『必読』ダイジェスト  2023年10月、習近平国家主席は第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの開幕式で基調講演を行い、「中国は製造業分野の外資参入制限措置を全面的に撤廃する」と述べた。今年1月、国家発展改革委員会も、「製造業分野の外資参入制限措置を全面的に撤廃する政策を早急に打ち出す」と表明した。3月に公表された「政府活動報告」はすでに製造業分野の外資参入制限措置の全面撤廃を明確に求めており、3月19日、国務院弁公庁は「ハイレベルの対外開放を着実に推進し、外資誘致・利用への取り組みを強化する行動計画」を発表し、「外商投資参入前内国民待遇+ネガティブリスト管理制度を健全化し、製造業分野の外資参入制限措置を全面的に撤廃し、電気通信、医療などの分野の開放拡大を持続的に推進する」としたことから、今年は製造業の外資参入の完全な緩和が期待できる。


華泰証券公司の首席マクロ経済学者である易峘氏が率いるチームがこのほど発表した報告書によると、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した後、外資が大量に流入したことで、初期段階で中国本土の製造業に少なからぬ衝撃がもたらされた。とくに、中国当時の相対的な競争優位性が明らかでない資本と技術集約型業界では、内資企業の市場シェアが大きく低下した。だが、中長期的な発展プロセスから見ると、外資の中国進出は中国企業に先進的な技術とマーケティング、生産、管理などの面での経験をもたらし、国内制造業の生産効率は顕著に向上し、最初のショックの後、中国国内製造業の生産効率は急速に追い上げ、最終的には外資を逆転することができるのが一般的であった。2005年に外資系企業が中国の輸出シェアに占める割合は58.3%だったが、2023年には28.6%まで下がり続けている。


また、労働集約型産業から資本集約型産業、技術集約型産業に至るまで、中国製造業は一歩一歩世界最大規模で、さまざまな種類がある産業システムに発展したが、これらは実は外資に対する参入・開放のおかげである。


労働集約型産業:率先して「包囲を突破」


紡績・繊維、家具などを代表とする労働集約型産業はいち早く外資への参入を完全に自由化し、いち早く飛躍を遂げた。


典型的な代表はアパレル産業で、1980年代にスタートした、外資企業の導入から始まっている。中国は世界のアパレル産業チェーンの移転のチャンスをつかんで、紡績アパレル加工業の受け入れと発展に力を入れ始め、国際市場で先手を取った。1995年までに、中国が世界のアパレル業界の輸出に占める割合は15%に達し、世界のアパレル製造輸出大国の仲間入りを果たした。1990年代半ばから、国内消費者の衣料品の品質に対するニーズが高まり、国内資本企業が国内販売市場へと転換し、現地の衣料品ブランドを展開するようになり、中国の衣料品産業の国際競争力はさらに高まった。


資本集約型産業:急速な逆襲


1990年代初め、機械設備、化学工業、電子設備を代表とする中国の資本集約型業界は外資への開放が始まり、2015年までにほぼ完全に開放された。外資の参入にともない、資本ストックの急速な増加と都市化の後押しも重なり、中国の資本集約型産業の国際競争力は顕著に高まり、高い水準を維持している。


例えば、家電業界は、1980年代より中国企業が海外生産ラインを導入することからスタートし、1990年代になると、地元家電のリーディングカンパニーが外資家電ブランドに対抗するだけでなく、自ら「海外進出」して国際市場を開拓するようになった。WTOに加盟した後、国内の家電トップはさらに「製造を海外へ」から「ブランドを海外へ」と転換及びアップグレードし、本土産業の国際市場での一層の拡大と高度化を推し進めた。2002年以来、中国の家電企業は輸出のファウンドリ、海外工場の設立、国境を越えた合併・買収から、グローバル化資源の利用へと飛躍を遂げた。2012年までに、中国の家電業界の生産規模は世界のトップに躍り出た。


技術集約型産業:高いところからスタート


近年、中国製造業の全方位的なコストと効率の優位性から、技術集約型産業の国際競争力も上昇し始めている。中でも最も典型的なのが、中国の新エネルギー車(NEV)の台頭だ。


中国の自動車業界は出遅れていたため、完成車製造業界では外資参入に対する規制を一貫して厳しくしてきた。にもかかわらず、外資系自動車メーカーを誘致したことで、中国は完全な白紙の状態からローカルの自動車製造能力を急速に育成・発展させることができた。これを基礎に、中国国内の産業チェーンの優位性、エンジニアのボーナス、コストの優位性、内需大市場など複数の好材料が加わったことで、中国のNEVは台頭し始め、国際競争力は直線的に上昇し、2019年以降、輸出規模は30倍近くに増加し、「カーブでの追い越し」を実現する見込みだ。


これと同時に、2018年に中国がNEVの外資比率制限を撤廃し、テスラが上海にギガファクトリーを設立することを承認したことも、業界の発展にナマズ効果(あるグループに異質な存在が加わることで刺激となり、グループ全体の活力が増すこと)を発揮し、中国のNEV産業の技術水準をさらに高めるものとなった。


(『日系企業リーダー必読』2024年6月5日の記事からダイジェスト)

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