研究院オリジナル 2023年11月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。

今、覚醒しつつある日本車

権威あるメディアの『財新週刊』は11月25日に『日本車の覚醒』と題する報道の長編記事を掲載した。

記事は、10月25日に開催された東京モーターショーで、トヨタ、日産、ホンダなどの日本車メーカーが展示した目玉車種はほぼすべて電動自動車だったが、トヨタ自動車の佐藤恒治社長は、電動自動車の利点についてあまり語らなかったと指摘した。強力なライバルに直面し、今、日本車メーカーはみな強烈な危機感を抱いている。

2023年1月から9月までの期間に、中国市場における日本車のシェアは2022年同期の19.1%から14.6%に下落した。海外市場においても、日本車メーカーは中国の同業他社の圧力を感じている。例えば日系企業が長きにわたって開拓してきた東南アジア市場において、中国企業はガソリン自動車市場で日系企業に太刀打ちできないが、電動自動車によって差別化の優位性を得ることができており、日系企業を模倣して現地に工場を続々と建設し、発展の基礎を築いている。2023年上半期、中国は日本を追い抜いて世界最大の自動車輸出国になった。『財新週刊』が取材した経済産業省の官僚の話によると、中国車は速やかに東南アジア市場に進出しており、中国に次ぐ2番目に大きな規模の基地が形成されつつあり、もし日本車メーカーが直ちに行動を起こさないなら、今後より大きな圧力に直面する可能性があるという。

しかし、『財新週刊』の報道は他の観点を引用し、日本車メーカーのモデルチェンジは遅いとはいえ、深い技術の蓄積を有するため、今後誰に軍配が上がるのかまだだれにも分からないと報じた。

2023年6月、トヨタ自動車は技術説明会を行い、今後量産車両に搭載される数多くの技術と機能について紹介した。トヨタ自動車が外部に対して全面的に技術の蓄積を公開したのは、近年ではこれが初めてだ。佐藤社長は、トヨタが現在有する電動自動車はガソリン車プラットフォームを改良したものであり、市場への投入以降、成果を上げていないが、トヨタの技術力を次世代電動自動車プラットフォームに対して集中的に発揮できると語った。

トヨタの次世代電動自動車には全く新しい電池が搭載され、最長航続距離は1000キロに達することも可能であり、充電時間も20分以内に短縮された。トヨタはさらに全固体電池の開発に力を入れている。10月12日、トヨタは出光興産と共に固体電池の電解質を開発し、2027年から2028年までの間に量産して車両に搭載できるように力を尽くすことを発表した。世界の関連特許ランキングにおいて、トヨタと出光興産が1、2位に入っており、トヨタの特許取得件数はランキングでベストテン入りしている他の全企業の件数を合わせた数よりも多い。日産も2024年に固体電池の試験生産の始動を計画しており、2028年までに量産を目指すという。

日系企業はさらにスマート化における弱点の克服に尽力している。トヨタは次世代自動車に自社開発したオペレーティングシステム・Arene OSの搭載を計画している。自動運転において、トヨタは中国のスタートアップ企業の小馬智行と合弁会社を設立した。11月5日、トヨタと小馬智行は合同で最初の純電動自動運転タクシー(Robotaxi)のコンセプトカーを発表した。

『財新週刊』は、中西自動車産業リサーチでアナリストを務める中西孝樹氏の見解を引用し、今後数年間で、日系自動車メーカーの新製品が続々と投入されると、これらの企業にも市場シェアを奪還するチャンスが生まれると報じた。とはいえ、これは持久戦であり、圧倒的な勝利を収める者は登場しないことだろう。

「中国という巨大市場を撤退する理由は何もなし」

ポストコロナの経済回復にばらつきがあり、地政学的政治局面が不安定な状況下で、現在、中国は外資系企業の信頼回復に努力を傾けている。香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』の記事によると、こうした努力は日系企業に好評であり、約350社の日系企業が今年の中国国際輸出博覧会に参加した。

近年、在中日系企業は一様に経営コストの上昇やビザ申請における困難、市場参入の制限といった試練に直面しており、中日両国の関係も安全問題により悪化している。『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』の記事は、とはいえ輸出博覧会では、日本の出展業者が中国市場への参入を切望しており、出店業者の大半が政治に対する言及を避けることを選択したと報じた。

『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』の記事によると、例えば、ロボット製造会社の不二越はこれまでずっとファーウェイと中興に装置を提供しており、中国市場は同社にとって最大の海外市場となっている。不二越は、中米間の技術衝突が同社にもたらす影響は「皆無」であり、東京でも同社と中国のパートナーシップおよび顧客取引に対する干渉はなく、「中国という巨大市場を撤退する理由は何もない」と強調している。

別の日系企業の幹部は、「長年にわたり、日本のメディアはずっと中国経済に対する悲観的な見方を広めてきたが、多くの日系企業はそれに同意しておらず、むしろ中国への投資を選択している」と語った。

日本第三位の証券会社が中国への進出に望み

11月22日、中国証券監督管理委員会は、みずほ証券株式会社が提出した『証券会社設立審査』の申請書類が同委員会によって受理されたことを公表した。みずほ証券は、日本最大の金融ホールディンググループであるみずほフィナンシャルグループ傘下の金融機関だ。みずほ証券が中国で証券会社の設立に成功するならば、すでに設立されている野村東方国際証券や大和証券に続いて、三社目の日系証券会社となる。

現在の中国市場では、外資系証券会社のメインは依然として欧米資本であり、日系証券会社はまだ少数だ。一部の日系企業は中国で証券会社の設立を申請しているようであり、近年中国の金融業界では対外開放が加速している傾向が見られる。今年10月に開催された中央金融工作会議では、質の高い金融の開放を推進し、安定したペースで金融分野の制度的な開放を拡大し、グローバル投融資の利便化を向上させることにより、より多くの外資金融機関および長期資本を引き寄せて、中国における事業の展開と繁栄に力を入れることが強調された。

みずほ証券が証券会社設立を申請する数日前に、カード決済機関に外資機関の万事網聯が新たに加えられた。同社は万事達(MasterCard)と網聯清算有限公司が中国国内に共同で設立した合弁会社であり、この合弁会社の設立は中国金融業界における新たな対外開放のシンボル的な出来事だ。

ユニクロは中国でさらにどこへ出店するのか?

2002年に中国市場に参入してから、現在ユニクロは中国に900店以上の直営店を出店し、中国の店舗数が世界全体の店舗数に占める比率は約三分の一に達しており、店舗数は日本を超えている。しかし、昨年末、ファーストリテイリングの柳井正会長は、3000店舗を中国での「最低目標」として掲げたが、それは中国でユニクロをさらに2000店以上出店することを意味している。

一級都市ではすでに店舗が飽和状態だ。ではこれほど多くの店をどこに出店すればよいのか?ユニクロが狙いを定めているのは「地方都市市場」だ。アクセンチュアの『2022年中国消費者報告』によると、一、二級都市と比較して、地方都市市場における消費者の日常的な消費ニーズは旺盛であり、その中でも、アパレルや靴、帽子などが占める比率は74.4%と高い。

ある中国メディアによると、ユニクロは中国で毎年80から100店舗のペースで新規出店を計画しており、そのうちの半分以上は三、四級都市を対象にしている。これらの都市ではこれまで海瀾之家や波司登などの国内アパレルブランドが主要な地位を占めており、海外のファーストファッションブランドは影が薄かったが、海外アパレルブランドが地方都市に進出すると、これら国内ブランドは巨大な打撃を被る可能性がある。

中国の地方都市市場の現状を見ると、一人当たりのGDPや都市化率、人口構造などの指標がいずれも日本の70年代から90年代と似ているところが多く、ビジネス形態もまだ初歩的な段階であるため、そこには大きな爆発的な潜在力があると言えよう。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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