『必読』ダイジェスト 『ニューヨーク・タイムズ』は7月15日に「中国の輸出超過が過去最高を記録、多くの国々の警戒を誘発」と題する記事を発表したが、その抄訳を以下に掲載する。
次から次へと無限に電動自動車、膨大な数の家電製品、そして無尽蔵に思える玩具、アパレル、その他の製品が供給されている。
中国海関総署が金曜日(7月12日)に公表した報告によると、中国による驚異的な輸出が6月になってさらに大幅に増加したという。しかし、中国企業や一般家庭が支出をいっそう控えるようになるにつれて、輸入が縮小し始めた。その結果、当月の輸出超過は990億ドルを超え、過去最高を記録した。
中国政府にとって、輸出超過の持続的な拡大は良い知らせだ。はるか遠くの市場の消費者が、多くの中国の家庭にとってはもはや必要とされない、或いは手に届かない商品を購入している。中国は生産能力の拡大を国家戦略の一つとしており、輸出は中国の工場の運営を支え、建設中の工場に多額の資金を提供している。
しかし、持続的に増加する中国の輸出超過は多くの国々の警戒を誘発している。世界各地の役人はみな「中国の輸出が自国の生産能力を代替し、その結果工場が閉鎖に追い込まれ、経済成長が損なわれてしまうのではないか」と不安に感じている。この数週間で、欧州や米国、ブラジル、インド、インドネシア、トルコなどの国々の政府は続々と中国からの製品に追加関税、或いは新たな関税を課している。
中国の前月の輸出超過は2022年7月に打ち立てた記録を更新した。その当時の中国の工場と港湾はまさに先を争うように世界の需要に追い付こうとしていたが、それ以前は新型コロナウイルスの感染拡大により実施された厳重な封鎖のために、中国中部の大半の地域では生産がストップしていた。
6月の輸入額は前年同期に比べて2.3%下がり、約2090億ドルまで減少した。その一方で、輸出は8.6%の大幅増で、3080億ドルに達し、輸出超過は過去最高となった。
輸入の減少と輸出の増加に伴い、米国に対する中国の輸出超過は昨年同期の290億ドルから約320億ドルまで増加した。6月、欧州に対する中国の輸出超過は226億ドルに達したが、前年同期は191億ドルだった。
米外交問題評議会のシニアフェローで、かつてはオバマおよびバイデン政権の高官を歴任したブラッド・セッツァー氏は、6月の数字は「中国の貿易面での実力を過小評価すらしている」と語った。なぜなら、輸出価格が一貫して下がり続けていることで、エアコンやソーラーパネルといった製品の実際の輸出量があっという間に増加し、前月の輸出超過の大幅な増加を招いたからだ。
「この状況は、中国が引き続き輸出、特に製造業の輸出に頼って成長を実現させようとしていることをはっきり示している」とセッツァー氏は付け加えた。同氏はさらに、この戦略によって中国と一部の貿易パートナーとの間の対立はますます大きくなり、「片貿易および中国からの供給への過度な依存」に対する人々の懸念を引き起こすという見解を示している。
中国の工場ではもはや世界の約三分の一の製品が生産されている。中国の最高指導者は「新たな質の生産力」の養成を国家目標として掲げており、その重点は大量のロボットやその他の自動化装置をより多く備えた工場を建設することだ。
政府のデータを見ると、中国は工業の拡大によって不動産危機を帳消しにすることを重視していることが分かる。今年3月までの12カ月間、企業に対する銀行の純融資額は6140億ドルに達している。この金額はコロナ前の6倍に上るが、それはこれまで銀行が不動産業界に対して提供していた融資が、ほぼ完全に企業に対する融資に取って代わったことによるものだ。
(『日系企業リーダー必読』2024年7月20日の記事からダイジェスト)
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