【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 記事中国商務省が公布した両用貨物・技術の最新輸出禁止令は、日本の各業種・各企業に対して異なる程度の影響を及ぼしている。研究院でその影響を分析してみた。
中国商務省が最新の輸出禁止令を発表、在中国日系企業はいかに対応するか?
2026年1月6日、中国商務省は第1号公告により、全ての両用貨物・技術について、日本の軍事ユーザー向け供給、軍事用途での使用、並びに日本の軍事力向上に資するその他の最終ユーザー用途への輸出を全面禁止すると発表。また、「トランスペアレント規制(穿透式管制)」を実施し、いかなる国・地域の団体または個人が、中国原産の両用貨物・技術を日本の関連ユーザーに転売・移転した場合も、法に基づいて責任を追及することとなった。
今回の禁止令は約700品目を対象としており、希土類(レアアース)、特殊金属(レアメタル)、電子部品、化学薬品、高精度工作機械など10以上の分野に及ぶ。民生用を対象とはしていないものの、両用貨物・技術の軍民共用性が高いため、民生用の産業にも連鎖的な影響が生じることは避けられない。
ただし、業種や企業規模によって影響の程度には大きな差が見られる。
新エネルギー自動車業界への影響は深刻だ。同業界はジスプロシウム、テルビウムといった重希土類への依存度がほぼ100%に達しており、日本国内の駆動モーター用希土類永久磁石の在庫はわずか3~6カ月分に過ぎない。短期的に代替品を開発することも困難であるため、トヨタをはじめとする自動車メーカーの新エネルギー車生産は大きな打撃を受ける見込みだ。
半導体業界への影響は中程度である。日本は半導体産業の強国で企業数も多く、ガリウム、ゲルマニウム、超高純度フッ化物への依存度は高い。ただし、今年に入りガリウムとゲルマニウムの代替材料開発が進展しており、グローバルサプライチェーンの再構築も急速に進んでいる。
伝統的製造業への影響は軽度に留まる。大半の日系企業は原料在庫水準が比較的高く、最短3~6カ月で中国以外の代替サプライヤーを確保できる見込みだ。
サービス業への影響は極めてわずかで、直接的な影響はない。
トヨタ、ソニー、日立、三菱グループなどの大手多国籍企業は、リスク耐性が高く、サプライチェーンの多様化や技術革新を推進するソースを有しているため、影響は相対的に制御可能だ。一方、中小企業は単一サプライチェーンへの依存度が高く、資金力や技術力に限りがあるため、一部企業は中国市場からの撤退または買収のリスクに直面する可能性がある。純粋な民生用を扱う民間企業への影響は小さいが、三菱重工業、川崎重工業といった軍事関連企業に対するコンプライアンス管理の要求は一段と厳しくなるだろう。
総じて言えるのは、全ての在中国企業がこれまで以上に複雑な経営判断のジレンマに直面することだ。在中国日系企業は、製品の最終供給先を厳格に審査し、日本の軍事分野への間接的な流出による処罰を回避しなければならない。
これを踏まえ、研究院は在中国日系企業に対して以下の提言をしたい。
短期的な対応策としては、まず両用貨物・技術の在庫を精査し、在中国の生産に必要な分を優先的に確保するとともに、日本本土向け供給を削減して在庫の使用期間を延長すること。次に、取引先審査体制を強化し、日本の取引先の背景や製品の最終用途に対する全面的な調査を即時実施し、「ホワイトリスト(白名单)制度」を構築して軍事分野への流出を根絶すること。同時に、コンプライアンス研修を強化し、従業員に中国の輸出管理関連法令を学習させるとともに、内部コンプライアンス監視メカニズムを構築し、全産業チェーンのコンプライアンス運営を確保すること。特に軍事関連企業は、民間事業と軍事事業の分離を厳格に行い、民間事業が軍事制裁の連鎖的影響を受けるリスクを低減すること。さらに、独立した民間サプライチェーンシステムを構築し、民生品の生産が軍事用途向け規制の制約を受けないようにすること。
中長期的な戦略としては、在中国日系企業が更なるローカライズを推進し、中国経済の発展プロセスに深度融合することが、持続的かつ安定的な発展を実現するための重要な道筋となるだろう。
在中国日系企業に求められるのは「指示通りに動く実行者」ではなく、
複雑な課題を自主的に解決する「実戦派」
このごろ、企業経営コンサルティング会社コーチ(CoChi)は『2025年中国日系企業人材プロジェクト報告白書』を発表。同白書は、現在の市場成長の鈍化・競争激化という背景の下で、ますます多くの日系企業が共通の課題に直面していると指摘している。その課題は主に以下の点に集約される。
外部からの採用が困難。労働力供給の減速、賃金水準の競争力不足から、熟練した実戦型人材の獲得が困難になっていること。内部人材の断絶。中核幹部が退職期を迎える一方で、次世代リーダーの育成が不足し、組織の後継者問題が停滞していること。組織の活力の低下。長期的な安定した環境が従業員の危機感を希薄にし、変革に対する意欲が低いこと。
多くの在中国日系企業は、外部からの採用だけでは核心的な人材課題を解決できないことに気づき、企業の自主性を強化し、生え抜き型人材の育成に力を入れ始めている。そのカギとなるのは、人材選択の基準を根本的に再構築することだ。すなわち、在中国日系企業に求められるのは、本社の指示に忠実に従う「指示通りに動く実行者」ではなく、複雑な課題を自主的に解決できる「実戦派」である。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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