研究院オリジナル 2024年9月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。
前言を撤回してトヨタに学ぶ必要性を示した長城汽車
9月25日、中国大手自動車ブランドの長城汽車の代表取締役を務める魏建軍氏は哈弗H9の発表会で、哈弗H9とトヨタには大きな差があるため、長城はトヨタから学ぶ必要があるという考えを明確にした。これは意外な出来事だ。なぜなら、2015年頃、魏建軍氏が製品発表会で自信を込めて、哈弗H9のオフロード力はトヨタのハイランダーに勝り、ハイランダーよりも広く、性能的にもハイランダーを上回っており、ランドクルーザーよりも優れていると豪語していたのが多くの人々の記憶に新しいからだ。
実のところ、近年、李書福氏(吉利)、王傳福氏(BYD)、尹同跃氏(奇瑞)などの中国自動車業界のリーダーたちが、様々なシーンでトヨタに対する敬意と同社から学ぶ姿勢を示している。
分析によると、今回の魏建軍氏の劇的な態度の変化は、自動車業界に対する中国の自動車産業界の理解がいっそう深まったことを示している。中国の自動車産業は原始的で粗削りな段階から徐々に質の高い発展の段階に突入し、同時に市場競争が熾烈になるにつれて、製造のきめ細やかな管理が企業にとって重要な競争のポイントになっている。トヨタの製造モデルは、企業が効率を高め、コストを削減し、品質を高める点で最高の手本となっている。
中国の自動車メーカーの経営者はみなトヨタから学んでいるが、中国の消費者はインターネット上でトヨタを軽視する世論を形成している。あるコメンテーターは、無知から理解の段階に至るには過程を踏む必要があり、中国の自動車メーカーの経営者はみなその過程を踏んできているが、中国の消費者も速やかに成熟していくことを望んでいると呼びかけた。
在中日本企業で最も足りないのは市場のマーケティング要員
近ごろ、中智管理咨詢公司と深セン必達信息技術有限公司は合同で在中日本企業人材の成長に関する調査研究報告を発表したが、その結論は主に以下のとおりだ。
一、半数近くの在中日系企業で中間管理職の人材と一般職員が非常に不足している。二、市場のマーケティング要員が最も不足しており、次に不足しているのは、技術開発と経理の人材だ。三、在中日本企業は一般的に人材の育成と成長を重視しており、約8割の企業が中長期的な人材グループの育成計画を有している。四、人材の能力に対する企業の要求は、変革およびイノベーション、戦略的思考、問題解決能力に集中しており、同時に外国語力も非常に重視しているが、特に日本語と英語だ。五、人材育成の手段において、内部養成と研修会が依然として主流だが、企業も多種多様な人材育成方法を模索している。六、2023年、半数以上の企業が80%以上の業績達成率を記録し、製造業企業全体の業績に好ましい回復傾向が見られる。今後の事業の発展傾向において、多くの企業は中国事業の安定した拡大又は大幅な拡大を計画している。
ユニクロが中国市場で直面している業界を超えた妨害
ユニクロを傘下にもつファーストリテイリンググループは最近、2024年度第3四半期の業績報告(2023年9月~2024年5月)を発表した。報告によると、海外市場でのユニクロの第3四半期単体の収益は前年比19.4%増だったが、唯一「中国および香港市場では収益が減少し、営業利益が大幅に下がった」。中国はユニクロにとって二番目に大きな海外市場で、店舗数は世界最多であり、1000店以上に上る。通販分野において、ユニクロは中国の「双11(ダブルイレブン・11月11日に実施するバーゲンセール)」のアパレル部門でトップの座を10年連続でキープしてきた。ファーストリテイリンググループは2023年度の年間報告で、中国市場は自社成長の柱であり、明らかに、その中でのこうした結果に不意を突かれたような気分だという見解を示した。
社会全体の経済的な環境が良くないのか?ユニクロの2024年度に近い期間の中国服装協会および中国国家統計局のデータによると、2024年1月から4月まで、中国のアパレル業界の一定規模以上の企業(主力事業の年間収入が2000万元以上)は売上高の前年比0.37%増を達成している。利潤総額は前年比7.33%増だ。2023年第1~3四半期、国民一人当たりのアパレルにおける消費支出は前年比6.5%増で、その成長率は2022年の同期よりも7.6%上昇した。
実のところ、中国市場では「ブランドの廉価代替」と呼ばれる事業の勢力が急速に大きくなってきており、ユニクロに対して手ごわい妨害を形成している。「ブランドの廉価代替」とは、ブランド企業のOEM生産を担う中国の工場が1688やタオバオ、小紅書、抖音商城、拼多多などのサイトのサポートを得て行っている事業で、今や楽屋裏から表舞台に登場しており、これらのサイトは「U家同款(ユニクロの同等品)」、「U家試衣間(ユニクロ試着室)」などのキーワードで、同サイトで販売されている商品は事実上ユニクロの商標がついていない同等品であることを消費者に暗示しており、その価格もユニクロのわずか半額で、中にはユニクロの定価の五分の一という物さえある。例えば、定価が99元のユニクロのショルダーバッグが、拼多多では同等品がわずか17.9元で販売されている。
コピー商品の存在やアフターサービスなどの面でリスクがあるとはいえ、中国経済発展の失速により、消費者たちは「ブランドの廉価代替」を受け入れる態度を示している。そして、消費者から見れば、コストパフォーマンスで中国市場を切り開いてきたユニクロはすでに本来の趣旨から離れており、『日本経済新聞』のある調査によると、日本のユニクロにおいて2万円(約980元)で購入できる商品数は、中国のユニクロの実店舗にて同じ金額で購入できる商品数の約2倍だが、日本の一人当たりの収入は中国の約2.6倍だ。
しかし、ユニクロは中国市場での厳しさをまだあまり意識していないようだ。むしろ有名なデザイナーやスーパーモデルとの協力に力を注いでおり、文化的な素養を向上させ、ブランドの高級路線化を推進することを目論んでいる。例えば9月25日に、ユニクロは上海博物館と協力して文化芸術作品を制作している。これらすべての点から分かるように、ユニクロはまさに現実に逆行しているようだ。
日系資本の商業施設はなぜ中国で明暗を分けているのか?
中国はけた違いに大きな消費市場であり、これまでずっと日本資本の商業施設の戦略的な重要地区となってきた。しかし、これらの商業施設の中でも中国で成功した施設もあれば、ひっそりと退場した施設もある。
まず、失敗例を見てみよう。
伊勢丹百貨店は最も早く中国市場に進出した外資系百貨店だが、現在同百貨店は天津店を除いて、自社経営のプロジェクトはない。伊勢丹が敗退した原因は、百貨店業態が重きを置く「品」の本質とショッピングセンターが重視する「場」の性質との間で発生した衝突にあり、同社はそれに対応した変革を遂げることができなかった。
上海高島屋百貨店は同社グループが中国で展開した唯一の店舗で、2012年に開業したが、赤字の状態が続いたために、2019年8月に閉店した。その主な原因は同業他社との競争の激化であり、また通販や免税店の台頭により、日本商品に対する中国国内消費者の消費チャンネルがさらに多様化したため、日本式の風情が漂う伝統的な日系百貨店は大打撃を被ったことにある。
続いて、成功例を見てみよう。
三井不動産の「らら」のネーミングを冠する商業施設シリーズ。上海申通地鉄公司と協力して設立したLaLa stationは、国内消費者の消費傾向と習慣に寄り添い、日本のアニメのIPを十分に活用し、体験式の消費シーンを構築し、国際的および地元の特色を融合したブランドの組み合わせを図り、オンラインとオフラインにおける訪問数の転化を実現した。北海道拉麺・白屋や大阪王将、名蔵かつくら、POMMES PROSTなどの上海初又は中国初上陸の日本料理店を誘致し、さらに不定期で日本の特色あるテーマを題材にしたキャンペーンを開催しており、インスタ映えする人気スポットとなっている。
寧波阪急。H2O RETAILINGが杉杉集団と提携して共同開発し、「1号店収穫機」戦略をとり、都市、エリアの1号店となれるブランドを積極的に引き入れ、2023年の1年間で新たに33店舗を新規開店したが、そのうち24店舗は初出店のブランドで、初出店率は73%に達しており、消費の人気エリアとなっている。
永旺(イオン)夢楽城。中国に進出してからの十数年間、永旺夢楽城は拡張し続けて、成熟した開発運営モデルを形成しており、自社所有物件とアセットライト協力の同時進行によって速やかな開拓を行っている。現在、永旺は中国国内に150以上の様々な業態の店舗を共有しており、広東や山東、湖北、江蘇、湖南、北京・天津などの地区をカバーしている。
成功及び失敗の実例を対比して分かったことは、成功者は以下の2つの重要な点を把握している。一つは、自社の優位性を存分に発揮できる日本式のスタイルときめ細やかで気の利いたサービスを提供することができ、また時代に即して発展および変化する必要がある場合に、現地市場における消費の変化に合わせて直ちにブランドと業態の調整を図ることができることだ。もう一つは、市場開拓とプロジェクト建設時に、地元の企業との協力を深め、国内市場についてより詳しく理解し、それに基づいてすぐに戦略を調整できることだ。
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