研究院オリジナル 2024年2月、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。
依然存在する日系企業が中国市場を開拓する構造的なチャンス
しばらく前に、中国の著名なニュース雑誌である『三聯生活週刊』に、『蘇州高新区:日系企業の「要衝」における進出と撤退』と題する記事が掲載され、同記事は中国における日系企業の現状に関する典型的な実例を示したと見ることができる。
記事によると、2023年以降、継続的な対中投資に対する日系企業の自信は下がっているが、大半の日系企業は「まず現状を維持する」という様子見状態にある。蘇州高新区のような日系企業が集まっている地区には、依然として中国市場を開拓する構造的なチャンスが存在する。
このようなチャンスは、主に中日間の結びつきが緊密で、勢いのある一部の産業に集中しており、例えば自動車部品製造などだ。太陽油墨(蘇州)有限公司などは、中国の新エネルギー自動車の車載用品市場にまだ大きな成長の余地があると見ており、海外で唯一の開発センターの建設に投資したばかりだ。同センターは中国市場を対象にした商品の開発に特化している。
中国のハイエンド市場における需要にも日系企業にとって望ましいチャンスが潜んでいる。例えば、島津製作所が出資する島津儀器は第四工場が操業を始めたばかりだ。これより前、島津のハイエンド製品は主に輸出を介していたが、それでは中国市場の需要を満たせないため、中国に行って現地で生産せざるを得なくなったのだ。
この他に、かつてなかった状況として、AIや医療および介護機器といった新興技術を売りにする日系企業の多くが、新たな潜在的チャンスとして応用シーンを打ち出している。これらの企業は中国政府の強大な組織的推進力の助けを借りて、自社製品を提供するための応用シーンを構築し、中国において自社技術の産業化を実現したいと思っている。
冬を迎えた中国不動産市場を相変わらず楽観視するTOTO
少し前に、日本の有名な衛生陶器器具メーカーのTOTOが2023年度の第1-3四半期の決算を発表したが、売上額と利益の指標はいずれも減少しており、その中でも中国大陸では、2023年4月から12月までの売上額が31億8200万元で、前年比3%減だった。営業利益は2億2700万元で、前年比44%減であり、営業利益率は昨年同期の12%から今期は7%まで下落した。TOTOは利益減少の原因として、主に売上額の減少や商品構成の差異および製造コストの高騰などを挙げている。
実のところ、2018年および2022年の中国大陸におけるTOTOの売上額は下落している。2018年の収入減少の原因は、一級都市における不動産市場の不振であり、2022年の収入減少は、新型コロナウイルスの流行による経済停滞に起因している。それゆえ、業界はTOTOの売上に最も影響を及ぼした要素は、中国経済の情勢、特に衛生設備市場と密接に関係する中国不動産市場の発展状況と見ている。現在、中国不動産市場は空前の困難に直面しているため、今後数年間の中国市場におけるTOTOの見通しは好ましくない。
しかし、TOTOの清田徳明社長は依然として状況を楽観視している。清田社長はメディアからの取材を受けた際に、中国市場の減速は少し長引くと見られるため、新築住宅における住宅設備への需要がいつ回復するのか予想がつかないという考えを示した。しかし、中国は巨大な人口を有するだけでなく、住宅在庫も膨大だ。多くの住宅の築年数は10年を超えており、今はまさに老朽化住宅の建替え需要に移行する転換期にある。
次なる発展のために、TOTOは販売経路を対象にした強力な改革措置を打ち出すと同時に、引き続き中国における生産拡大を推進する。2023年3月、TOTOは大連のTOTOハイエンド衛生陶器器具プロジェクトに正式に着手し、同プロジェクトの総投資額は30億元で、第一期は2025年に建設を完成させて操業を開始する予定であり、生産能力は210万台に達する見込みだ。
中国市場における需要の低下により、日本の工業ロボットの注文数は四分の一減少
日本ロボット工業会の発表によると、2023年における日本の工業ロボットの注文数は24.3%減少し、2019年以降初の減少となった。今回の減少において、主な要因となったのは、日本のロボットの中核市場である中国における不振であり、2023年の日本による対中ロボット輸出額は約118億元で、前年と比べて約27億元も減少した。
1月26日、ファナックが発表した2023年度(2024年3月まで)の連結純利益は前年比28%減になる見込みであり、その原因は主に、中国を中心とする主要業務部門の注文数の持続的な低迷にある。安川電機も1月12日に決算報告を発表したが、同報告のデータによると、中国における投資低迷のため、前四半期(2023年9‐11月)に「ロボット部門」の注文額が前年同期比6%減の31億元まで下落した。
中国は世界最大の工業ロボット市場であり、世界の工業ロボット需要の約半分を占める。しかし、近年は中国の工業ロボット市場における業界周期の調整に伴って、成長がいくらか減速している。一部の既存製造業の分野でも生産能力の過剰や技術のアップグレードにおける困難などの問題に直面しており、これらの問題がかなりの程度、工業ロボットの市場需要に影響を及ぼした。同時に、中国経済の発展が減速するにつれて、企業は経営面で困難に直面しており、工業ロボットは初期投資が大きい上に、投資回収周期が長いため、一部の中小企業は工業ロボットの導入を躊躇している。
この他に、工業ロボットの分野に参入する中国企業が増加するにつれて、市場競争も次第に激化している。一部の企業が市場シェアを獲得するために、低価格路線を選んだことにより、業界全体における利益獲得の余地が圧縮されている。
2024年について、業界は一様に悲観的な見方を示しており、中国のロボット市場は引き続き低迷することが予想されている。
日本ゼオンが中国の電池材料企業を権利侵害で提訴
日本ゼオン(Zeon)は、2024年1月5日に中国深圳市中級法院に対して中国の電池材料企業である深圳好電科技有限公司(好電科技)および同社代表取締役の王鍵氏を提訴したことを発表した。日本ゼオンは好電科技が日本ゼオンのリチウム電池バインダーに関連するトレードシークレットを不法に取得して使用したとしている。王氏は長きにわたってリチウム電池バインダーの研究に力を注いできた専門家で、これまでに東京大学や筑波大学で造詣を深め、日本ゼオンでも長年働いた経験がある。
2月22日、好電科技は自社公式のウェイシンパブリックアカウントで回答を行い、日本ゼオンに対する権利侵害行為を否定し、日本ゼオンの特許にはデータの捏造が存在し、中国特許法の関連規定に合致しないため、国家知識産権局に同社特許の無効宣告を求めるという考えを示した。好電科技はさらに、同社がこれまでずっと日本ゼオンの原材料を購入していないために、このような攻撃による報復を受けていると述べた。
現時点で深圳市中級法院はまだ裁決を下しておらず、業界の予想によると、この訴訟は長引く可能性があるという。
アシックスに大きな利益をもたらす中国のマラソンブーム
中国では人々の健康志向が高まるにつれて、運動に対する積極性も上昇の一途をたどっている。過去1年間に中国で開催された400回以上のマラソン大会は、一級都市から三・四級都市、県政府所在都市、さらにはチベット高原まで様々なところで開催され、多くのマラソンランナーが足跡を残した。
中国の運動ブームはスポーツ用品メーカーにとって、素晴らしい時代の幕開けだ。ランニングシューズ市場では、国産ブランドのANTAやLI-NINGに加えて、アシックス(ASICS)やミズノ(Mizuno)をはじめとする日系ブランドも市場ボーナスの十分な恩恵を受けている。
2023年1月から9月まで、中華圏において先頭を切るようにアシックスの売上額は増加し、同社の売上額は前年比28.8%増の613億9300万円で、2022年の年間売上に迫るものだった。2006年の中国市場参入以降、アシックスの売上額は勢いよく増加しており、中国市場は今や同社にとって4番目に大きな市場となっている。
アシックスが中国市場に参入したばかりの頃、同社は長年にわたって観察と探求の姿勢を示していたが、2019年に戦略および計画を修正し、中国市場における成長促進を加速させた。このゆえに、同社は上海にある中華圏本部の機能を強化し、同じ年に中国開発センターを設立し、中国の現地市場における需要をターゲットにして、より良い開発を行った。
アシックスが競争の激しい中国市場で台頭できたことには、同社の有する深い技術蓄積と正確な市場戦略が密接に関係している。技術の方面で同社のシューズには、同社独自開発の衝撃緩衝技術と軽量クッション素材が使用されている。市場戦略の方面で、同社は現地カルチャーとの融合に非常に重きを置き、中国の伝統的な文化要素を組み合わせた数々の製品を発売しており、例えば辰年限定シリーズや干支シリーズなどは、中国の消費者の間で非常に人気が高い。アシックスはさらに中国国内ブランドとの提携を通じて、ブランドに対する国内消費者の認知度を向上させており、例えば同社は以前に中国の流行ブランドのTBSMと協力して、連名による全く新しいシューズのラインナップを立ち上げた。