直面しており、企業は人手不足には悩んでいない。同時に、中国の日系企業においては競争圧力が増し、決して楽な状況ではない。そこで当研究院の見解としては、賃上げは必ずしも必須の選択肢ではなく、できるだけ先延ばしにするというのが実情であろう。本社から要求があっても、形だけの対応にとどめるという企業もある。例えば蘇州や広州の多くの日系部品工場では、本社から2026年の賃上げを6.5%以上とするよう通知を受けているが、おそらく「名目上の引き上げ」にとどまり、手当や業績評価の調整によって会計処理することだろう。


円安の持続が中国の日系企業に深刻な影響


2026年に入り、円の対ドル相場は下落し、一時は160円台に迫った。実質実効為替レートは1973年以降で最も低い水準となり、制御不能な状況に陥るリスクがある。これは中国日系企業にどのような重大な影響をもたらすのか?


当研究院の分析によれば、影響には構造的な差異があり、恩恵を受ける企業と打撃を受ける企業の両方が存在する。


恩恵を受けるグループは主に、現地販売を中心とする企業である。例えば自動車メーカーは、円建てコストの低下により人民元建ての価格設定が柔軟になり、中国ブランドとの価格競争に対するヘッジが可能となる。2026年3月にはトヨタの中国販売台数が改善している。また、人民元建ての利益を円で本国に送金する際に多額の為替差益が発生し、日本の本社の業績を直接押し上げる。精密電子・半導体装置などのハイエンド製造業では、中国市場の需要は堅調で、日本から輸入する核心部品(フォトレジスト、積層セラミックコンデンサなど)の調達コスト(人民元建て)が低下し、売上総利益率が改善する。さらに、中国で販売・貿易に従事する非製造業の日系企業は、円建ての仕入れコストが低下するため、粗利が上昇する。


一方、打撃を受けるグループは主に、製品を日本に逆輸入する輸出型製造企業である。電子組立や自動車部品などは、円建ての販売価格が急上昇し、販売数量が減少する。一部の生産能力は早期に日本や東南アジアへ回帰する動きが見られる。労働集約型・コスト敏感型の企業、例えば繊維やローエンド加工などは、人民元建ての人件費・家賃・光熱費が円換算でコスト高騰を招く。上海の日系企業の外注コストはベトナムの3倍に相当する。また、円建て決済の業務を行う日系企業、すなわち日本向けのアウトソーシングやソフトウェアサービス企業は、収入が円建てで支出が人民元建てのため、収入が目減りし、コストが硬直的であるため、困難な状況に陥っている。


さらに中小企業は為替ヘッジ手段を持たず、価格交渉力も弱いため、為替差損とコスト圧迫のダブルパンチで、倒産リスクが高まっている。


中長期的には、円安は中国の日系企業に対して「ハイエンド部門は中国に定着させ、ローエンド部門は移転させる」という構造調整を推し進めるだろう。実際、この調整はすでに始まっている。先ごろキヤノンが中山工場を閉鎖した一方で、トヨタは新エネ分野での中国投資を強化し、現地調達率を95%まで引き上げた。今後、中国は日系企業にとって高級製造・研究開発・内販の中核拠点となり、東南アジアがローエンド組立を引き継ぐ構図となるだろう。


中国メディア、トヨタの「長期主義」を称賛


最近、中国メディアの『澎湃新聞(ニュース)』は、「中国の自動車市場は“増量競争”から“在庫争い”への深い転換期にあり、消費者の購買ニーズは“スペック崇拝”から“価値本質”への理性的回帰を見せており、“安心・実用・耐久”が再び購入判断の中心的な尺度となっている。トヨタは長期主義を発展の基調とし、高品質・高耐久性・高信頼性を堅持することで、業界の変革の中で差別化された価値深耕の道を歩んでいる。これこそが中国の家庭用自動車の核心的な答えである」と論じた。


また同記事は、多くのブランドが「スペックの積み上げ」「マーケティングの過当競争」という悪循環に陥り、「すべてを備えたスマート装備」を安易に標榜する一方で、自動車の最も基本的な品質や信頼性を軽視していると批判。価格競争に盲目的に追随するだけでは、持続可能なユーザーの信頼を形成できないと指摘した。このような「トラフィック重視、本質軽視」の発展モデルは、家庭ユーザーの核心的ニーズから逸脱するだけでなく、一部のブランドから徐々に市場競争力を奪っているとしている。


大手企業を含む多くの日系企業が購読している『必読』

『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。


現在、『日系企業リーダー必読』の購読企業は、世界ランキング500にランクインした日本企業を含む数十社にのぼります。


サンプルをお求めの場合、chenyan@jpins.com.cnへメールをください。メールに会社名、フルネーム、職務をご記入いただきます。よろしくお願いいたします。



メールマガジンの購読

当研究院のメールマガジンをご購読いただくと、当方の週報を無料配信いたします。ほかにも次のような特典がございます。

·当サイト掲載の記事の配信

·研究院の各種研究レポート(コンパクト版)の配信

·研究院主催の各種イベントのお知らせ及び招待状

週報の配信を希望されない場合、その旨をお知らせください。