研究院オリジナル 2024年1月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係の内容および日系企業について多く取り上げた。
2024年に中国でトヨタに復活の道が開かれる可能性あり
競争が極めて熾烈な中国の自動車市場において、トヨタの2023年の業績は上々だ。一汽トヨタの新車販売台数は80万台に達し、前年比4.1%増で、同社は2023年度唯一プラス成長を記録した日系合弁自動車メーカーだ。広汽トヨタは年間累計販売台数が90万台以上で、日系第1位、合弁第3位、業界第6位をそれぞれ記録した。
トヨタの業績が好調だった主な要因には2つある。それはハイエンド化と電動化だ。
2023年、トヨタの高級車種の売上が好調だった。広汽トヨタによる2023年の販売台数のうち、価格が20万元以上の高級車種が年間販売台数に占める比率は44.6%と高かった。一汽トヨタも2023年、高級車種が年間販売台数に占める比率は49.8%で、この数字は業界では非常に珍しいものだ。高級車種の際立った売れ行きによって企業のリスクヘッジ力や収益力は高まり、またそれは価格戦に対する力強い抑止力にもなる。
2023年にトヨタが自動車の電動化の分野で見せた成果は人々の注目を集めた。2023年、広汽トヨタのHEVの累計販売台数は100万台を突破し、国内で初めてこの里程標に到達した外資自動車メーカーとなった。広汽トヨタの電動化浸透率は2022年の30.3%から2023年には32.2%に上昇した。2023年、一汽トヨタの電動自動車販売台数は前年比36.7%増だった。
ある分析によれば、電動自動車が中国市場で次第に受け入れられつつあることを考慮すると、2024年にトヨタはさらに大きく飛躍するとのことだ。発展の状況から見ると、2024年に中国市場でトヨタに復活の道が開かれる可能性がある。
過度な固執により、中国で存在感を失い続けている日本の醤油製造最大手
日本の醤油製造最大手の「キッコーマン」は日本製品のグローバル化の成功例であり、醤油の世界王者という栄誉を得ている。キッコーマンの海外収入が占める比率は70%と高いが、中国市場では精彩を欠いている。醤油は中国人の日常生活において必須の調味料であり、また中国の14億人の人口は比類のない巨大市場だ。現在、中国のトップ醤油メーカーの海天味業とキッコーマンの売上高は基本的に横ばいだが、海天の純利益はキッコーマンの5倍だ。
この十数年間、中国というこの世界最大の醤油市場で、海天、千禾、李錦記などの国内メーカーが急速に拡大している。キッコーマンは10年以上も前に中国市場に参入しているが、今でも中国人の大半は「キッコーマン」という名前すら聞いたことがない。
この芳しくない状況は、キッコーマンがかつて欧米市場で経験した成功モデルに固執していることが関係している。醤油は西洋諸国の食習慣においてメジャーな調味料ではないため、当時キッコーマンはこの東洋独特の調味料を欧米市場に売り込むにあたり、日本の食文化を紹介することによって市場の育成を図ることにし、最終的に成功を収めた。キッコーマンは欧米の醤油市場で独占的な地位を占めることができ、米国の醤油市場では50%以上のシェアを獲得している。
しかし、中国の状況は欧米と完全に異なる。中国は元々、醤油発祥の地であり、醤油は中国料理に必須であるため、欧米市場に進出した時と同じ方式をとるなら、状況の変化も考えずにかたくなに先例に固執しているだけだ。海天の成功要因に目を向けると、大規模な宣伝広告や豊富な品揃え、全ての経路を利用した販売促進、大規模生産などが、海天を「国民的」なブランドに成長させる上で核心的な要素となった。
中国の日用消費財は主にオフラインのスーパーやコンビニに集中しており、オンラインではアリババや京東、拼多多、そして大きなコミュニティでの共同購入に集中している。現在、キッコーマンの商品の大半は都市部にある中・高級スーパーで販売されているが、目立たない位置に陳列されており、コンビニではほぼ見かけない。オンライン上でのマーケティングも非常に不十分であり、宣伝広告もほとんど見かけない。
2023年末、キッコーマンと広州市旅遊商務職業学校の学生たちが合同で、和食制作交流活動を開催し、キッコーマンはワシントンDCの在アメリカ日本大使館で総料理長を務め、2010年に開催された上海万博の日本産業館に開設された料亭「紫MURASAKI」で総支配人を務めた柿澤一氏を特別に招いた。明らかに、キッコーマンの考え方は相変わらずだ。
日本の医療機器メーカーのFANDFが中国で「里程標」となるプロジェクトに着手
2023年12月、FANDF株式会社は浙江省平湖で正式にハイエンド医療装置のプロジェクトに調印した。同プロジェクトの総投資額は5000万ドルで、2万平米以上の開発生産基地が建設され、2025年に操業に入る予定だ。同社は主にCTやMR、超声波診断装置、CTスキャン、血管造影などのハイエンド医療機器・装置の基幹電子部品を生産および販売している。
中国において人口の高齢化が急速に進むにつれて、医療市場の見通しは明るくなっている。欧米および日本のハイエンド医療機器は中国市場において顕著な競争面での優位性を有しており、近年は発展のペースが加速しているが、FANDFも例外ではない。今回投資するプロジェクトは、主に医療用画像診断装置大手のGEヘルスケアなどの企業に関連の製品・付帯サービスを提供することを目的としている。FANDFによると、今回のプロジェクトは非常に重要な投資対象であり、企業の将来的な業務にとっても重要性において里程標的な意義を有する。中国市場における中国医療用画像市場の2015年から2021年までの複合成長率は10.1%に達しており、2030年にはその規模が1000億元に達すると予想されている。
FANDFがプロジェクトの実施地点として浙江省平湖を選んだ理由は、平湖にはすでに一定規模の産業集積が形成されており、多くの国内外で有名な医療機器メーカーおよび関連企業が集結しているからだ。
中国はなぜ今もなお日本からボールペンを輸入しているのか?
中国で生産可能なボールペンの本数は年間400億本で、世界全体の総生産本数の80%を占める。ところが中国は依然として日本から毎年1億本のボールペンを輸入している。それはなぜか?
その答えは非常に簡単だ。なぜなら日本製ボールペンは品質がより高いからだ。中国製ボールペンのペン先には鋼球の材料としてステンレスが用いられているのに対し、日本製ボールペンのペン先にはタングステンとモリブデンの合金材料が多用されているため、ペン先の耐久性がより高く、書き心地も滑らかだ。中国製ボールペンのペン先には目詰まり防止性能しか備わっていないが、日本製ボールペンはそれに加えてさらにペン先の安定性や筆記時のきめ細やかさにも重きが置かれており、そのペン先はより人間工学を応用した設計がなされているため、書き心地がより快適だ。
中国の著名なネットメディアの「財経十一人」の評論によると、ボールペンの上流には旋盤、特殊鋼材、インクという3つの非常に重要な産業があり、これら3つの分野において中国企業はどれも優位性を占めることができていない。その中でもインクの問題に至っては人々の間で知られておらず、実のところ現在、世界の高級インク製品は依然として米国、日本、欧州の企業が独占している。過去10年間、日本のボールペンの輸出は安定した増加を続けており、パイロットや三菱鉛筆は日本最大のボールペンメーカーで、両社ともに創業100年を超える老舗企業であり、世界全体で高い評価を得ている。この数年間、中国はチップやリソグラフィ装置などの「ボトルネック」の分野に焦点を合わせており、多くの人々は、一般的な工業製品の分野で中国企業はすでに外国の同業他社を打ち負かしたと錯覚しているが、実際は決してそうではなく、「製造できること」と「立派に造れること」は別問題だ。