『必読』ダイジェスト 「全固体電池に関して、我々は協力して難題に取り組む必要があり、また全固体こそ我々が直面している脅威であり、挑戦でもある。中国の電池産業は今や世界をリードしており、中国のこの産業が覆されてほしくはないが、全固体電池にはそれを覆せるほどの潜在力が備わっている。中国にはさらにリスクが存在しており、そのリスクを重視する必要がある」。1月22日、新エネルギー動力システムおよび交通電動化の権威ある専門家で、中国科学院院士であり、清華大学の教授を務める欧陽明高氏はそう語った。

1月21日から22日まで、「中国全固体電池産官学連携イノベーションプラットフォーム」設立大会および中国全固体電池イノベーション発展サミットフォーラムが北京で開催された。同大会の期間中、欧陽氏は、全固体電池は誰もが認める次世代電池の最優先候補の一つであり、中国や日本、韓国、米国、欧州連合など主要な国々の発展戦略に組み込まれており、次世代電池技術競争の重要な攻略ポイントとなっているという認識を示した。2030年前後に全固体電池の量産化が大きく進展する可能性が極めて高いため、中国の電池産業に警鐘を鳴らす必要がある。

資料によると、液体電池は現在の電池技術の中で最も広く応用されており、それには鉛蓄電池やニッケル水素充電池、リチウムイオン電池などが含まれる。液体電池のコストは比較的に低いが、液体電池の電解質は液体であるため、液体の漏れや膨張といった潜在的リスクによって、発火や爆発などの危険がある。液体電池と違って、固体電池は固体電極と固体電解質を用いた電池だ。

欧陽氏によれば、全固体電池は液体電池に比べていくつも革命的な技術の潜在性を有するが、1つ目は高い安全性で、2つ目は高いエネルギー密度、3つ目はハイパワーの特性、4つ目は好ましい温度の適応性、5つ目は材料選択の範囲がより広いことだという。しかし、全固体電池の量産化は、依然として一連の科学技術面での難題に直面している。

現在、全固体電池は多くの国家間における新たな競争の方向性となり始めている。欧陽氏によると、日本は国を挙げて全固体電池の商品化を推進しており、産官学連携の共同事業体を有し、トヨタやホンダ、ニッサンは今世界全体で、全固体電池の開発だけでなく、自動車の生産にも取り組んでおり、電池と自動車性能の整合と結合の面で優位に立っているが、その中でもトヨタの取り組みは最も早くて深いという。韓国の三大電池メーカーのLG新エネルギー、三星SDI、SK Onは、全固体電池分野でいずれも実質的な進展を遂げている。

メディアの報道によると、ホンダは2024年に固体電池の実証ラインの立ち上げを計画しており、2025年以降に同電池を車両に採用することを目標にしている。韓国のSK Onは今、高分子酸化物複合および硫化物の2種類の固体電池を開発しており、2026年までに試作品を生産し、2028年に商品化を実現することを目標にしている。三星SDIは現在負極のない固体電池の開発に取り組んでおり、2027年に量産に入る予定だ。

欧陽氏によると、固体電池の技術ロードマップの選択において、中国企業は固体と液体の混合をメインにしている。半固体電池は安全性を向上させる技術の一つだが、革命的な技術ではない。半固体電池は今、試験的な車両への装着が行われているが、良品率や電池コスト、充電倍率、サイクル寿命において問題の解決を必要としている。業界全体から見て、中国は半固体電池に近い技術ロードマップを発展させることに加えて、急進的な全固体の技術ロードマップがもたらす破壊的なリスクに警戒する必要がある。

中国の電池産業の側からすれば、既存の液体電池によって築かれた産業チェーンがかなり巨大で成熟しているため、全固体電池の進展に対して十分な共通認識を持つ必要がある。

「今、全固体電池を作ろうとするならば、原料から基材の生産、セル/電池のパッケージング、電池生産の応用、電池回収まで、既存の産業チェーン全体が巨大な打撃を受ける」と欧陽氏は語り、さらに中国の全固体電池の開発は現状として、認識が統一されておらず、力が分散されており、産官学連携の調和がとれていないため、協力して共同のイノベーションプラットフォームを設け、全固体電池量産化の基幹技術において共に画期的な発展を目指す必要があるという見解を示している。

(『日系企業リーダー必読』2024年2月5日の記事からダイジェスト)

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