【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 最近、研究院は2025年以降の日系企業の中国での動向を点検した。全体的に見て、閉鎖・撤退と投資強化が共存しており、最も顕著な変化は構造的調整である/キヤノン中山公司の生産停止公告が引き起こした世論の反応は考えさせられるものがあり、興味深い。
進退の間には日系企業の中国市場への見方の変化が示されている
一、中国市場から撤退した日系企業
1.自動車業種
•三菱自動車。2025年初頭、中国での自動車生産と販売を停止すると正式に発表、湖南長沙の合弁工場(広汽三菱)を閉鎖。7月にはさらに瀋陽航天三菱とのエンジン合弁事業を終了し、中国自動車市場から全面的に撤退。
•日産自動車。2025年4月、武漢工場の自動車生産を停止することを決定(年生産能力30万台、運営僅か3年)、これは2024年6月に江蘇省常州工場を閉鎖した後のさらなる撤退措置である。
2.電子電器行種
•シャープ。2025年、複数のスマートフォン製品の販売終了、中国での消費電子事業をさらに縮小。
3.医薬化学工業業種
•住友製薬。2025年4月1日、アジア事業を売却すると発表。住友製薬投資(中国)有限公司などの中国資産を含み、中国での30年間の経営を終了。
•四国化研。不動産市場の低迷の影響を受け、2025年5月14日、廊坊塗料工場を抹消。
•三井化学。2025年6月、中石化との合弁企業(中石化三井化工)から全面的に撤退すると発表、50%の株式持分を譲渡。
4.小売サービス行種
•メナード。2025年2月、中国化粧品市場から全面的に撤退、全国のカウンターを順次撤去。
•ファミリーマート。2025年、華北地域で約100店舗を閉鎖。
•ヤクルト。2024年12月、上海で20年間運営してきた工場を閉鎖、現地法人を解散。
二、中国に新規投資する日系企業
1.自動車行種
•トヨタ自動車。2025年4月、20億ドルを投資して上海に独資の電気自動車会社設立を上海市と契約締結、レクサス純電気モデル及び先進動力電池を生産。これはテスラに続き上海に独資工場を建設する第二の外資自動車メーカーである。
2.高付加価値製造と新材料
•荏原環境工程(Ebara Environmental Engineering)。2025年2月、青島自由貿易試験区で環境保護設備プロジェクトを稼動、総投資額1.2億ドル、年間省エネ環境保護ボイラー及びごみ焼却設備を生産。予想年間生産額は4.4億元。
•旭興進株式会社。2025年7月、江蘇太倉に生産基地を設立、美容医療製品とスマート裝備製造に投資、産業用ロボットなどの産業チェーン企業を導入。
•井上セメント工業。2025年8月、青島華綺新材料と合弁で青島華綺井上新材料公司を設立。
3.医療とハイテク
•大陽日酸(日本酸素ホールディングス)。2025年、上海に医用酸素ボトル充填プロジェクトを設立。同社は世界第四位の工業ガス生産メーカーである。
•パナソニック。2025年9月、上海に新工場を投資建設し、AI関連電子材料の生産に注力。
三、全体分析と結論
研究院の分析としては、全体的な観点から、日系企業が中国市場から撤退する主な理由は三つあると考えている。第一に、市場競争の激化。例えば、三菱自動車、日産の中国での市場シェアが縮小し、低価格家電が国産品に代替されている。第二に、サプライチェーンの調整。多くの日本大型製造業企業は中国事業を縮小する計画で、主に地政学的リスクを分散するためである。第三に、産業アップグレード。多くの日系企業は低付加価値生産能力を東南アジアに移転し、中国市場では高付加価値製品に焦点を当てている。
現在、日系企業の中国での投資のホットな焦点は明らかに二大分野に集中している。第一に、新エネルギー自動車。トヨタ、ホンダなどが電動化への投入を強化している。第二に、高付加価値製造。AI、ロボット、省エネ環境保護などの分野が投資の重点となっている。
つまり、2025年、日系企業は中国で「高付加価値は残留、低付加価値は撤退」という構造的調整を行っている。伝統的製造業や低付加価値分野から加速的に撤退する一方、新エネルギー、スマート製造、ヘルスケアなどのハイテク分野で持続的に投資を強化している。この分化は日系企業の中国市場への再定義——「世界の工場」から「戦略的市場」への転換を反映していると言えよう。
競争で負けても、日系企業は依然として中国人の尊敬を勝ち得る
11月24日、キヤノン中山公司の一つの生産停止公告が、24年にわたる発展の歴史に終止符を打った。キヤノン中山工場は2001年設立、最盛期には従業員が1万人以上いた。
ある分析によると、キヤノン中山工場閉鎖の理由は主に三点。第一に、土地、人件費の絶え間なき上昇。中山キヤノン工場は主にレーザープリンターを生産しており、人件費とサプライチェーンに非常に敏感である。ここ十数年、中山地区の土地、人件費は十年前に比べて数倍上昇しているが、キヤノンのベトナム工場の労働者賃金は中国よりずっと低い。第二に、キヤノンのリスク分散からの考慮。中米関税戦争が日系企業のサプライチェーンに与える影響は巨大で、アップルがフォックスコンに移転を要求するのと同じく、キヤノンもリスク分散を図っている。第三に、中国の国産化代替による市場競争の激化。ここ2年、キヤノンプリンターの市場は大幅に縮小している。以前のプリンター市場はキヤノン、ヒューレット・パッカードなどの外資企業が支配していたが、現在は聯想(レノボ)、奔図などの中国現地ブランドの天下である。
やや意外だったのは、キヤノン中山公司が中国のインターネットで引き起こした世論の論点が閉鎖そのものではなく、その従業員に対する事後処理であったことだ。ネット世論は、閉鎖公告には全編にわたって「感謝」、「敬意」、「謝罪」と「約束」が貫かれていたと考えている。キヤノン中山公司は「コンプライアンスを厳守する」ことを明確に約束し、「法定基準を超えたより優れた解決策を提供する努力」をしており、これはキヤノンが従業員を冷たくコストの数字と見なすことなく、各従業員が差し出した「辛苦の汗」、「知恵」及び「貴重な青春」を肯定したことを体现している。そしてこれは単発的な事例ではなく、中国にある日系企業は基本的に同様で、これが、日系企業が尊敬される点であり、多くの中国企業に深刻に欠けている点でもある。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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