毎週日系企業ウォッチ


研究院オリジナル 今期注目するポイントは以下の通り。日系企業が中国人幹部を中国トップに起用する傾向が広がっている。多くの日系企業が中国を優れた技術革新の土壌と認識しつつある。テンセントと任天堂の協力が中国の規制政策によって頓挫していることである。


複数の大手日系企業が中国人幹部を中国トップに起用


ここ2~3年、中国に進出の日系企業のトップ人事はかつてない変革を迎えている。トヨタ、日産、デンソー、ルネサスエレクトロニクス、アルバックなど多くの大手企業が、中国トップのポストを中国人幹部に委ねている。


この傾向を単純に「日系企業の中国トップの現地化」と捉える向きもあるが、実際には日系企業の今回の経営陣の見直しにおける唯一の選考基準は、「日本の本社の中国戦略高度化の核心的ニーズを満たせるかどうか」であり、国籍は決定的な要素ではない。


これまで日系企業が中国に派遣してきた日本人トップは、日本式経営やグローバル戦略には精通しているものの、中国市場の急速な変化、政策の方向性、消費のロジック、産業のエコシステムについては理解が十分とは言いにくく、単なる本社の「執行者」に過ぎず、現地に即した意思決定を下すことができなかった。ところが現在、新たに登用された中国人トップも、新任あるいは権限を強化された日本人トップも、一貫して以下のような中核的特質を備えている。


第一に、中国市場を深く理解し、豊富な現地での実戦経験を持っている。中国市場の変化に素早く対応し、日系企業の意思決定の長期化や現地の事情に合わないという課題を打破できる。


第二に、コミュニケーションの障壁を双方向に取り除くことができる。中国人幹部であれば日本語に精通し、日本企業の文化や本社の論理を深く理解している。日本人幹部であれば中国語に精通し、中国のビジネス習慣や職場のルールを理解している。いずれも中日間のシームレスな「橋渡し」役を担える。


第三に、グローバルな戦略視野を持っている。日本の本社のグローバル展開を実現し、コンプライアンスと品質基準を維持しつつ、中国現地のイノベーションを主導することができる。


この国籍を超えた経営陣変革の根源は、日本の本社による中国市場の位置づけの完全な再構築にある。中国はもはや日系企業のグローバル体制における「海外売上を上げるための地域市場」ではなく、「グローバルなイノベーションの発信地」「中核的な収益センター」「戦略的に重要な現地市場」である。従来の管理体制や人事の論理、運営手法では、現在の中国市場にはもはや適応できなくなっている。


日系企業が「中国は優れた技術革新の土壌である」と認識


現在、多くの日本企業は、「巨大な消費市場に加えて、中国の独自技術や産業化能力もまた優れた技術革新の土壌を生み出している」と認識し始めている。


今年1月、日東電工(中国)未来イノベーション研究所の岸敦史所長は、中国のグラフェン分野における「国家チーム」である北京石墨烯(グラフェン)研究院(BGI)を訪問した。機能性材料分野で厚い実績を持つ日東電工は、中国の研究機関が新素材体系において持つ迅速な実用化能力を必要としており、両者は「高度な補完関係」にあると見なしている。


3月11日、天津商業大学と栗田工業株式会社は、国家重点研究開発計画プロジェクト「排水の生分解性向上を目指した充填材式汚泥触媒の開発と応用」を共同で開始した。これは単なる産学連携にとどまらず、国家重点研究開発計画ならびに政府間国際科学技術イノベション協力重点プロジェクトに組み込まれている。


3月中旬、東レ・インターナショナル(中国)有限公司の水素エネルギー統括部長山下哲夫氏は取材に対し、水素関連事業分野において中国は世界最大の市場になったと述べた。市場のあるところ、技術も必然的に育まれる。東レは中国企業と深く連携し、水素製造技術をグローバルに展開していく考えを示した。


さらに先端のAI分野でも、日中両国は「中国の体、日本の魂」と呼べるような目に見えない形での協力を進めている。ある分析によれば、日本は製造業における「暗黙知」の継承や高齢化社会に伴うリアルなニーズなど独自の資産を有しており、それこそが中国のAI技術やハードウェア量産能力が大いに活躍できる舞台であるという。


任天堂とテンセンの誤算


3月31日、任天堂とテンセンの合弁会社は、中国国内向け「Nintendo Switch」のeショップサービスを正式に終了した。これは突然の死ではなく、2019年からすでに筋書きが決まっていた長い別れだった。


2019年、テンセントと任天堂は提携を発表し、テンセントが中国国内向けSwitchの代理店となることで合意した。このニュースは当時、大きな話題を呼んだ。ビジネス的観点から見れば、非の打ち所のないウィンウィンの構図だった。Switchは世界で3000万台以上を売り上げており、家庭用ゲーム機がほぼ空白だった中国市場において、テンセントは正規流通ルート、決済システム、アフターサービスネットワークをすべて整備できている。任天堂の中国ファン層も非常に強固であり、正規版が投入されれば市場は問題ないように思われた。


しかし両社は一つのことを過小評価していた。規制のコストである。中国の政策では、国内版Switchのゲームソフトは承認を得てから発売する必要がある。「ゼルダの伝説」や「あつまれどうぶつの森」など海外で爆発的に売れたタイトルも、中国では発売できず、国内版Switchでプレイできるゲームは極めて少なかった。


実際のところ、テンセントにも任天堂にも過ちはなかった。誤算があったとすれば、家庭用ゲーム機の核心的価値は「グローバルなコンテンツ」にあるのに対し、中国市場の参入障壁は「ローカルな承認プロセス」であり、この両者が根本的に矛盾しているという点であろう。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。


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