『必読』ダイジェスト「中国にあるBYDの工場の中に入ると、ロボットの使用率が信じられないレベルだということが分かる」。米国時間の55日、バークシャーハサウェイ(Berkshire Hathaway Corporation)の年度株主総会で、ロボットとAIに関する問題について尋ねられたとき、99歳のチャーリーマンガー(Charlie Munger)副会長は理路整然とした回答をし、ロボットのグローバルな応用はますます広がっていると語った。この発言は中国の多くのメディアによって引用された。

マンガー副会長が説明したBYDの工場で使用されているロボットの多くが工業ロボット(近年になって、AI技術によって登場した人間型ロボットとは大きく異なる)だ。中国は世界最大の工業ロボット市場だが、長期にわたって外資メーカーに牛耳られている。しかし、『財経』510日号の報道によると、中国の国際製品はこの数年間で静かに外資の大手企業に追いつこうとしており、すでにこれら外資企業に対して明らかに挑戦を仕掛けている。

工業ロボットが誕生したのは1950年代末で、欧米や日本などの国々での製造業の発展に伴って成長した。中国の工業ロボットの取り組みは遅く、1980年代になってから模索が始まり、21世紀になってようやく大規模な商用化に入った。

国際ロボット連合会(IFR)のデータによると、世界最大の工業ロボット市場として、2021年、中国の工業ロボットの新規搭載台数は268200台で、同期の世界市場に占める比率は約51.9%だった。中国電子学会の予測によると、2024年の中国工業ロボットの市場規模は115億ドルになる見込みがあり、2020年から2024年までの複合成長率は約15%だという。

世界の工業ロボット市場では、クーカ、ABB、ファナック、安川電機の「四大ファミリー」が代表する国際メーカーが主導的な地位を占めている。中国市場を例に挙げると、外資ブランドの工業ロボットシェアは長きにわたって6割以上を占めてきた。市場調査研究機関MIRの統計によると、2022年上半期、中国市場で、工業ロボット出荷のベスト20社中、12社が外資メーカーで、8社が中国資本のメーカーだった。ファナックがトップの座に君臨し、その後を安川電機、エプソン、クーカが追っている。ABBはランクを少し下げ、6位にランクインしており、ベストテンに入った中国国産メーカーは埃斯頓と滙川技術の2社だけで、それぞれ5位と7位に入った。

しかし、中国の国産工業ロボットメーカーはすでに老舗国際大手メーカーの不動の地位を脅かし始めており、特に中国国内で発展に勢いがある電子電気業界や従来製造業のアップグレードの需要を押さえることに力を入れている。MIRのデータによると、2015年から2022年まで、中国の工業ロボットの国産化率は17.5%から35.5%に急速に上昇した。

複数の国産工業ロボットメーカーが2022年に優れた業績を収めた。例えば埃斯頓は、2022年の売上高と純利益の増加率がそれぞれ28.49%と36.28%だった。そのうち、工業ロボットおよびスマート製造システム業務の売上高は前年比41.16%増だった。これとは対照的に、ファナック、安川電機の2022年の売上高増加率はいずれも16%前後で、クーカは18.6%、ABBはわずか2%だった。

国産ブランドが成長した背景には、一面では海外ブランドがサプライチェーンの滞りの影響を受けて、納品周期が中国国内ブランドよりも長くなったことがある。もう一面では、コロナ禍による「労働者の雇用難」によって、従来製造業企業の中でも特に中小企業が刺激を受け、生産ラインの自動化改良を加速したことがある。外資ブランドと比べて、国産ブランドの出荷量は小型工業ロボットがメインであり、主に価格戦で優位に立っており、上述の新たな需要に首尾よくこたえている。この他に、新興の協働ロボットや移動ロボットなどの分野において、国産メーカーは海外メーカーとほぼ同時に着手したが、今では国内で海外メーカーを大きく上回る市場シェアを獲得している。

技術と人材不足の制限を受けて、国産工業ロボットは長きにわたって低いレベルの応用分野に限定されてきたが、このような情況も変わりつつある。『財経』の報道によると、過去において中国の国産工業ロボットはほとんどが運搬やスタッキング、物資の上げ下げ、および簡単な溶接などの分野に応用されていたが、現在は徐々に組み立てや磨き、コーティング、吹き付けなどのハイレベル分野まで拡大しており、これまで外資ロボットメーカーに独占されていた業界でも発展し始めている。

しかし、技術と品質に対する要求がより高い大型工業ロボット分野では、中国国産メーカーが外資ブランドの市場における地位を揺るがすのは今でも困難であり、さらなる突出した成長を必要としている。オペレーションシステムやアルゴリズムといった面での差以外に、基幹部品の分野で、国産サプライチェーンはまだ難関をクリアできていない。この他に、川下市場における景気の下降が2022年第4四半期から工業ロボット業界にも影響を及ぼし始めており、中国国産メーカーの多くは2023年第1四半期の業績が明らかに圧迫されている。

 

(『日系企業リーダー必読』2023520日記事からダイジェスト)

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