研究院オリジナル 2023年8月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係のトピックおよび日系企業について多く取り上げた。
オフラインからオンラインまで、中国市場によって次第に変化している日本の化粧品企業の考え方
資生堂、コーセー、花王などの化粧品大手は近ごろ2023年上半期の財務報告を発表した。これら財務報告では、ECでの業績が主に取り上げられた。
資生堂は中国での618セールの期間中、ティックトックチャンネルでの売上高が前年比で約3倍増加した。同社はさらに極端な販促戦略への依存を減らし、売上増加を維持するための持続可能なオンライン戦略を模索することを計画している。マーケティング戦略において、資生堂ブランドはバーチャルヒューマンによる宣伝やAIイラストなどの新興技術を試している。
コーセーは財務報告で、同社の618セールでの売上額が前年同期を上回ったが、その期間内の全体的なECでの売上額はやや下落し、その主な原因はECサイトの多様化にあると指摘した。とはいえ、コーセーは中国で新たなECサイトを追加して、ECでの競争力を強化することによって、日に日に厳しさを増す市場競争に対応する計画を立てている。
花王はしばらく前に、公式ECサイト「My Kao Mall」に、「My Kao Mall OUTLET」というアウトレットコーナーを設け、化粧品の滞留在庫や旧商品、期限間近の商品を割引価格で販売している。中国市場で、花王中国の幹部はさらにテンセントの本部を訪れ、デジタル化戦略における協力をいっそう深めるために交流した。
以前、日系化粧品企業はECをあまり重視してこなかった。なぜなら日本の消費や小売りの環境は中国と大きく異なるからであり、日本の化粧品の販路は非常に広く、オンラインではアマゾンや楽天など総合ECサイトがあるとはいえ、化粧品販売の大半はドラッグストアやCS店、化粧品の総合ショップといった従来型のオフラインの販路によるものだ。しかし、中国市場に進出し、改めて既存のブランドが高度にデジタル化された中国の消費環境を経験すると、これらのブランドはみなオンライン販売とデジタルリテールの重要性を意識するようになった。かなりの程度、日増しに成長する中国市場によって、日系化粧品企業の販売に対する考え方は次第に変化している。
中日電動自動車企業の協力は競争よりも有益
今年以降、日本の自動車業界は長きにわたって貫いてきた保守的な姿勢を改め、EVが今後の主流になるか否かについて言い争うことをやめ、むしろ目標をリストアップした進捗表を作成し、貴重な資金投入を拡大し、革新的な生産とEV技術を育てるための開発を積極的に進め、競争圏内に走りこもうとしている。
中国の電動自動車の急速な台頭に伴い、「中国市場での日本車の売れ行きが下がっている」ことは、日系自動車メーカーや部品のサプライヤー、そして業界が今注目している関心事だ。しばらく前に、トヨタの主要な傘下企業8社の幹部は業績発表会で、中国市場における生産の軟調に対して懸念を示した。
デンソーの松井靖副社長は、中国国内の電動自動車の発展による影響を受けて、日系企業を含む海外企業の売上額は下落する可能性があることを指摘した。プラスチックやゴムなどの自動車部品を生産する豊田合成中国公司の幹部は、「中国市場はかなり厳しく、あるメーカーは計画の約3分の2しか生産が完了していない」と語った。
中国メディアの報道によると、日本の五大自動車メーカーは中国で一級サプライヤーを数百社有しているが、これら一級サプライヤーは多くの二級、三級サプライヤーを率いている。つまり、日本の自動車が中国で売れなくなれば、その損害は産業チェーンに存在する千社以上の企業に及ぶということだ。
これに対して、業界内のアナリストは、中国の電動自動車が今、猛烈な勢いで発展しているとはいえ、今後もより大きく、より強くなり、業界の主流となるには、一流のサプライヤーからの支持は欠かせないと考える。そして、日本のサプライヤーは長きにわたる基礎研究と技術の蓄積を生かして、多くの材料や装置、部品の分野で大きな基礎を据えている。中国と日本はこれらの分野で明らかに補完性を有しており、双方には大きな協力の余地がある。
同時に、中国市場以外に、世界にはさらに約6000万台の自動車市場があり、中国の電動自動車が世界に向かって走り出すためには、地産地消を実現し、現地で産業チェーンを築き、マーケティングサービスネットワークを確立することによって、市場シェアを着実に獲得していかなければならない。これらの面で日本の自動車メーカーには優位性がある。
それゆえ、中国と日本が電動自動車の分野で単に競争関係になるだけでなく、双方が技術協力や資本協力、海外協力など様々な方法によって、双方の長短を補い合い、共に世界市場を開拓するならば、ウインウインの結果がもたらされることだろう。
東京エレクトロンによると中国市場に対する輸出規制の影響は大きくない
半導体市場低迷の影響を受けて、半導体製造装置の販売台数は減少しており、日本の半導体製造装置大手の東京エレクトロンは3期連続で利潤が減少しており、2023年最初の会計四半期は前年比27%減だった。
このような状況下で、中国市場は救済者になる見込みがあり、米国およびその同盟国が中国に対して先端技術の輸出規制を強化するにつれて、中国のチップメーカーは半導体装置に習熟するための投資を加速している。日本が米国に追随して中国への半導体輸出において制限措置をとっているが、東京エレクトロンの関係者によると、日本で7月に発効したチップ製造装置の出荷に関する新たな制限は、同社の運営や販売に対して影響を及ぼしていないという考えを示し、「当社の中国顧客はこれらの制限に非常に通じており、改めて戦略を定めている」と語った。中国市場は東京エレクトロンによる第2四半期の収入の39%を占めた。
NECが中国で設けたスマート旅行の新たなベンチマーク
近ごろ、中国文化旅行部は第1期の全国を対象にした「スマート旅行の没入型体験において新たな空間を育むためのモデル事業」のリストを発表し、NECのディスプレイ製品と中国企業が提携して共に作り出した製品がリストへの入選を果たし、広東省で唯一入選したプロジェクトとなった。NECはナイトツアーやニューメディアによる没入型アートなどの分野で多くの代表的な実績を有しており、中国市場に対する理解も深い。