研究院オリジナル 2024年7月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係の内容および日系企業について多く取り上げた。
価格競争への参入を余儀なくされても、解決できないトヨタの問題
6月18日、一汽豊田は自社公式マイクロブログで、当日24時間限定のタイムセールを実施することを発表し、「国民的人気車種」として名高いトヨタ・カローラの価格が8万元以下まで大幅値引きされて販売された。そして、12万元のカムリ、15万元のアバロン、23万元のハイランダーなど他の車種もプロモーション価格で続々と提供され、1年前には「価格競争には臨まず、商品価値で戦いに挑む」というスローガンを挙げていたトヨタ自動車も、各主力車種の価格を全面的に値下げした。
7月5日、一汽豊田は同社の公式ウィーチャットパブリックアカウントで、「今年1~6月、自動車市場で最も影響力があり、持続時間が最も長く、影響が最も広く及ぶキーワードは、やはり価格競争だ」とコメントした。
情け容赦のない市場競争によって、トヨタは中国で価格競争への参入を迫られた。同社の6月の販売台数は前年比12.9%減で、これで同社の販売台数の前年比減は5カ月連続になる。カローラはトヨタの花形車種だが、カローラの販売台数も大幅に減少しており、5月の販売台数はわずか7693台で、前年比54.96%減だった。販売台数の下落に歯止めがかからないため、トヨタはよりアグレッシブな値下げ戦略をとることによって市場を盛り上げざるを得なくなっている。
価格競争はトヨタの劣勢を挽回できるのか?以下に示すとおり、アナリストはこの状況を決して楽観視していない。
一つ目に、中国自動車市場の価格競争の熾烈さはすでに尋常ではない状態になっている。2023年の中国市場における新車の平均的な市場販売価格や末端取引価格は、2022年に比べて10~15%下落しており、2024年の1~4月は、2023年を基準にすると、さらに10%下がっている。長きにわたって価格競争を経験してきた中国の自動車も次第に耐え切れなくなってきている。6月に開催された2024中国自動車重慶フォーラムで、吉利の李書福代表取締役は、「キリのない過当競争や短絡的で乱暴な価格競争が展開された結果、手抜き作業や材料のごまかし、偽造および偽装取引、法令に従わない無秩序な競争がもたらされた」と批判した。価格競争は本来、トヨタが得意としない分野であり、トヨタの理念にも合致しないため、同社がどこまで耐えられるかはまさに不透明だ。
二つ目に、トヨタが直面しているのはモデルチェンジの問題であり、価格競争は解決手段とはならないことだ。これまでずっと、エコと品質の安定がトヨタの核心的な競争力だったが、電気自動車の急速な台頭によって市場構造が変化してしまったため、従来型自動車企業はいずれもモデルチェンジの問題に直面している。トヨタはハイブリッドの分野で技術的な強みを有しているとはいえ、中国のハイブリッド技術も今まさに急速な追い上げを見せている。例えばBYDのDMiハイブリッド技術や吉利の雷神動力、長安の智電iDD、長城の檸檬混動DHTなどは、強大な市場競争力として続々と頭角を現しており、純電気分野における中国の自動車はさらに競争面での優位性を有している。
三つ目に、価格競争はトヨタの利益率を大幅に圧縮させるだけではなく、さらに企業のブランドが持つ付加価値力を消耗してしまい、トヨタに長期的な不利益をもたらしてしまうことだ。
ある情報によると、現在の難局に対処するために、一汽豊田は営業本部を北京から天津工場に移転してコスト削減を図る可能性がある。しかし、今のトヨタにとって、より重要なのは、新エネルギー時代の到来および市場競争の継続的な激化に直面している中で、将来の競争力を再構築するために、時をとらえて新たなモデルチェンジの道を模索することだ。
伊藤忠商事の越境ECビジネスは最盛期を迎える可能性あり
7月4日、伊藤忠商事株式会社の一行は厦門に本部を構える中国の越境ECサイトの雨果跨境とビジネス協力について検討した。
実のところ、早くも2015年に、伊藤忠商事は中国の消費者を対象に日本の製品を販売するための越境ECの業務展開を開始し、同社は日本製品に特化した越境ECサイトのINAGORA(豌豆公主)に投資したが、その頃、INAGORAのユーザ-数は300万人に到達し、同サイトは味の素やサマンサタバサ、トリンプなどの日本企業の食品や化粧品、アパレルを中心とする約4万点の商品を取り扱った。2017年に伊藤忠商事は中信(CITIC)集団と提携して中国の富裕層を対象にした越境ECサイトを開設した。
その後、安くて品質も良い中国のアパレルおよび雑貨などの商品が、日本人に歓迎されるようになるにつれて、伊藤忠商事は中国の商品を越境ECで日本に販売する事業を開始し、2023年に同社は中国の越境EC企業の史尼芙(SNIFF)と合弁会社を設立し、伊藤忠商事は49%出資した。合弁会社はECサイトを介して商品を調達し、日本に出荷している。
アナリストは、次に競争が激化する産業は中国の越境EC業務だと見ている。7月に、中国(厦門)国際越境EC展覧会で、グーグルは越境ECを加速する計画を正式に打ち出し、年内に厦門自由貿易試験区内にグーグル初の越境EC加速センターを設立するという。これは伊藤忠商事にとって、中国で長らく開拓してきた越境ECビジネスがついに発展の最盛期を迎えることを意味している。
日本の製薬企業が目をつけ始めた中国の革新的な医薬品
近ごろ、中国国内の小分子抗がん剤が史上最大のBD取引(企業間の協力、ライセンス又は投資)を迎えている。6月14日、亜盛医薬と武田薬品は新薬(オレバチニ)の独占的ライセンス契約を締結し、武田薬品は亜盛医薬が新たに発行した7500万ドル相当の株式を取得し、亜盛医薬の第二株主となる。
武田薬品が中国の革新的な医薬品パイプラインのライセンスインを行ったのはこれが初めてではない。2023年1月、同社は11億6000ドルで和黄医薬のフルキンチニブの中国を除く全世界での販売権を取得し、そして最近、フルキンチニブは正式に欧州市場の参入が認められ、米国および欧州というベンチマークとなる二大市場への海外進出に成功した初の中国オリジナル新薬となった。
中国の革新的な医薬品との協力が密接な日本の製薬企業は武田薬品だけではない。過去1年間に、第一三共やアステラス製薬、エーザイ、大鵬薬品工業、中外製薬などを含む製薬会社が中国の革新的な医薬品とのBDを行っている。大鵬薬品工業を例に挙げると、2024年3月、同社は海和薬物とグマロンチニブの独占的ライセンス契約を締結し、その3カ月後、グマロンチニブは正式に日本での製造販売が承認された。
日本の製薬会社が中国の革新的な医薬品パイプラインの特上得意様になっている主な理由は、まず中国の革新的な医薬品に「出国ブーム」が生じているからであり、2023年の中国の革新的な医薬品のライセンスアウトの取引数は2022年と比べて32%増加した。二つ目に、中国と日本の製薬会社の疾病研究分野が非常に似ていることだ。三つ目に、日本の製薬会社が米国という単一市場に対する長期的な依存から脱却することを希望しているからだ。
中国の消費傾向が急激に変化、ユニクロがモデルチェンジ計画を発表
7月、ファーストリテーリンググループが発表した第1四半期から第3四半期までの業績は非常に好調であり、ユニクロの中華圏市場の収入は5225億円で、2023年度の同期よりも9.7%増加した。
同時にユニクロは中華圏市場の戦略も更新した。ユニクロで中華圏地区のCEOを務める潘寧氏は、コロナ禍の流行が終わった後、中国の消費者の消費観念は変わりつつあり、コストパフォーマンスが多くの消費者、特に若年層の消費者にとって最優先事項となっているという見解を示した。
アナリストは、中国市場に対するユニクロの理解は非常に深いと見ている。ユニクロブランドはシンプル、高品質、ベーシックモデル、定番という特色を維持しており、機能性商品は日常的な着用だけでなく運動のシーンにもふさわしく、価格と価値が好ましいバランスを保っており、全ての年齢層の顧客に最適であり、これらすべての特色は中国消費者のトレンドの変化にタイムリーに、且つぴったりと合っている。
ユニクロの計画によると、今後中国市場の実店舗戦略においては品質と効率により重きが置かれ、同社の目標は毎年少なくとも50店舗を新規開店することだ。これと同時に、ライブコマースの成長もいっそう推進する。5月末時点で、ユニクロ中国のオンライン会員は8000万人で、この5年間で倍に増加した。