【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 記事研究院の見解としては、中国がホンダのグローバルなコア市場の一つである地位は揺るがず、ホンダは現在「内部再編」を通じて危機的状況を打開しようと試みている/電子時代に世界を席巻した日本が、AI産業の激しい競争において「傍観者」のような状態にあるのはなぜだろうか?
中国はホンダのグローバルなコア市場の一つとしての地位を維持
このほど、東風本田発動機有限公司(DHEC、Dongfeng Honda Engine Co.Ltd.)広州黄埔工場が正式に看板を下ろしたことで、「ホンダは中国から撤退するのか?」と世間で議論を呼んでいる。
ホンダ中国が直面する状況は確かに厳しい。ホンダ中国が発表した販売データによると、2025年11月の中国における新車販売台数は前年同月比で33.8%大幅に減少。今年1月から11月までの累計販売台数も前年同期比21.9%減となった。中国国産ブランドの価格引き下げ競争とスマート化競争に直面し、ホンダは「価格優位性もなければ、製品魅力にも欠けている」というジレンマに陥っている。
しかし、ホンダにとって、中国はグローバルなコア市場の一つとしての地位を失ってはおらず、ホンダは「内部再編」を通じて危機的状況を打開しようと試みている。2024年にDHECは2億2800万元の赤字を計上し、ガソリンエンジン事業は継続的に圧力にさらされている。新エネルギー転換の大波に直面し、親会社の東風汽車集団は2025年8月、保有する50%の株式を売却すると発表、これが「ガソリン車関連資産構造の最適化と新エネルギー転換の加速に向けた重要な一歩」であることを明確にした。
DHECを引き継いだのは広汽ホンダである。DHECの看板降ろしは「倒産」ではなく、再編・統合され、広汽ホンダの「内部中核資産」とすることだ。主な目的はコスト効率の向上と、ハイブリッド車競争に向けた戦略的準備である。ホンダのi-MMDハイブリッドシステムは依然として中国市場における重要な基盤であり、安定した高効率エンジンの供給が極めて重要だ。現在、広汽ホンダはアコード、ホンダVEZEL(皓影)などのハイブリッド車種にほぼ依存している。
分析では、広汽ホンダによるDHECの買収は、ホンダが中国で打った「守りの一手」だと考えられている。しかし、真に巻き返すには「攻めの一手」も必要だ。中国消費者が求めるのは信頼性だけでなく、スマートコックピット、高速NOA(自動運転技術)、急速充電体験、エコシステム連携などである。ホンダが主導権を取り戻そうとすれば、苦しい戦となるだろう。
AI産業で中米競争が激化、なぜ日本企業は「傍観者」になってしまうのか?
現在、世界のAI産業は中米企業が主役の競技場となっているが、かつて電子時代には世界を風靡した日本は、この激しい競争において「傍観者」のような状態にある。
中国のアナリストは、「AI分野において技術力の強い日本企業に技術的断絶は存在しないが、保守主義、完璧主義、経路依存性(パス・ディペンデンス)が傍観者となった要因だ」と指摘する。
AI産業の競争は、まず国家戦略の競い合いである。日本が改訂した「産業・技術強化行動計画」は「AIは経済安全保障の核心」と主張しているが、実際は依然として伝統的産業を中心に回っている。2025年5月に初のAI法が成立したが、この時点で中米は既に3回以上の政策更新を終えていた。2025年度、日本のAI関連予算は1969億円と過去最高を記録したように見えるが、総予算に占める割合は0.2%未満で、米国の巨大テック企業が単年度に投入する金額のコンマ以下だった。さらに日本は多くの資金をスマート農業、教育デジタル化などの成熟した分野に投じており、生成AI、コンピューティングインフラといった核心分野への支援はごく僅かである。経済産業省の内部文書も、「生成AIが引き起こす技術革新において、日本の政策対応速度は中米に少なくとも18ヶ月遅れている」と認めている。
次に、AI産業の爆発的成長にはデータという重要な基盤が必要である。2025年の日本における生成AIの一般市民利用率はわずか26.7%だったのに対し、中国は81%、米国は68.8%だった。3割に満たない利用率は、現実のシナリオデータが不足していることを意味し、大規模言語モデル(LLM)の訓練にはまさに大量のデータが必要とされる。中国にはTikTok(ティックトック)、淘宝網(タオバオ)の億単位ユーザーの行動データがあり、米国にはGoogle、Amazonのグローバルサービスデータがある。しかし、日本には汎用LLMを支えるスーパープラットフォームがなく、散発的に公開される公共データに頼らざるを得ない。
第三に、日本企業は先端技術に対して概して保守的である。2025年のデータでは、AI応用政策を策定している日本企業はわずか49.7%で、米国の84.8%、ドイツの76.4%を大きく下回っている。
分析では、「日本がAIで苦境に立つ根本的な原因は、製造業時代の成功経験が、インテリジェンス時代において思考の枷となっている点にある」と指摘する。20世紀における電子産業の輝かしい成功は、日本に精密製造と垂直統合への経路依存をもたらした。しかし、このモデルはAI時代には通用しない。AIには開放的なエコシステム、迅速なイテレーション(反復)、試行錯誤の許容が必要だが、日本企業が追求するのは極限の精度、リスク管理、長期的な収益性であり、両者は本来相容れない性質を持つ。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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