『必読』ダイジェスト 『財経』誌9月20日号に発表された記事を以下のように抄訳した。ガソリン車が新エネ車に置き換わり、海外ブランドが国産ブランドに置き換わる現象は、中国自動車市場でますます明白な傾向となり、この傾向はかつて最も売れ筋だった日本車に最も顕著に現れている。
過去3年の間に、中国市場における日本車のシェアは2020年の24.1%から2023年上半期には17.6%に、6.5ポイントも下がり、全ブランドの中で下げ幅が最も目立っている。この間に、中国の国産ブランドのシェアは右肩上がりに上昇し、2020年の35.7%から毎年伸び続け、2023年上半期には49.5%に達し、年内に50%の臨界点を突破すると予想されている。
「エコ」「コスパ」の良さが日本車の特長だったが、比亜迪(BYD)の宋(ソン)MaxDM-iが代表するハイブリッド車の人気上昇に伴い、日系メーカーのガソリン車のシェアは新エネ車に次から次へと食われている。
UBS中国自動車産業研究主管、巩旻氏は『財経』誌に次のように語った。現在、中国自動車メーカーの中国本土市場におけるシェアは50%に達し、そのうちガソリン車のシェアは30%余、電気自動車(EV)のシェアは80%に達している。恐らく2030年前後までに中国自動車市場のEV転換が基本的に実現し、中国自動車メーカーの中国本土市場におけるシェアは80%に達するだろう。
日本車の販売台数が広範囲で下降線
全国乗用車市場情報合同委員会の統計によると、ほぼ全ての海外ブランド車のシェアは過去3年の間に低下している。
そのうちドイツ系のシェアは25.5%から21.4%に4.1ポイント低下しており、日系に次ぐ下げ幅だった。米国系のシェアの下落はさほど顕著ではなく、2020年の9.4%から2023年上半期の8.5%へ微減。韓国系は3.8%から1.7%に半減した。フランス系とその他欧州系はもともと非常に低かったが、フランス系は0.3%から0.4%へ微増し、その他欧州系は1.2%から1.0%に微減している。
この間、中国国産ブランドのシェアは上昇の一途をたどっている。2020年の35.7%から毎年増加し、2021年には41.2%に達し、2022年も上昇が継続し、47.3%に達した。2023年上半期には49.5に達し、年内には50%の臨界点を突破すると見込まれている。
合同委員会の崔東樹事務局長は次のように認識している。日本車は一貫して「燃費の良さ」を看板にしてきたが、これは新エネ車と共通している。そのため、新エネ車市場の急速な発展は実際上、日本車に対して別の選択肢、代替効果を提供する結果となった。選択肢が増えると、日系メーカーの車のシェアはあっという間に分割された。
トヨタ、ホンダ、日産の日本自動車3大メーカーの中国における販売台数は例外なく下降している。
データから次の点が明らかになっている。ホンダの今年上半期の累計販売台数は52万9700台で前年同期比22.0%の下落。トヨタの販売台数は87万9400台で、2.8%の下落。また日産の2023事業年度の中国における販売台数は23%下落して80万台に落ち込み、当初の計画(成長率8%、販売台数113万台)も割り込んだ。
その他の日系自動車メーカーも好調とは言えない。マツダの上半期の販売台数はわずか3万2200台で、前年同期比49.4%の大幅下落だった。三菱自動車の2022年の販売台数は3万3600台で、2023年6月から臨時生産停止段階に入り、合わせて「人事構造最適化スキーム」に着手した。
レクサスは日系高級車ブランドの代表で、中国でも良好な市場基盤を持っていた。全輸入車の中で、長年輸入台数第一位を誇ってきた。しかし、2020年から2022年にかけて、中国におけるレクサスの販売台数は23万5000台、21万9000台、18万4000台と毎年下落が続いている。2023年上半期も下落傾向は続き、販売台数は合計7万500台へ、下げ幅は20%だった。
グローバルデータのグレーターチャイナ(大中華圏)ディレクター、曽志凌氏の次のような説明が明快である。中国新エネ車ブランドの急速な勃興によって、中国市場におけるレクサスのシェアはあっという間に食われた。蔚来汽車(ニオ)、小鵬汽車(シャオペン)、理想汽車(リ・オート)等のローカルブランド電気自動車(EV)とレクサスのユーザー層はかなりの程度において重なるからである。
中古車リセールバリュー「神話」崩壊か
シェアの下落に伴い、日本車について長年言われてきた、「中古車でもリセールバリュー(残価率)が高い」という「神話」も崩壊しつつある。
日本車は(中古車でも)価値を維持していることで知られてきた。中国汽車工業協会(中国自動車工業協会)の今年上半期のデータによると、リセールバリュー・ランキングリストTOP20の中でレクサスは第2位、トヨタは第3位、ホンダは第8位だった。しかし、『財経』誌は以下の点に留意している。2022年、日本車の3年リセールバリューは79%に達していたが、2023年上半期には67.52%に下落し、その下げ幅は12ポイント近くなった。
一貫して、相対的に安定していた価格、加えて日増しに増大するシェア――これが日本車の中古車市場で人気を博してきた鍵だった。しかし、今年から始まった華々しい「価格戦争」の下、日本車が価格優位性を維持し続けることは困難だった。
まず、新車販売価格の低下が中古車市場に圧力を加えた。今年から、ホンダ、トヨタ等の日本車も「大勢に従って」価格を下げ、価格を販売台数に置き換えた。取り分け、東風ホンダはメーカー補助に政府補助を加える方式で、さまざまな車種でそれぞれ1万元から7万元価格を下げた。その中でホンダUR- Vの補助額が最大で、両方合わせて6万8000元となった。
しかし、中古車の流通率の低下がもたらした市場の空きが、そのブランド自身の新車によって吸収されたわけではない。日本車の値下げと同時に、シェアも圧縮され続けているからである。
中国汽車流通協会の郎学紅事務局次長は「ここ2年、爆発的な人気を呼んでいるプラグインハイブリッド車(PHV)が日系メーカーのガソリン車のシェアをどんどん浸食している」と指摘。
郎氏はさらに次にように述べた。日本車の主な価格帯は10万元から20万元の間であり、この価格帯の市場を選択する消費者は価格に対してかなり敏感である。2022年以来、PHV市場に急成長の傾向が現れ、日本車の主流価格帯とほぼ重なっているが、販売価格、ランニングコスト面で明らかに優勢であり、その結果、日系ガソリン車がPHVに置き換わっている。
日本車はいかに迎え撃つべきか?
中国自動車市場で日本車はいかに立ち向かうべきであろうか。さらに多様な、さらに競争力を持つ新エネ車が鍵を握っている。取り分け、重要なのはハイブリッド車モデルである。
現有のガソリン車をハイブリッドバージョンに変えることは、疑いなく確実な市場競争戦略である。トヨタ中国の関係者は『財経』誌に次のように語っている。「今後も短期間では、トヨタの主な販売車種はハイブリッド(HV)型である。しかし、われわれはさらに多くの精力を研究・開発(R&D)、販路、物流、提携パートナーとの関係のレベルアップ及び強化につぎ込んでいく」
短期的にはHV主体だが、バッテリーEVは依然としてライバルである。『財経』誌は一汽トヨタが上海街頭に出したbZ3等のバッテリーEVの大量の広告に注目している。EV化への転換の決意が強烈に反映されているからである。
東風ホンダも最近、全面的にスマートEV新時代に向けて投入していくと発表し、計画に基づき、2027年までにガソリン車の新車投資を終了し、2030年までに累計10車種以上のバッテリーEVモデルをデビューさせるという。また広汽ホンダの完全新規の低炭素EV工場は2024年中に正式に生産を開始し、年間生産12万台が可能となる。
長年の急成長期を経た後、日本車メーカーは現在構造的な販売不振に陥っているが、認識しておくべきは、日本車が長年にわたって形成して来たブランド力、サプライチェーン等の優位性は依然としてゆるぎない堅固なものであり、さらに多様な競争力を持つ新エネ車モデルの発売に伴い、販売台数の回復も期待できるということだ。
(『日系企業リーダー必読』2023年9月20日-10月5日の記事からダイジェスト)