『必読』ダイジェスト 2023年12月12日付の米『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、東南アジアやメキシコなどから米国に出荷される商品の大部分が、中国企業の現地工場で生産されていることから、「米企業は‟メイド・イン・チャイナ”とのデカップリングは容易でないことに気づいた」と題する記事を掲載した。

この記事が引用した貿易データ、企業発表、新たな学術研究は、次のことを示している。中国企業はある程度において米国の関税を回避するために海外に進出しているが、客観的にはこれらの企業を「非中国企業」とすることで、米国のさまざまな規制を回避している。

記事は次のように述べている。「東南アジア諸国やメキシコで作られた多くの製品には、中国のサプライヤーの重要なインプットがふんだんに使われており、中国の関与がなければこれらの製品を生産することは不可能であることを意味している」

記事はさらに、次のように述べた。「米中を結ぶサプライチェーンのなかには、デカップリングとは程遠いものもあり、1つか2つの段階が増えただけで、かえって複雑さとコストが増加したものもある」

国際決済銀行(Bank for International Settlements)が10月に発表した研究レポートによると、2021年以降、より多くの貿易が他国を経由するようになり、中米間のサプライチェーンはより複雑になったものの、米国に供給される多くの商品は依然として中国から来ているものだ。

米国の対中依存を減らす全体戦略の一環として、中米貿易戦争が勃発した2018以降、ワシントンは数千億ドル分の中国製品に懲罰的な関税を課し、アップルを含む一部の米企業は生産の一部を中国から移転させた。

バイデン政権になってから、このプロセスはさらに加速しているようだ。一部アナリストは、「米中経済がデカップリングしつつある」、ひいては「デカップリングが加速する」と大胆に予測している。記事は関連研究機関のデータを引用し、米国の対中関連政策が影響していると指摘する。今年前半、中国は米国製品輸入の13.3%を占めたにすぎず、これは2003年以来の低水準で、単年のピークだった2017年の21.6%をも大きく下回っている。

記事はまた、調査会社のロジウム・グループ(栄鼎集団、Rhodium Group)のデータを引用して、次のように述べた。中米経済は他の面でもデカップリングが進みつつあり、昨年の米国の対中国直接投資はわずか82億ドルと、20年ぶりの低水準を記録した。同時に、一部企業はすでに中国から撤退している。

だが記事はまた、「データを深く研究すると状況は非常に複雑であることに気づく」として、次のように強調する。「中米両国の経済の一部は袂を分かちつつあるが、そうでない部分もある。エコノミストは、米国の政策がサプライチェーンの調整を引き起こしている場合もあるが、これらの調整が実際には中国のサプライヤーへのさらなる依存につながっていると述べている」

その理由の一つとして、中国の企業家が比較的小規模な国に資金を投入していることがある。シンガポールDBS銀行のデータによると、2022年、中国企業の東南アジアへの直接投資は190億ドル近くに達したが、2013年にはわずか70億ドルにとどまっており、なかでも製造業への投資が最大の割合を占めているという。中国企業はこうした場所に自社工場がない場合も、現地工場に大量に商品を供給することが多い。

DBS銀行の研究は、次のことを示している。中国が比較的小さい国に輸出する中間製品(一部の加工ステップを完了した製品)の数はもはや大幅に増加している。後者は、こうした中間製品を組み立てて最終製品にし、米国に出荷する。

メキシコも状況は似たようなものだ。データ会社CEICによると、2021年の中国からメキシコへの直接投資は2.32億ドルであったが、これは10年前の4200万ドルを上回っている。

これにより前述の、「東南アジアやメキシコなどから米国に出荷される製品の大部分が、もともと中国企業が所有する工場で生産されていたということに米国企業が気づいた」という事態が発生した。ロジウム・グループのレポートによると、米国からのメキシコとベトナムからの輸入は過去5〜7年で増加しており、それに伴ってそれらの国に対する中国からの輸出も増加している。

記事はHSBCのエコノミストであるフレデリック・ノイマン(Frederic Neumann)氏の話を引用し、「世界のサプライチェーンにおける中国の役割は調整されているというだけで、消えているわけではない」と述べた。ノイマン氏はさらに、「他国の投入品を使って生産する必要がある中国商品の輸出は2014年から減少し始めたが、他国の工業生産に用いられる‟メイド・イン・チャイナ”の商品(即ち中間財)の輸出は2014年から大幅に増加したことが自身の研究で明らかになった」と述べた。

同氏は最後に、「中国はかつての最終組立業者から、急速に世界の基幹部品サプライヤーとなっている」と述べている。

(『日系企業リーダー必読』2023年12月20日の記事からダイジェスト)

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