『必読』ダイジェスト 2023年、インド、中国、マレーシアは人件費における優位性や充実した人材バンク、技術の蓄積の恩恵により、世界で最も魅力あるオフショア・サービスアウトソーシング先となった。著名な経済コンサルティング企業であるA.T.カーニー(A.T. Kearney)が7月25日に発表した2023年『世界オフショア・サービスアウトソーシング先指数』報告(以下、『報告」)で上述の結論が示された。
同報告はさらに、技術が急速に発展し、トレンドが絶えず変化する時代にあって、企業はコスト削減や人材規模の拡大、世界の人材バンクの使用による企業効率の向上を希望しているため、例えば情報技術やサービスフローのアウトソーシング、工学設計といったクロスボーダービジネス・サービスを多用していることを指摘した。グローバルビジネス・サービス市場の規模は2022年の6240億ドルから2023年には6810億ドルに増加しており、グローバル・オフショア・サービスのニーズ拡大をいっそう推進している。
同報告は世界78カ国のオフショア・サービスを引き付ける力に対する評価も行っており、それには金融面での魅力や労働者の技能水準およびアベイラビリティ(調達可能性)、総合的なビジネス環境、デジタルリテラシーが含まれ、これら4つの要素には合わせて52の評価指標がある。評価結果ランキングの上位3カ国はそれぞれインド、中国、マレーシアであり、評点はそれぞれ6.91、6.67、6.14だった。インド、マレーシアと比べると中国は労働者による手作業の技能水準およびアベイラビリティ、デジタルリテラシーの2つの方面で顕著な優位性を有しているが、金融面での魅力が足りない。
上位3カ国を除く他の上位10カ国は、ブラジル、英国、インドネシア、ベトナム、米国、タイ、メキシコだ。中国は労働者による手作業の技能水準およびアベイラビリティの評点が2.24で、優位性は依然として顕著だった。この数値は全78カ国において米国の2.28に次ぐ2位だ。また中国のデジタルリテラシーの評点は0.89で、全78カ国において上位に食い込み、日本の0.82や韓国の0.80を上回っている。
報告は、中国がデジタルリテラシーの向上を非常に重視し、AIや機械学習、量子コンピューティング、ブロックチェーン、クラウドなどの分野で申請している技術特許の数で世界をリードしており、デジタル応用の分野で先進的な地位を占めていることを指摘している。
人材教育において、中国は今、強大なSTEM(科学、技術、工学、数学)教育システムの構築に取り組んでおり、主に人工知能(AI)や分析技術、3D設計などの新たな技術の実用化を達成すると同時に、初歩的な人材育成において高い認知力、社交性、感性を培うことを盛り込んでいる。
報告はさらに、政府からの大きなサポートがあり、多くの官民による協力プロジェクトによってデジタルリテラシーの発展を推進しているとはいえ、中国の人口が直面している高齢化や出生率の低下などの問題により、中長期的な労働力の人口規模に不確実性が存在していることを指摘した。
注目すべき点として、これより前の報告と比べると、2023年の報告は「人材の再生」の重要性がより際立っている。「AIや機械学習の技術が成熟し続ける一方で、純粋な情報技術のアウトソーシングや労働力のアービトラージが輝きを失いつつある。こうした変化は、労働力市場における人材の技能再生の重要性を高めている」とカーニーで取締役を務めるラーフル・レレ(Rahul Lele)氏は語っている。
報告はさらに、「国が企業と人材の両方面から一斉に着手し、より多くの企業と人材を呼び込み、つなぎ止めなければならない」と指摘している。例えば、世界のトップAI研究者の29%は中国出身だが、中国で働いている者はそのうちの11%に過ぎない。これに対し、世界のトップAI研究者のうち米国出身者は20%だが、そのうちの59%が米国で働いている。この現状は、中国の科学技術人材の海外からの回帰に、依然として期待される大きな潜在力があることを示している。
(『日系企業リーダー必読』2023年8月5日記事からダイジェスト)