【毎週日系企業ウォッチ】


研究院オリジナル 研究院では、異なる業界に属しながら、2025年に中国で利益が急成長した数社の日系企業――サンリオ、ツガミ、スシロー――を分析し、その共通の特徴を探った。同時に、住友ゴムが2026年1月より海外子会社複数社の社名を「ダンロップ」に統一する一方で、中国大陸の子会社はその対象外であることに注目し、その理由を分析してみた。


2025年中国で利益が急成長した3社の日系企業、その共通点は?


研究院が公表済みの決算データに基づき分析したところ、一部の日系企業では2025年に中国市場で利益に急成長が見られ、その代表的なのが以下の数社であった。


サンリオ。2026年3月期上半期(2025年3月~9月)決算によると、中国市場の利益は104.8%増加。主な事業はIPライセンス、グッズ(関連商品)。


ツガミ。主な事業は高精度工作機械、部品加工設備。津上精密機床有限公司の2026年3月期上半期(2025年4月~9月)業績発表によると、中国における複数の核心的財務指標が過去最高を更新、当期純利益は前年同期比47.7%増と、「最も稼ぐ」工作機械メーカーと呼べる存在。


スシロー。主な事業は回転寿司チェーン。2025年9月期(2024年9月~2025年9月)決算によると、海外セグメントの営業利益は前年同期比105.1%増加。海外市場の中でも特に重要なのが中国市場である。


これらの企業はいかにして利益の急成長を実現したのか?


・サンリオ。IPライセンス+現地化運営の二輪駆動モデルを採用。IPライセンス事業は総収入の6割を占める。より多様化・現地化したIPマトリックスを展開し、ハローキティへの単一依存からの脱却に成功。マイメロディ、クロミなどのIPも中国消費者から愛されている。


強力な現地ライセンス代理店であるアリババ系列の「アリフィッシュ(阿里魚)」と提携し、顕著な成果を上げている。オフライン体験の向上に力を入れ、コンセプトショップ、ポップアップストアの展開を加速させ、消費者のインタラクティブな体験を強化。同時に、小紅書(RED、レッド)、抖音(TikTok、ティックトック)などのプラットフォームで話題のコンテンツを打ち出し、ソーシャルメディアマーケティングを展開、IP影響力を高めている。


・ツガミ。技術的障壁+新興産業の需要。精密設備を強みとして競争を回避し、自動車部品、AI液冷などの分野でコア・コンピタンス(他社に真似できない競争力)を有する。売上総利益率は33.1%~34.6%と高く、業界平均を大きく上回る。純利益率は17.2%~18.4%に達し、国内はもちろん、世界のほとんどの工作機械メーカーを大幅に上回る。


AI液冷が新たな成長点となり、2025年1~9月には中国国内の数十社の顧客と設備受注契約を締結。


コスト管理を最適化。世界的なロボットの巨人・ファナックと技術簡素化協定を結び、コア部品のコストを8%削減。安徽工場の鋳物自給率を70%に引き上げ、年間コスト削減幅は3~5%に達する。


新エネルギー自動車の牽引効果が顕著。自動車業界全体は低迷しているものの、新エネルギー自動車のコア部品に対する需要は依然として旺盛。


・スシロー。コストパフォーマンス+サプライチェーン優位性。日本のデフレ期の成功体験を活かし、一人当たり約50元という的確な価格戦略で、同様にデフレ期に入りつつある中国市場の需要に適合。


サプライチェーンの「日本離れ」を推進。スシローの食材の90%は中国国内調達で、全て日本から輸入する場合に比べコストは50%減。


テクノロジーを飲食運営に深く融合。例えば、各皿の寿司にチップを埋め込み、AI予測システムを構築、ロボットを導入して調理。これにより、業界平均を大幅に上回る回転率(1日平均5.8~8回)を実現。


非生食メニューの提供など、現地化イノベーションを実施し、中国消費者の習慣に合わせる。


以上から、2025年に中国で利益成長が最も速い日系企業は、高付加価値化、現地化、多様化という3つの共通特徴を示していることがわかる。これら企業は異なる業界に属するが、その成功体験は、中国市場には依然として多くの機会と巨大な潜在力が存在すること、中国市場のニーズを深く理解し、市場の変化に迅速に対応し、現地化運営とイノベーションを強化できれば、中国市場で豊かな利益を速やかに獲得できることを示している。


住友ゴムの中国における苦境


このほど、住友ゴムは重要な戦略的調整を発表した。2026年1月より、海外子会社複数社の社名を「ダンロップ」に統一し、ダンロップブランドのグローバル運営を強化するが、中国大陸の子会社はその対象外である。なぜ中国市場は例外なのか?


分析によれば、今回の改名が中国現地法人を含まない背景には、住友ゴムが中国で苦境に直面しており、おそらく中国市場により適した戦略をまだ見出せていないことがあるとされる。


住友ゴムが近日発表した第3四半期決算によると、2025年第1~3四半期のアジア地域におけるタイヤ売上高は99億円減少し、同社のグローバル市場の中でアジアは最も下落幅が大きい地域の一つとなった。主な原因は、中国自動車メーカーからの受注減少である。同時に、アジア・オセアニア市場では中国ブランドとの価格競争により売上高が減少している。


住友ゴムの中国における苦境は、本質的には戦略のテンポと市場変化との深刻な乖離にある。競合他社が、現地人材を地域リーダーに起用したり、新規メディアマーケティングやサプライチェーン改革を実施したりするなどして中国市場に深く根を下ろす中、住友ゴムはグローバルブランドの再起動に希望を託しているように見える。しかし、中国市場の特殊性は、世界で最も熾烈な競争があるだけでなく、最も速い変化が存在するという点にある。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。


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