『必読』ダイジェスト  複数のメディア報道をまとめると、多くのグローバル自動車メーカーが中国の科学技術大手により注目するようになっており、この世界最大かつ変化が最も早い自動車市場の一つでシェアの奪還を狙っている。


最近、韓国のヒュンダイ自動車と起亜自動車(Kia)が中国のインターネット大手・百度(バイドゥ)との協力を計画していると発表、中国の自動運転および自動車ソフトウェアシステム向けのマップと人工知能(AI)技術の開発を行うという。日産自動車もAI分野でやはりバイドゥと提携することを公にしており、トヨタ自動車もゲーム最大手のテンセントとタッグを組んでAIモデルやクラウドサービス、ビッグデータの開発に取り組む。


また、メルセデスベンツは、テンセントの人気モバイルレーシングゲームを自社車両のエンターテイメントシステムに搭載することで、ベンツがドライバーの「プライベートゲーム機」に変身すると発表。中国はメルセデスベンツにとって最も重要な単一市場だが、昨年同社の中国市場における販売台数は減少している。


これらの協力関係の多くは、少し前に開催された北京モーターショー(4月25日から5月4日まで)で発表された。現在、中国市場における競争はますます熾烈なものになっており、こうした競争は何カ月にも及ぶ価格戦争といった形で展開されているだけでなく、また自動運転やソフトウェアシステム開発においても繰り広げられており、現在これらのシステムのおかげで、中国国内ブランドは世界最先端の技術を持つ自動車メーカーの仲間入りを果たすことができている。


イノベーションが推進されている中で、中国の自動車メーカーは昨年初めて、中国国内の販売台数で海外のライバル他社を上回った。次第に進む電気自動車へのシフトによって、海外のエンジン車メーカーが有する優位性が失われている。


「海外自動車メーカーは中国市場を失いたくない」と建銀国際(CCB International)でアナリストを務める曲克氏は語り、「中国の電気自動車メーカーは消費者の満足のために尽力しており、かなりの低価格で一連の機能を提供している」と述べる。


自動運転はまさにそのうちの1つだ。中国国内メーカーはこの技術に巨額の投資を行っているが、一般的にビッグデータやAIコンピューティングを得意とする中国の科学技術企業と提携している。これまでのところ、データ問題に対し中国の主管部門が持つ懸念の影響を受けて、テスラは依然として同社が有する世界トップレベルの完全自動運転システムを中国市場には投入していない。


賽力斯(Seres)、理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(XPeng)そして蔚来集団(NIO)を含む電気自動車およびプラグインハイブリッド(PHEV)自動車メーカーはみな様々なタイプの自動運転機能を提供している。


中国の通信機器大手・ファーウェイが先月発売したソフトウェアシステムには、運転アシストや駐車およびその他の自動運転を支援する機能があり、東風汽車や長安汽車、賽力斯汽車、吉利汽車(Geely Automobile)を含む中国国内ブランドがみな、年内に自社車両にこのファーウェイのシステムを導入することを計画している。


海通国際でアナリストを務めるバーニー・ヤオ(Barney Yao)氏は、「自動運転サービスの提供を望む海外自動車メーカーにとって、中国の科学技術大手との提携は当然ともいえる選択だ」と語る。野村のアナリストである応重熙(Joel Ying)氏は、「今年は“スマート運転”機能が中国の大衆市場に浸透する点で象徴的な一年となるはずであるため、海外自動車メーカーは頑張って先頭に追いつく必要がある」という考えを示した。


相互制御システムも競争の対象であり、その機能には、ドライバーの健康データやストレスレベルを分析して運転アドバイスを提示し、ドライバーと同乗者が言葉とジェスチャーで自動車システムを制御できるようにすることが含まれている。最も優れた相互制御システムはローカルデータにアクセスする必要があり、それは例えばユーザーの運転嗜好性や中国の交通・道路状況などだ。


建銀国際の曲克氏によると、中国人ユーザーのデータを有しているのは中国の科学技術大手だけだという。


一部の車載機能の中身は比較的にシンプルなもので、例えば、カラオケや冷蔵庫、マッサージチェアなどだ。しかし、アナリストは、「これらの機能が新世代の自動車イノベーターおよびトップランナーとして国内自動車メーカーが放つ輝きを強めるものとなっており、市場シェアを失っている海外自動車メーカーにとっても、それらの機能がヒントにならないわけではない」と指摘する。


コンサル会社のグローバルデータ・オートモーティブでアジア予測担当ディレクターを務めるジョン・ゼン(John Zeng)氏は、「中国における自動車運転が今、単純な交通手段ではなく体験に変わりつつ」あると語る。ゼン氏はまた、「ドライバーがハンドルを握る必要がなくなる時、彼らはより良いエンターテイメントを欲するようになるだろう」と述べている。


海通国際のヤオ氏によると、海外自動車メーカーにしてみれば、今競争に加わらなければ、完全にチャンスを失ってしまうことになる。そして中国企業との協力はこの競争に対応する上で最も手っ取り早い手段だ。


(『日系企業リーダー必読』2024年5月20日の記事からダイジェスト)

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