研究院オリジナル 2024年6月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係の内容および日系企業について多く取り上げた。
中国自動車業界の重鎮・左延安氏がトヨタを大いに称賛
近ごろ、江淮汽車集団・元社長の左延安氏は、テスラやBYDがトヨタの業界トップの地位を覆せる可能性は低いという見解を示した。トヨタはハイブリッドの分野で突出しており、他の追随を許しておらず、同社は昨年1年間で2300億元以上を稼ぎ、中国の自動車メーカー全ての売上を足しても同社には及ばない。同社の抜きん出た売り上げに貢献しているのはハイブリッドだ。
左氏によると、トヨタは世界でも数少ない「リーダーシップを発揮」できる企業であり、同社はいつ「切り札」を切り、いつ「ただの持ち札」を切るのかを心得ており、製品が完成度を高めていないうちに市場への投入を急ぐどこかの企業とは異なる。トヨタは時勢をよく見極めることによって、最も適切なタイミングで行動を起こす。
トヨタは世界に先駆けて固体電池の商品化を実現する可能性がある。そして、トヨタはハイブリッドや固体電池、燃料電池の完全な技術ロードマップを構築しており、リスク対処力と発展の余地がとても大きい。トヨタ自動車のハードウェア技術は世界をリードしており、ソフトウェアもかなり強い基礎を有する。テスラがオープンソースを行っても、FSDでトヨタに問題が生じることはない。
左氏によると、トヨタは学習型の企業で、持続的な発展を遂げることができ、小さな問題を解決し続けると同時に、同社は企業管理においても優れており、同社は極めて明敏な共有、反省およびフィードバックシステムを有している。
中国では興味深いことに、ネット上でトヨタを貶める声が後を絶たないにもかかわらず、自動車製造業界で真面目に働く人の間では、同社を称賛しない人の方が稀という状況が見られる。
クボタ農機は中国の起伏ある道を進行中
中国は長い歴史を持つ農業大国で、クボタは日本最大の農業機械メーカーであり、早くも1998年に蘇州で久保田農業機械(蘇州)有限公司を設立し、中国の農業機械市場に参入した。
中国市場におけるクボタの発展は紆余曲折した過程だった。同社が中国市場に進出したばかりの頃、中国における農業の機械化はまだ初期的な段階だった。土地を個々の農家に分けて耕作させ、家族が生産を請け負うという制度が中国の農村で実施された結果、耕地が小さな土地に分割されてしまい、広大な土地がとても少なくなったため、日本の状況とほぼ同じく、欧米などの国々の大型農業機械は宝の持ち腐れとなった。その一方で、クボタなど日系企業の小・中容量の収穫量モデルは市場のニーズに非常に適合し、日系農業機械は「入手困難」となり、市場がほぼ独占状態となった。
しかし、中国で水準の高い農地改造が徐々に展開され、土地転用制度が実行されるにつれ、農地は次第に広大化し、そして刈り取り幅がとても広く、大容量の収穫機が市場に登場した。それでもクボタなどの日系企業は直ちに販売方針を調整しようとはせず、引き続き小・中規模農地に狙いを定めたが、その間に中国国内企業が機に乗じて欧米の主要収穫機メーカーと手を組んでチャンスをものにし、速やかに市場のニーズを満たし、「ライバルの追い抜き」を実現した。2023年のクローラ式穀物コンバイン市場に目を向けると、沃得農機のシェアは48%で、国内トップに立った。濰柴雷沃のシェアは27%で、国内2位につけている。クボタのシェアは14%で、国内3位だ。
この状況に対応すべく、近年クボタなどの日系収穫機も大容量の収穫量分野に続々と進出し始めており、2022年9月末、クボタは収穫量6.5キロの収穫機の販売許可を取得した。しかし、同社のモデルチェンジのタイミングはやや遅れている。沃得や雷沃などの一流収穫機メーカーはすでに布石を打っており、早くも7、8キロ市場も占有しようとしている。大容量収穫機はすでに「レッドオーシャン」市場であり、クボタは市場の熾烈な競争という試練に直面することだろう。
ワタミはなぜ中国大陸市場に再進出したのか?
最近、飲食企業のワタミ(Watami)は広東省深セン市に直営方式の居酒屋「三代目鳥美羅(TORIMERO)」を開店し、同社は4年の時を経て再び中国市場に進出した。同社によると、8月に上海でも直営店を開店する計画があり、今後はフランチャイズ加盟方式で業務展開することも検討している。
ワタミは大衆居酒屋チェーンのブランドで、主に和食や総菜、酒類などを販売しており、2005年に中国で「居酒屋 和民」1号店を開店し、正式に中国進出を果たし、その後深センと上海に出店した。2014年のピーク時、和民は中国国内の店舗数が42店に達した。2020年の新型コロナウイルス流行の影響により、和民の来店者数も業績も大幅に落ち込み、加えて想定外のコロナ禍による閉店期間も追い打ちをかけ、同社は中国国内市場からの撤退を決断した。同年4月、中国国内の和民全店が閉店した。
今回の中国市場への再進出は、ワタミが中国のことを依然として巨大な潜在力を持つ市場と見ており、コロナが収束すれば中国は再び成長すると見込んでいることを示している。現在、中国経済の状況はあまり芳しくないが、外食では、手ごろな価格のメニューが好評を得ている。この他に、円安傾向は今でも続いているが、外食業界にとって、円安は輸入食材の購入コストの上昇に直結している。海外業務なら外貨を稼ぐことができ、食材コストを制御することができるため、為替が業績に影響を与えるリスクを軽減する点で役立つ。
無錫市政府から称賛を受けた村田製作所の水素エネルギーサプライチェーン
村田製作所は佳利達物流、郵船ロジスティックスと提携し、エコサプライチェーンの構築において画期的な進展をみた。しばらく前に、同社は中国無錫市にある工場で初めて水素エネルギーによる物流・輸送に着手した。同社は上下流サプライチェーンへの輸送用に2台の水素エネルギー物流車両を投入して運用しており、第一段階で30トン以上の二酸化炭素放出削減が可能と見込まれている。毎年、同社の無錫生産基地に1798トン以上の新エネルギー運輸サービスが提供されている。実現可能性および効果を測定してから、同社は水素エネルギーの応用経験を中国にあるすべての工場で生かす計画だ。
無錫市政府は村田製作所の取り組みを大いに称賛し、水素エネルギーの応用において指導的な意義があるという見解を示した。2019年、水素エネルギーの発展が初めて中国国務院の政府活動報告に含められ、無錫市政府は水素エネルギーの発展を重視しており、物流・輸送企業に対して、水素エネルギー物流車両や水素エネルギーコールドチェーン輸送車への切り替えを奨励し、2024年末に新たに各種水素燃料電池自動車を20台以上普及させ、水素燃料電池船舶の応用モデルプロジェクトに着手することを要求した。これを受けて、無錫市政府はさらに新エネルギー産業を資金援助するために、水素エネルギーの大規模応用モデルプロジェクトに最高300万元の補助金を出し、水素エネルギー船舶のモデル応用に参加する企業には最高1000万元の補助金を提供する取り決めを設け、さらに水素充填や水素運搬などのプロジェクトにも相応の補助金を準備している。