『必読』ダイジェスト 「(対中)リスク回避=デリスキング」はここ数年、ドイツと中国経済の関係を論じる際に最も多く使われるキーワードになっており、ロシアのウクライナ侵略戦争によって、ドイツ経済の対中依存度がホットな話題となっている。「デリスキング」とは一体何か?ドイツIFO経済研究所の最新の調査によると、分野によって千差万別であるいうことが明らかになっている。
IFO研究所が今年2月に行った抽出調査によると、工業、貿易の分野では依然として、中国産の原材料、商品に対するドイツ企業の「依存度」――アンケート調査では「依存度」を調査対象の主観的受け止めと客観的な指標を共通の意味に定義している――はそれぞれ40%まで低下していない。この割合は前回調査時――ウクライナ戦争ぼっ発の少し前でもある――に比べて明らかに低下している。
このうち「デリスキング」効果が最も顕著だったのは家具製造業と自動車製造業であり、この両業種では中国由来の重要原材料、あるいは半製品企業に依存する割合が29ポイントから17ポイントまで低下している。
しかし、ドイツで最も国際競争力を備えている化学工業は「デリスキング」をしていないのみならず、逆に対中依存度を高め、アンケートに答えた同分野の企業の46%が中国の売り手に依存しているとし、この割合は2022年の調査に比べて5ポイント増加している。
この少し前、ドイツのもう一つの著名な研究機関であるケルン経済研究所(IW)は発表したレポートで、「化学工業、電子製品の分野において、ドイツ企業は中国に対する依存度を低下させることができてはいない」と指摘している。
大多数のドイツ企業は中国に自社の生産基地を持たず、また(持っていたとしても)これらの生産基地は重要な半製品を入手し、調査によると、これらの企業のシェアは2022年に比べてほとんど変化が生じていない。
このほか、IFO研究所がロシア・ウクライナ戦争ぼっ発前に行った調査結果に比べ、将来的に中国からの輸入を引き続き削減することを希望する企業が占める割合は低下し、ドイツ政府だけが企業に対して対中「リスク回避」を望んでいるが、政府のこの呼びかけに応じるドイツ企業は増えないばかりか、逆に減少している。
では、対中「デリスキング」を実施しているドイツ企業はどんな動機があってそうしているのか?調査から次のことが明らかになっている。まずサプライチェーンの多元化が重要な戦略目標になっているのは、彼らはサプライチャネルの多元化によって、ある一国に対する過度な依存と地政学的な不確定を避けることができるからである。これが2022年に回答企業の41%が中国からの輸入を減らした政治的要素の一つに挙げ、2024年になるとその割合がもはや65%に上昇している理由である。
このレポートは重ねて次のように指摘している。ドイツ工業企業の多額の対中直接投資はドイツが中国から大量の製品を輸入しているからであり、この種の直接投資は一定のロバスト性(堅牢性)を備えている。レポートはまた、「ドイツ政府がもし貿易多元化のプロセスを推進するならば、対中直接投資を政策制限の視野に入れなければならなくなる」という認識を示している。
(『日系企業リーダー必読』2024年4月20日の記事からダイジェスト)
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