『必読』ダイジェスト 中国のCPTPP加盟に関する最新情報が発表された。このほど、王受文商務部国際貿易交渉代表兼副部長がアジア太平洋経済協力会議(APEC)CEO中国フォーラムの席上で、中国の「環太平洋連携に関する包括的および先進的な協定」(CPTPP)加盟の推進プロセスについて紹介した。それによると、中国はCPTPPの2300項目以上の条項に深く全面的な研究と評価を行い、中国のCPTPP加盟に調整が必要とされる改革措置や改正が必要とされる法律法規を整理した。また最近、中国政府はCPTPP加盟国に中国がこの協定に加盟する交流文書を手渡したという。政府系メディアは、「こうした進展は中国のCPTPP加盟への誠意と決意を示すものだ」と報道している。

当然、加盟できるかどうか、いつ加盟するかについては、中国だけで決めることではない。2018年12月に正式に発効したCPTPPは現段階で、世界で最も高基準な自由貿易協定とみなされている。この地域的な自由貿易協定が締結できるかどうかは、経済的な考慮のほか、地政学的駆け引きの結果でもある。多くの人が、中国が早期にCPTPPに加盟する可能性は低いとみてはいるが、現在のところ、中国政府の決意はいまだ揺らいでいないようだ。これはやはりほっとするニュースだ。

2021年9月に正式にCPTPP加盟の申請を出してから、2021年11月には、習近平主席が第4回中国国際輸入博覧会の開幕式における講演の際に、「中国は積極的にCPTPP加盟を推し進める」と語っている。2022年12月の中央経済工作会議では、CPTPPなどの高基準の経済貿易協定への加盟を積極的に推し進める必要があることが再度強調され、同時に積極的に関係ルールや規制、管理、基準に照らし、国内の関連分野の改革を深めていくとしている。2023年の政府活動報告はこうした立場を改めて強調している。CPTPP加盟を中国政府は常に念頭に置いているようだ。

2年前、中国政府がCPTPP加盟の申請を出した際、これは中米貿易摩擦を緩和させるための一つの姿勢に過ぎないと考える人もいた。しかし2年近くの事実からみれば、中国側としてはやはり真剣であり、これに関するプロセスを着々と進めていることが分かる。ある程度、これは自覚的・主動的な対外開放だと言ってもよいだろう。

当然、現在はまだスタートしたばかりで、今後さらに長い道のりを歩まねばならない。難しいのは関連法律・法規の改正に限らず、さらに監督・管理やビジネス環境の向上も必須であり、国有企業などの要となる分野の改革を推進し、「競争上の中立性」政策を実施することだ。結果はもちろん重要だが、申請する過程によって、開放により改革を促し、中国経済に新たな「開放によるボーナス」をつくりあげることが、中国がCPTPPに向かうより本質的な収穫となることは間違いない。

中国がCPTPPに加盟する難しさは、かつての世界貿易機関(WTO)加盟にひけを取らないだろう。しかし、当時の中国政府はそれでも自ら進んでWTO加盟を決定したのであり、それは加盟が中国の発展の大局に有利となる選択であることを正確に認識していたからだ。15年の「黒髪の人が白髪になる」ほどの苦しい交渉を経て、今世紀初め、中国はようやくWTOに加盟し、この後中国の対外貿易は爆発的な発展を遂げ、外資利用は発展途上国のトップをキープし続け、対外直接投資も世界26位から第1位へと躍進した。GDPの成長曲線はより急カーブを描くようになった。同時に中国中央政府は法律・法規2300本余りを整理し、地方政府は19万本余りを整理した。それは貿易・投資・知的財産権保護など多方面に及ぶもので、国際ルールをベンチマーキングした深さと広さをそなえた制度変革を達成した。経済貿易総量の拡張が表立った筋立てであったとすると、制度改革という伏線により中国市場経済の長期的に安定した「インフラ」の基礎がつくられ、その影響は深く、全面的なものであった。

開放を拡大するいかなる過程も、中国社会がコンセンサスを集め、改革開放をより不可逆的なものとする過程でもある。中国人はWTO加盟前に中国で起こった激しい論争を忘れるべきではない。当時、一部の人はWTO加盟こそ「世界最後の日」で、農業・自動車などの業界が徹底的に崩壊すると思っていた。当初の悲観的論調は事実によって正された。それと鮮明な対比をなすのが、中国がCPTPP加盟を申請した後で、政府も民間も上から下まで悲観的な言論は少なく、民衆はその成功を疑わず、早ければ早いほどよいとまで思っている。その理由は、開放が中国にうま味を味わわせ、社会全体が「改革・開放しなければただ死するのみ」という真諦を深く悟り、改革開放が現在の中国に経済の高速成長の基礎をつくってくれたからである。この角度からいえば、CPTPP加盟申請は、中国政府が人民に向けて出した一つの「誓約書」で、全国民の開放意識に対する正面からの回答、厳かな約束であるのだ。

CPTPP加盟申請はさらに、中国の良い対外イメージをつくり上げるのに有利となる。国際情勢が激しく変化し、中米関係が厳しい状況にあるという背景のもとで、外部の世界もまた中国の動向を傍観・推測している。ハイレベルな経済貿易ルールは国際協力の基礎となる。中国がCPTPP加盟プロセスを積極的に推し進めるなら、中国は現行のルールやシステムを破ったり無視したりするつもりはないということの鮮明な態度表明に等しく、さらには今後国際ルールを受け容れ、適当な場面においては、新しいルールの共同制定者ともなる意欲があることを示すものでもある。

もちろん、CPTPP加盟が難しいことは火を見るより明らかだ。中国の関係部門のCPTPPの2300項目余りの条項に対する研究と評価の結果がどうであったか、改革措置と法律・法規の改正がいかにして展開されるか、人々はまだ知らない。政府買付、国有企業、労働者の権利、データの自由、透明度と反腐敗などの難しい問題を解決できるかどうかは、国内外にいまだ懸念が存在する。困難は内部のみならず外部にも存在する。中国加盟支持を明確に示す加盟国もあるとはいえ、政治的駆け引きが経済貿易交渉の妨げとなる可能性もある。

たとえ困難が山積していても、中国が自己変革によりCPTPPの高い基準に達することができれば、それ自体が加盟申請の説得力を増す助けとなり、異なる意見をもつ加盟国に考え直させることができる。一部の中国の専門家は、CPTPPは中国経済の大きさを考え、中国に対する加入基準を引き下げてくれるのではないかと願っている。しかしこれは実際には過度の期待だといえる。すでに加盟している国の指導者が、難しい交渉を経てようやく加盟した国に対し不公平だと指摘している。加盟には近道はなく、着実な改革によってはじめて、中国は確かに「CPTPPに入りたいと願っていて、その能力もあり、CPTPPの高い基準に到達することができる」ことを証明できるのだ。

開放の最終目的は人民がその恩恵を受けることにある。WTO加盟後、多くの国外の新しく珍しい製品が中国のスーパーにどっと入ってきて、中国の食卓に上った。中国製品もまた国外に輸出され、世界に「メイド・イン・チャイナ」を知らしめ、愛させることになった。当時、企業や民衆はみな、中国には未来があり、自分も努力のしがいを感じるという、実際的な変化を感じ取った。今、中国人はCPTPP加盟の過程により、開放の満足感をたっぷり得ることができるのではないかと、あまねく期待している。

(『日系企業リーダー必読』2023年7月5日記事からダイジェスト)

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