【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 今号では、ソフトバンク、NEC、ホンダ、ソニーの4大巨頭が連携して「Physical AI」開発に乗り出す意義と展望を重点的に分析。また、リコーによる深圳工場閉鎖、ユニクロの中国業績回復にも注目する。
日本を代表する4社のAI連合、なおも3つの弱点
4月12日、ソフトバンク、NEC、ホンダ、ソニーグループ――日本の通信、IT、自動車、エレクトロニクスという4つの基幹産業を代表する巨頭4社が、「日本AI基盤モデル開発」と称する新会社を設立すると共同発表した。これは日本ハイテク産業史上最大規模の共同アクションである。
中国の論調は、日本が自らの実力を冷静に認識し、競争構造を客観的に判断している点を評価し、「成熟した現実的な考え方」と見なしている。
第一に、各社バラバラに戦うのではなく連合を選んだ点。過去10年間、日本のAI分野への投資とアウトプットは中米に遠く及ばなかった。今回の連携は本質的に「資本の優位性で時間のハンディを補い、金で時間を買う」戦略である。
第二に、漠然と「中米を追う」のではなく、「Physical AI(フィジカルAI、あるいはエンボディッドAI)」というニッチ分野に照準を絞った点。この分野では中米がまだ支配的な優位性を確立しておらず、日本は製造業のデータ蓄積という基礎的優位性を持つ。日本はものづくり大国であり、数十年にわたって積み上げてきた工場の操業データ、設備パラメーター、プロセスフローは、中米のAI企業が容易にコピーできるものではない。
ただし中国の世論は、日本が全面的に米中に追いつく可能性は低いと見ている。主な問題点は以下の通りだ。
第一にデータ。AIモデルの性能は、トレーニングデータの規模と質に依存する。中国は世界最大のインターネットユーザー群、最も多くのデジタル化されたシーン、最も豊富なデータ蓄積を有する。日本のデータ量とデータ多様性は中国に遠く及ばない。従って日本が優位性を持ちうるのは、工業分野のAIなど特定領域に限られるだろう。
第二に人材。日本のAI人材ストックは世界の5%にも満たない。今回の4社連合で動員できるエンジニアは100人に過ぎない。中国のアリババ「通義実験室(Tongyi Lab)」だけでも5000人以上のエンジニアを擁する。日本の企業がAI分野で人材を引きつける力も中米企業に及ばない。
第三にスピード。米中のAIモデルは、イテレーションサイクルがもはや数ヶ月に短縮されている。しかし日本の伝統的な企業文化は根深く、コンセンサス重視、リスク回避、厳格なヒエラルキーを特徴とし、AI時代に求められる「素早いトライ・アンド・エラー」の文化と根本的に矛盾している。
さらに、4社がそれぞれ10%ずつ出資しており、絶対的な主導権を持つ企業がないため、内部対立が生じやすい。歴史的にも、エルピーダメモリやラピダスといった国家的アライアンスが、資源の分散や内部調整の失敗で成果を上げられなかった、あるいはあげられそうもないという先例がある。
リコー、深圳工場を売却して構造転換
4月9日、リコーは、深圳にある子会社「リコー(深圳)工業発展有限公司」を約9億元で売却すると正式に発表した。これにより、34年間にわたって中国で操業してきた老舗工場がついに幕を下ろした。
リコー深圳公司は1991年1月に設立され、リコーの中国における初期の重要生産拠点の一つであった。主に複合機やプリンターの製造を手がけ、製品の80%は輸出、20%が中国内販で、世界市場に向けてオフィス機器を供給してきた。中国の地元企業との競争で劣勢に立たされ、すでに2020年には生産を停止していた。今回、この非効率資産を売却することで、リコーは資本効率を改善し、財務指標を向上させることができる。
リコーによる深圳工場売却は、日本ものづくり企業の中国戦略見直しの流れの一環である。近年、日本メーカーは相次いで中国の生産拠点を閉鎖または売却し、東南アジアなどのコストの低い地域へ生産能力を移転すると同時に、中国市場での重点を研究開発、販売、デジタルサービスなどへシフトしている。リコーも同様で、印刷事業から撤退するのではなく、ITサービス、プロセスオートメーション、デジタルトランスフォーメーションといったより収益性の高い分野に資金と経営資源を集中し、「ハードウェア販売」から「サービス販売」への転換を図っている。
ユニクロ、変革を通じて中国で業績回復
最近、ファーストリテイリングが2026年度上半期(2025年9月~2026年2月)の決算を発表した。ユニクロのグレーターチャイナ―(大中華圏)における総収入は前年同期比7.21%増の260億6800万円増加し、業績の好材料の一つとなった。これはユニクロが中国市場でリバウンドを果たしたことを示す。前2025年度は売上高・純利益ともに減少していた。
業界分析では、ユニクロの業績回復の主因は、一連の抜本的な変革にあり、中核は中国での出店戦略の見直しである。これまでの店舗数重視から、単店収益力重視へと転換し、低効率店舗を閉鎖、チャネルと在庫を最適化した。きめ細かい運営によって経営効率を高めた。同時に2025年9月に開始したJD.comとの提携がオンラインの新たな成長をもたらし、これも業績向上の一因となった。
ただし、「ユニクロが中国での低迷を完全に脱したと断言するのは時期尚早」との見方もある。第一に、今回の成長は前年同期のベースが相対的に低かった上でのものであることだ。第二に、横並びで見ると、グレーターチャイナの収入成長率は依然として全海外市場の中で最低であることだ。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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