研究院オリジナル 2024年11月下半期、中国メディアの報道・論評が比較的多かった中日経済関係のコンテンツおよび日本企業は以下の通りである。


日本の中古品取引サイト「メルカリ」が意外にも中国の新鋭起業者の新大陸に


メルカリは東京に本部を置く中古品取引プラットフォームで、C to C方式でユーザーに中古品あるいは新品の電子商取引サービスを提供するものだ。ほとんどの人はメルカリが中国の新鋭起業者の「新大陸」になっているなどとは思いもしないだろう。


メルカリは中国大陸では俗に「石炭ストーブ(煤炉)」と呼ばれている。2020年、メルカリはアリババと提携して中国市場に進出し、淘宝(タオバオ)と閑魚のプラットフォームを通じて中国大陸の顧客がメルカリの一部の商品を購入することを認めている。淘宝は中国最大の電子商取引プラットフォームで、閑魚は中国最大の中古品取引サイトであり、月平均ユーザー数は9000万を超えている。この提携は中国の消費者にメルカリに出品されている商品を買うための利便性を提供したといえる。


これと同時に、中国の若い起業者は、メルカリもまた彼らが日本や世界市場に進出する足がかりとなることに気づいた。メディアの報道によると、張偉という名の中国の若者が偶然、メルカリのサイト上の商品は種類が多く、価格も安く、かつ取引プロセスも簡単でスピーディであり、さらに重要なこととして彼のような国外の売り手にとっても敷居が低く、このために絶好の起業チャンスを提供してくれていることに気づいた。彼は中国ではきわめて安価な水晶石を用いて水晶製の額縁をつくり、メルカリで販売すると、とても人気が出て、一か月で3万もの注文が入り、年間収入は100万元を超えた。張偉の起業経歴と似たようなプロセスで、多くの中国の新鋭ブランドがメルカリで人気を得て、各種の欧米新鋭ブランドと世界を舞台に競争している。


日清食品は業績が下がり続ける真の原因を直視していない


先日、日清食品は第1~第3四半期の(未審査の)財務業績を発表した。これによると収入は前年同期比で3.2%減となり、なかでも中国国内市場の第1~第3四半期の収入は前年同期比で2.7%減であった。2024年上半期の業績報告によると、中国国内業務が日清食品グループの総収入に占める割合は61.3%であった。


会社はこの収入減を、消費者マインドの弱含みと人民元が対香港元で値下がりしたためとしている。しかし実際には2021年以降、日清食品の中国国内における業績の成長速度は下がり続けていて、2021年には14.3%にまで減り、2022年には成長スピードが再び大幅に下がり2.1%となり、2023年には日清食品の中国国内市場における収入は5.3%減となっている。


業界のアナリストは、日清食品の業績低下の根本的な原因は市場競争の劇化にあると考えている。日清食品はずっとハイエンド化の位置づけを行っており、中国消費市場の健康志向が強まるにつれ、白象や今麦郎といった中国ブランドもまたしだいにハイエンド市場に足を踏み入れつつあり、日清のシェアを圧迫してきた。


日清食品の電子商取引プラットフォームのフラグシップ店では、「合味道」インスタントカップ麺8個の定価は48.9元で、一個あたりの平均価格は6.11元となり、「康師傅」や「統一」ブランドよりもはるかに高い。このほか、カップ入りの「合味道」は、中国国内で一般的な口径の広い容器に入ったものと比べると量が足りないように見える。


日系車が続々と中国本土の研究開発グループとの提携を深める


11月に開催された広州モーターショーで、トヨタが展示した三大新車はすべて中国本土で研究開発されたもので、bZ3Cは一汽トヨタ、トヨタ中国研究開発センター、BYDの三者が提携してつくりあげたもので、その他2つの鉑智(Platinum)シリーズの新車はトヨタと広汽の研究開発システムが深い提携を行った製品である。


広汽トヨタは20周年記念大会において「聚変2030戦略」を発表した。それは中国のインテリジェント科学技術生態系に全面的に溶け込み、中国のサプライチェーンを全面的に抱え込むというものだ。そのうち最も重要なポイントが、広汽トヨタの研究開発モデルを中国現地における研究開発へと変えるというもので、企画から開発、検証・評価に至るまで製造の全過程の管理を現地グループが100%完成させ、これにより中国消費者の需要をより満足させることのできる製品を生み出し、インテリジェント化・電気化の包囲突破を実現させる。


トヨタ以外の日系自動車メーカーも同じような戦略を取り始めている。東風日産の純電気自動車の世界車種アリアは、中国市場での販売が理想的ではないという状況に直面した後、中国市場の新エネルギー自動車の研究開発と製造を中国本土に移転することにし、今回の広州モーターショーで新型車N7を発表した。東風汽車有限公司副総裁で東風日産乗用車公司の関口勲社長は、今後三年の研究開発への投入は100億元を超える見込みで、技術センターの募集枠を4000人にまで広げると語っている。


長安マツダもまた今年4月にMAZDA EZ6を展示した。この車は長安集団の傘下にある深藍SL03車型と同じプラットフォームを使用し、似たようなインテリジェント運転席と運転技術を採用しており、外観デザインとシャーシーの調整はマツダが担当した。


ユニ・チャームのペット商品への展開は極めてタイムリー


中国の出生率は年々下がり続け、2024年上半期の新生児数は433万人で、全年で900万人を上回らない可能性もでてきた。しかしこれが乳幼児ケア製品を主としたユニ・チャームに与える影響はさほど大きくない。なぜなら、最近ではますます多くの若者がペットを心のなぐさめ、よりどころとするようになっていて、これがユニ・チャームのペットケア業務に発展チャンスをもたらしているからだ。


ゴールドマン・サックス・グループのあるレポートによると、中国のペット飼育数は今年初めて4歳以下の乳幼児数を上回り、2030年には中国のペット飼育数は乳幼児数の二倍になると見込まれている。『2023~2024中国ペット業界白書』のデータによると、現在中国でペットを飼育している家庭はすでに1億を突破しており、80年代、90年代、2000年代生まれの世代がその中心となっている。艾瑞のデータによると、2023年の中国ペット業界の規模は5928億元に達し、前年同期20.1%増で、2025年には8114億元に達する見込みである。


財務報告によると、2023年のユニ・チャームのペットケア用品業務の純販売額は約1394億4600万円(中国元にして約64億6600万元)で、前年同期比11.3%増となっている。安定的に成長している日本市場以外で、中国は北米に続いて二番目に成長が著しい地域市場である。


このチャンスを逃さず、ユニ・チャームは2022年に吉家寵物の41.85%の株式を買収しており、さらに中国ペット用品の市場を広げるための基礎を固めている。最近では、子会社のペパーレットが紙の猫砂を専門に製造する新工場を設立した。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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