【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 今回は以下の3社の日系企業に注目する。武漢で大人気のイオン、中国エリアのトップを交代した武田薬品工業、そして完全に撤退した日本製美顔器ブランド「ReFa」である。
イオンが武漢で人気の4つの理由
日本の小売りグループ企業イオンは、2026年第1四半期に武漢で大型総合スーパーを3店舗新設する予定で、すでに第1陣の従業員募集を開始。今回の拡張による総面積は10万平方メートルを超え、武漢における近年最大の外資系小売業の増加分となる見込みだ。
武漢の三環線(第三環状道路)の外側で、イオンは中国で有名な商業施設「ワンダー(万達)」と隣接している。イオンは毎日多くの人でにぎわう一方、ワンダーは閑散としており、地元の人々にこのコントラストは強い印象を与えている。
なぜイオンはこれほど人気があるのだろうか?
第一に、武漢そのものが、イオンの「商売ができるところで商売をする」という原則に合致している点だ。イオンは中国全土に網を張り巡らせるのではなく、「南部で深耕、北部で収縮」という経営戦略を採っており、武漢、長沙、広州など潜在力の高い南部の数都市に資源を集中して根を深く下ろしている。
第二に、自ら「下沈市場」(地方・郊外市場)へ進出している点だ。現在イオンが武漢で運営する大型ショッピングモールのうち、三環線のそばにあるのは金橋店のみで、他は全て三環線の外側の郊外にある。これらの地域は依然として人口密度が高いが、大型商業施設がなく、イオンはその市場の空白を埋め、投資コストを抑えながら、都市の中心部での過当競争も避けている。同時に、より広い土地、より大きな建物面積を活かし、ショッピング、子連れ向け施設、娯楽、駐車場を一体したワンストップ体験を顧客に提供することで、その経営理念をより明確に実現している。
第三に、顧客の「ペインポイント」(不満点、不便な点)を見つけ、解決することに長けている点だ。イオンは、駐車が買い物客の最大の悩みであることを見抜き、建設時から駐車場を必須条件として考慮に入れた。例えば、武漢経済技術開発区のイオンは4500台分の駐車場を備え、付帯基準を大きく上回っている。武漢金銀潭のイオンは駐車台数を増やすため、非常に大きなスロープを設置し、屋上まで車を乗り入れられるようにしている。
第四に、日本のきめ細やかなサービスの魅力を発揮している点だ。ネットユーザーによるイオンとワンダーを比較する投稿では、イオンが細部において全面的に優れていることが指摘されている。例えば、ベビールームに哺乳瓶ウォーマーや体重計が備え付けられていたり、トイレに子ども用便器があったり、通路が広くベビーカーでの移動がしやすかったりする点などだ。これらが消費者の好感を効果的に獲得している。
新総裁の任命が意味する、武田中国のシフトチェンジ
このほど、劉燕博士が正式に武田中国総裁に就任し、香港・マカオを含む全体の戦略と事業開発を統括することになった。同時に、彼女は新設された武田薬品インターナショナルビジネスユニット(IBU)の経営委員会のメンバーにもなっている。
多くの多国籍企業が外部から中国エリアの幹部を「空輸」してくるのとは異なり、武田は「内部後継者」を選んだ。劉燕は2021年から武田で働き、製品導入、ビジネスモデルの模索、デジタル化への挑戦など、多くの重要な局面に深く関与してきた。組織運営、チャネル構築、部門を横断する連携について確固たる理解がある。
さらに注目すべきは、劉燕氏が同時に武田薬品インターナショナルビジネスユニットの経営委員会にも入ったことだ。これは、中国が武田のグローバル戦略における重要性を増していることを示している。中国事業の視点は、より早い段階でグローバルな意思決定に入り込むようになり、中国市場はもはや単なる実行の場ではなく、資源配分や製品戦略のレベルで上層部に意見を発信する機会を得ることになる。
よりマクロな業界の背景から見れば、今回の任命は突飛なものというわけではない。今日に至り、中国市場は武田のグローバル第3の市場に躍進し、武田中国は中国における外資系製薬企業のトップ10に落ち着いている。この数年、中国の医薬品市場には大きな変化が見られた。国家による一括購入(集採)と医療保険支払い制度の継続的な調整、創薬の商業化の難易度上昇、医療機器と創薬企業間の競争激化などである。こうした背景から、多くの外資系製薬企業の戦略は、かつての高速拡大から、ポートフォリオの最適化と持続可能な成長、現地化とコンプライアンス強化を強調する方向へと転換している。武田中国は組織の安定性と実行力を高める必要があり、そのため中国市場及び内部プロセスに精通し、国際的コミュニケーションと実行を得意とする人材を中国エリアのトップに選ぶことは、理性的で堅実な戦略的配置と言える。
成長ロジックの時代遅れがReFaを葬り去った
このほど、日本製美顔器ブランド「ReFa」の親会社である株式会社MTGは、「上海に所在する完全子会社を解散する」と発表。これにより同ブランドの中国における現地化運営システムは正式な終わりを告げた。
ReFaはかつて中国の美顔器市場における「啓蒙ブランド」であった。2016年に天猫国際(Tmall Global)を足がかりに本格的に中国市場に参入し、2017年のピーク時には中国市場で15億8000万元、グループ全体の約25%を占める売上を達成している。しかし、ここ3年間は連続で赤字となり、売上は大幅に落ち込んだ。
ReFaの急速な凋落の原因は、中国の規制・監督の歩調に追いつけなかったことにある。2020年、深圳市消費者委員会の検査で、ReFaのローラー式美顔器のニッケル溶出量がEU基準の約150倍に上ることが発覚した。国内に強制基準はなかったものの、中央テレビ(CCTV)による報道で、信頼性への不安を引き起こした。2022年には、国家薬品監督管理局が高周波(RF)を用いる美容機器を第三類医療機器に分類したが、ReFaはその登録証書を取得できなかった。
業界内の分析によれば、「ReFaの撤退は、製品力の不足ではなく、成長ロジックが時代遅れになったことが原因だ」という。中国の消費者意識は次第に成熟し、国産のイノベーションは加速し、政府の規制は日に日に強化されてゆく。ブランドが成功するか否かは、もはや誰が先に爆発的な人気を得るかではなく、誰がより着実に歩みを進められるかにかかっている。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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