研究院オリジナル 2024年6月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。

従業員がこぞってリストラに立候補、広汽本田で生じたドラマのような事態

5月から、広汽本田(広本)が大規模なリストラを断行したが、その主な要因は販売台数の減少による企業の生産不足だ。自動車業界でスマート電動化へのモデルチェンジが加速するにつれ、近年広本の販売台数は減少の一途をたどっていた。2024年5月、同社の販売台数は前年比41.31%減で、今年1月から5月までの累計販売台数は前年比24.3%減だった。広本の稼働率も低下し続けており、2022年の約100%から2023年には84.57%まで下落した。

広本のリストラに対して、意外にも従業員は積極的な反応を示し、リストラ枠の入手が春節の鉄道切符の調達よりも困難になり、従業員が先を争うようにリストラに立候補するというドラマのような事態が発生した。中国メディアの報道によると、第1回目のリストラの定員はすでに争奪戦が終わっている。従業員がリストラ枠に殺到する主な理由は、同社の保証プランが非常に手厚いからであり、同社は離職者に対して「N+2+1.8(勤務年数1年につき給料1カ月分を支払う基本退職金「N」に給料2カ月分を上乗せした「N+2」に、さらに1.8カ月分の給料を追加)」という保証プランを提供するとしており、勤続年数10年で月給1万元の職員の場合、離職の際に得られる補償額は大体18万元になる。広本には勤続年数が十数年の古参社員が多く、給料も低くはないため、補償額が数十万元に上る者もいる。今回のリストラによる補償は、一般のアルバイトにとって巨額の収入を得るチャンスであり、長年にわたって蓄えた貯金に相当する。さらに一部の同社従業員は小米、理想、BYDなど急速に台頭している新エネルギー自動車メーカーに転職するつもりであり、輝かしい前途があるこれらの従業員にとって、今回のリストラはまさに離職の絶好のチャンスとなっている。

モデルチェンジの加速、日産自動車が常州工場を閉鎖

最近、日産自動車は、中国江蘇省常州市にある自社製造工場の閉鎖を正式に発表したが、同工場は2020年の稼働開始から4年足らずの操業で幕を閉じた。常州工場では主にSUV車種の「キャシュカイ(逍客)」が生産されたが、同車種はニッサンで最も売れ行きの良い三大車種の一つだ。常州工場が閉鎖された後、同車種は大連工場で生産される

日産自動車によると、中国市場において純電動自動車が普及し、価格競争が熾烈になったことで、純電動車種(EV)が少ない日系メーカーは販売面で巨大な試練に直面しているが、今回常州工場を閉鎖したのは「生産の最適化」のためだ。

データによると、2024年1月から5月まで、中国エリアにおける日産自動車の乗用車および軽商用車という二大事業分野を含む累計の販売台数は28万6445台で、前年比1%減で、東風日産は何度も全国乗用車市場情報連合会が発表するメーカー販売台数ランキングのベストテンから漏れている。しかし、2018年の頃、中国における日産の年間販売台数は156万4000台で、トヨタ中国や本田中国を上回っていた。

アナリストによると、日産自動車による今回の常州工場の閉鎖は、同社の世界的な資源配置の最適化や電動自動車や一部のスマートモビリティ技術の発展に力を結集させるためだという。日産中国管理委員会の主席で、東風自動車有限公司で総裁を務める山崎庄平氏は、「中国における新エネルギー自動車の市場浸透率は50%を超えている。市場および消費者のニーズの急速な変化により良く対応するため、日産自動車は中国市場におけるスマート化および電動化のモデルチェンジを加速させている」と語った。計画によると、2026年度までに、同社は新たに30車種をリリースする予定であり、そのうちの16車種は電動自動車で、2030年までに電動自動車とガソリン車のコストパリティを実現するという。

中国の急速な発展に追いつくべく、ブリヂストンが中国への投資拡大を計画

最近、ブリヂストン(中国)投資有限公司は、引き続き中国における投資を拡大することを発表し、今後3年以内に計5億6200万元を投資する計画であり、主に生産基地建設の強化に対して投資し、高性能自動車用タイヤの生産比率を向上させることにより、中国の消費市場の需要を首尾よく満たすことを目標にしている。

ブリヂストン(中国)投資有限公司のアグスティン ペドローニ社長は中国メディアの『毎日経済新聞』からの取材を受けたときに、今後の約3年間、中国の自動車市場、特に新エネルギー自動車の分野は継続的な成長を維持すると見られるため、当社は引き続き販売ネットワークと工場への追加投資を行い、中国の急速な発展についていくつもりだと語った。

中国自動車市場の「過当競争」に対処すべく、ブリヂストンは新エネルギーおよび高級車市場に重点を置いている。同社は、現在の中国が新エネルギー自動車の分野で世界をリードする地位を占めており、今後数年間は同様の情勢が続くと見ている。特に中国の乗用車の高級路線化の傾向は同社も肌で感じている。約7、8年前、同社の無錫工場で大量生産されていたのは16インチ以下のタイヤで、17インチ以上の高規格タイヤが占める比率は20%未満だったが、今では同工場で生産されるタイヤの95%が、17インチ以上の大きなサイズのタイヤだ。

しかし、高級市場でブリヂストンが直面している試練はどこにでも存在する。中国の国産タイヤによる代替競争は激しさを増しており、自動車市場の「価格戦争」もタイヤ産業にまで波及しているため、顧客である自動車メーカーの多くが値下げを要求している。

ブリヂストンの戦略は製品およびブランドの優位性を発揮することであり、一部のハイエンドな新エネルギー自動車工場と緊密な協力を展開しており、好ましいウインウインの関係を形成している。アグスティン ペドローニ社長は、人々は割高になってもブランド製品を買いたいと思うようになっているが、なぜならそのブランドが代表しているのは、自社が擁する歴史や質に対する保証だからだと語った。

赤字にも乱されない明治乳業による継続的な中国投資の歩調

2023年度、明治ホールディングスの中国子会社の牛乳およびヨーグルト事業が大赤字となったが、その中の主要な赤字は中国が展開する「澳亞牧場」の4億8900万円だ。明治によると、赤字の原因は飼料価格の大幅な上昇と原乳価格の下落だ。澳亞集団の財務報告によると、消費環境の影響を受けて、2023年度の乳製品消費の成長率は十数年来で最も低く、消費者は価格に対してより敏感になっており、乳製品メーカー間の価格競争も熾烈になっている。

赤字を計上したとしても、中国における明治の継続的な投資のペースに何ら影響はない。2024年1月、明治は15億元を投じて広州に工場を建設したが、同工場は明治の投資による6番目の工場であり、明治中国は華南地区の牛乳およびヨーグルト事業に対する保障を提供する。

業界内の分析によると、乳製品業界における一部の外資企業は撤退しているが、明治は撤退しないばかりか、さらに投資している。なぜなら、中国の乳製品市場にはまだ大きな成長の余地があるからであり、この観点から見ると、明治には先見性がある。また、ある業界関係者は、明治牛乳の強みはその先進的な製造プロセスと商品開発にあり、現在の中国市場でまだ十分に発展していない分野における一つの方面は製品の位置付けに関するもので、もう一つの方面は低温物流の影響を受けるものであり、今後は中国の物流企業と深い協力を確立して、低温物流の産業チェーンを構築し、販売の範囲を拡大すると同時に、商品開発において中国市場における実際の需要と消費傾向により近づけるようにすることを提案する。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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