『必読』ダイジェスト 英『フィナンシャル・タイムズ』1月5日付の社説の冒頭の言葉は、「中国の比亜迪(BYD)がテスラを超え世界で最も売れている電気自動車ブランドとなり、2024年第一週の最も注目されるニューストピックの一つとなった」というものだった。実際、過ぎ去ったばかりの2023年、中国の自動車は生産台数3016万1千台、販売台数が3009万4千台となり、前年同期比でそれぞれ11.6%増、12%増となった。2023年中国は世界一の自動車輸出国となる見込みで、第4四半期にBYDは世界最大の純電気自動車メーカーとなった。2023年の世界の動力電池取付量トップ10のうち、中国企業が6社を占めている。
実は電気自動車に留まらない。2023年、中国輸出の「新三様(新しい三種の神器)」といわれる電気自動車、リチウム電池、太陽光発電製品の合計輸出金額は1兆600億元となり、初めて一兆元を突破し、前年同期比29.9%増であった。「新しい三種の神器」は中国の輸出の新たな成長ポイントとなっている。
「新しい三種の神器」を代表とする中国新エネルギー産業の世界における競争力をどのように評価するか。これは中国の次なる経済見通しおよび成長の新エネルギーをいかに判断するかにかかわってくる。
中国の新エネルギー産業が政府の援助に頼っている、あるいはローコストの強みに頼っている、さらにはその中の各産業すべてが再建設と価格戦争といった「低レベルの競争」に陥っていると批判する人が、国内外のいずれにも存在する。こうした観点にはまったく事実の依拠がないとは言えないが、現在のところより明らかな事実として、中国の「新しい三種の神器」は世界においてますます顕著な競争の強みを確立しつつあり、そこには技術・価格・品質などが含まれている。注意すべきは、こうした強みは世界的なもので、相対的にいえば先進国に対する強みであり、その他の発展途上国に対する強みだけではないことだ。
中国の強みはいかにしてつくり上げられるのか。政府の援助あるいは「国を挙げての体制」についてはここでは置いておくとして、最も無視できない要素は、中国が極めて効率の高い製造能力と巨大な規模の市場をもつことであり、中国の企業家が世界の新興産業の中で一角を占めようとする時には、中国の巨大な製造業の能力と市場規模を利用し、競争力のある投資を行うだろう。新興産業の最後の勝者となるための競争は極めて熾烈で、強い競争力を持つ企業を育て上げる。それに比べると、欧州や日本ひいては米国でさえも、中国と完全に同等の産業チェーン製造能力と大規模な市場による支えをもたず、さらに企業内部のあまりにゆっくりとしたイノベーション策略と開発手順に制約され、その産業生態の進化速度は明らかに中国企業に劣っている。すなわち、新エネルギー産業のなかで、中国企業は時間のうえで外部ライバルがいない環境にあるということだ。
例えば、スマホ・パソコンなどの電子製品を含む世界の産業競争環境の中で、ムーアの法則の制限を受け、業界内の企業は毎年改良された新製品一つだけしか発売することができない。さらに使用周期が長い従来のガソリン車分野では、モデルのイノベーション周期はさらに長くなっている。しかし、「新興産業+中国自主産業チェーン」の結合状態のもとでは、競争は技術改良のハイスピードな反復を生み、例えば電気自動車分野では、中国企業は半年で新たなモデルを発売する必要があるが、海外の自動車メーカーは少なくとも三年という周期が必要とされる。
中国企業が新興産業における競争を価格に頼ることなく、技術を主としていることは明らかだ。太陽光発電・電池などの分野の技術改良は絶えず反復され、新技術革命とは、反復的技術改良が超え難い巨大な障害に遭遇する前に、同じスタートライン上にいる企業が研究開発やイノベーション分野でずっと競争を続け、優れたものが生き残り、産業集中度が大幅に上昇するということを意味している。新エネルギー自動車を例にとると、競争はサプライチェーンの各段階すべてにイノベーションが拡張し、こうしたイノベーション需要と資本支出が装備製造業および産業チェーンの川上工業に大きな刺激を与えることになり、全産業チェーンが競争的イノベーションの状態におかれ、それにより中国の新興産業分野のサプライチェーンの強みが引き続き打ち固められてゆく。
中国の太陽光発電と新エネルギー自動車の需要が増え続け、しだいに市場規模が形づくられ、研究開発投資と製造コストの消化に有利となり、価格競争を下支えしている。価格が下がり続けることでより多くの市場需要を刺激し、それにより一種の好循環が形成される。こうした持続的な産業の反復的技術改良と価格戦が、最後には海外の競争ライバルが超え難い一種の強み――技術と価格という二重の競争障壁をつくりあげる。英コンサルティング企業のウッド・マッケンジー社の最新の研究によると、2023年12月の同じ太陽電池モジュールで、中国の1ワットあたり0.15ドルの生産コストは、インド(0.22ドル)、欧州(0.3ドル)や米国(0.40ドル)よりもはるかに低かった。同様に中国の新エネルギー車を欧米に輸出すると、価格は国内の倍であったとしても、欧州の同類車種よりもはるかに安い。こうした強みは製造規模やサプライチェーン、技術進歩によりもたらされた生産効率によるもので、(主として)中国政府の援助によりもたらされたものではない。
以下に総括してみよう。新エネルギー産業分野において、中国企業の競争はおもに全産業チェーンのスピーディな反復的技術改良に依存するもので、また市場規模と製造効率を利用して価格競争が行われており、技術のローコスト競争によるものだけではない。技術革新や産業変革の時期において、中国の関連業界は完全な産業チェーンを構築し、こうしたスピーディな反復的改良に可能性を提供し、世界における競争力もまたつくりあげている。このため、この種の競争は低レベルの競争ではなく、一種の上を向いて産業の新たな高みを探し求める好ましい競争であるといえる。
(『日系企業リーダー必読』2024年1月20日の記事からダイジェスト)