【毎週日系企業ウォッチ】


研究院オリジナル 今週の注目ポイント:中国の両会における政策シグナルが日系企業に与えるビジネスチャンス/中国市場がホンダの大幅赤字をどう見るか/そして意思決定システムの欠陥が在中国日系企業にどのような不利益をもたらしているか。


「両会」の「炭素排出量総量・強度管理」政策は日系企業にとってどのような意味を持つのか


先般閉幕した中国の両会(全国人民代表大会・中国人民政治協商会議)では、新たなエネルギー政策に関するシグナルが示された。2030年までに炭素排出量をピークアウトさせるという目標に変更はなく、重要な変化は「エネルギー消費総量・強度管理」から「炭素排出量総量・強度管理」への移行である。これは、脱炭素技術の能力が企業競争力の中核的指標の一つとなることを意味している。


現在、炭素市場の取引価格は上昇傾向にあり、2026年2月には1トン当たり78元に達した。100元の大台突破は時間の問題である。エネルギー多消費産業(化学、材料など)は直接的に炭素排出コストの負担に直面しており、中国市場では高効率な省エネ設備、水素技術、先端材料などが緊急課題となっている。これらはまさに日系企業の強みが発揮される分野である。


現在、日系企業にとって3つの重要な市場機会がある。


第一に、電力網への投資である。「第15次五カ年計画」期間中、中国の電力網への投資は5兆元に達すると見込まれており、重点分野は超高压送電、配電網のデジタル化、蓄電システムの接続である。日系企業の強みは、高圧変換器、絶縁材料(三菱電機、住友電工)、スマート監視、システム制御(日立、東芝)などにある。関連する日系企業は、早期に電力網会社や産業団地の運営者との連携を構築することを推奨する。


第二に、水素エネルギーとグリーン燃料である。中国政府はグリーン水素、グリーンメタノール、グリーンアンモニア、SAF(持続可能な航空燃料)の開発を重点的に進めている。日系企業の強みは、高効率な電解技術(東芝、旭化成)、燃料電池材料(セパレーター、電解質膜)、貯蔵・輸送技術(川崎重工業、岩谷産業)などである。関連する日系企業は、技術協力、設備供給、共同実証プロジェクトなどの形で参画することを推奨する。


第三に、新型蓄電システムである。国家発展改革委員会は、蓄電システムを六大新興支柱産業の一つに明確に位置付けており、2027年までの累積設備容量目標は180GW以上、年平均成長率は17.7%に達する見込みである。日系企業の参入突破口は、高付加価値の分野にある。AIデータセンター(極めて高い信頼性が要求される)、長時間蓄電(フロー電池などの技術)、鉄道交通(再生電力の利用)、先端産業用・商業用ユーザー(電力品質への要求が高い)など、これらの分野では、価格よりも安全性、寿命、信頼性が重視される。これらの分野において、日系企業は顕著な強みを有している。


中国市場はホンダの大幅赤字をどう見ているのか


2026年3月、ホンダが最大6900億円の最終赤字見通しを発表したことは、世界の自動車市場に衝撃を与え、中国市場でも大きな議論を巻き起こした。


多くの見方は、ホンダの赤字は電動化への転換が遅すぎたことにあり、中国の新エネルギー車(NEV)の攻勢を受けた結果だとしている。中には、将来的に日本の自動車産業は家電産業と同様に、中国自動車に取って代わられるだろうなどと楽観的に考える人までいる。


しかし、より理性的で深みのある見方もいくつかある。


例えば、「ホンダが北米市場での電気自動車(EV)事業を中止したことは、表面的には業績悪化の要因に見えるが、実際には“断を下すべき時に下す”賢明な判断であった」という考え方だ。フォード、ゼネラルモーターズからステランティス、メルセデス・ベンツからポルシェまで、10社以上の多国籍自動車メーカーが最近、電動化計画を撤回または縮小しており、EUも2035年の内燃機関新車販売禁止という抜本的な計画を放棄している。ホンダの判断は、大きな流れに即した実用的なものである。


また、別の分析では、「ホンダの核心的な問題は電動化への転換にあるのではなく、AI革命の好機を捉えきれず、自動車のインテリジェンス化という競争で出遅れたことにある」と指摘されている。AIはすでに自動車産業のルールを再構築し、研究開発、生産、販売、使用に至るチェーン全体に浸透している。ホンダを含む他の日本車メーカーが、従来型の内燃機関車の考え方に固執し続けるならば、これが最大の危険である。


日本式「決裁」は中国でなぜ問題となるのか


ある日系企業で18年間働いた中国人社員が、ソーシャルメディア上で次のようなエピソードを語っている。2019年、ある日系家電メーカーの中国チームが、大容量ドラム式洗濯乾燥機の市場ニーズの空白を見つけ、夜通しで企画書を作成し日本本社に提出した。その後は、すべての日系企業社員にとって何よりもお馴染みの光景が待っていた。稟議書→係長→課長→部長→関連部署の回議→本部長決裁……印鑑を一つ一つ押していき、一つとして欠かすことはできない。決裁が下りるまで待つことまる半年。その間に、中国市場はもはや中国のハイアールやリトルスワンなどのブランドに席巻されていた。彼らの製品は発売直後から売れ行きが振るわず、2年後には生産中止となった。


この制度は日本では数十年にわたり機能してきたが、中国に移されると、「安全メカニズム」から「失敗の温床」へと変貌してしまう。主に以下の4つの問題点がある。


第一に、スピードである。日本の意思決定の遅さ対中国の市場の速さとなる。日本市場は成熟し、安定しているが、変化は緩やかである。半年かけてプロジェクトを議論することは普通であるが、中国市場では、新たなブームが勃発してから飽和状態(「内巻」)に陥るまで、わずか3ヶ月しかかからないことが多い。日本市場における「慎重さ」は、中国では「遅延」となる。


第二に、権責(権限と責任)である。日本の「責任の共同負担」と中国の「決定者が責任を負う」という違いだ。日系企業の決裁の本質は、責任の分散にある。全員が署名することで、個人が責任を負うことを回避する。しかし、中国の論理は全く異なる。誰が決定し、誰が承認し、誰が責任を負うのか、に絞っている。しかし、日系企業の場合、中国現地チームは市場の最前線にありながら、リスクを認識していても即座に行動する権限がなく、遠く離れた日本本社が最終決定権を握っている。


第三に、情報である。日本の「書面主義」と中国の「実情重視」の違いである。日系企業の決裁は、書面に書かれた情報のみを信頼する。稟議書にどう書かれているかによって、本社の認識が決まる。しかし、中国市場の多くの真実は、文字だけでは伝えきれない。日本本社が書面報告のみに依存する限り、情報のフィルタリングによって誤った判断を下すことは避けられない。


第四に、コンプライアンスである。日本の決裁は「責任の免責」であるのに対し、中国では「署名すれば責任が生じる」という点である。日本では、決裁プロセスを経ていれば、問題が発生した場合でも「組織としての行為」と見なされ、個人が責任を問われることはほとんどない。しかし、中国の監督当局はただ一点のみを見る。誰が署名し、誰が関与し、誰が責任を負うのか、である。中国の論理は「集団による免責」を認めていない。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。


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