研究院オリジナル 2023年7月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係のトピックおよび日系企業について多く取り上げた。
トヨタが発表した全固体電池の車種の量産時期が中国で議論の的に
7月初め、トヨタ自動車は公式サイトで電池技術において重要な発展を遂げたことを発表し、2025年に先進的な全固体電池を発売するという。同電池は3分間の急速充電で航続距離1200キロを達成できると同時に、コストを20%下げることができる。トヨタの計画によると、2027年から2028年に実用化に入り、BEV車種に全固体電池が搭載される見込みだ。
全固体電池は電動自動車の「ゲームチェンジャー」と見なされており、このトヨタのニュースは中国で広まり、熱い議論を引き起こしている。その議論の焦点は、トヨタが全固体電池を武器にして、中国の電動自動車企業に対して形勢を逆転することができるかどうかだ。
技術の発展という方面から見ると、トヨタは全固体電池の方面で中国企業よりも先を行っており、中国が現在発表している発展の多くは半固体電池に集中している。それゆえ、一部の中国の専門家はトヨタの全固体電池の発展状況に対して疑いの目を向けている。寧徳時代のチーフ・サイエンティストである呉凱氏は、現在一部の業界において全固体電池に関する重大な問題が未解決のままであり、現時点で全固体電池を量産する能力を有している業界は存在しないという認識を示している。呉氏は、トヨタが2027年に(全固体電池を)量産するという話に疑問を呈している。
ネット世論では、中国の電動自動車が引き続き優位性を保つことに対して、大半の人々がかなり楽観的な見方を示している。その主な理由は、電動自動車の成功は電池だけによるものではなく、さらに付帯設備やスマート化といった他の要素も含めて総合的に考える必要があるからだ。新たな技術が誕生すると、往々にして大規模な実用化の検証を経ることやコストの達成、技術と市場の受け入れ具合とのバランスをとること、さらに産業チェーンの上流と下流の分業と提携を首尾よく図ることが求められる。そのようにすれば、本当に大規模な商業化を実現できるかもしれず、また中国の電動自動車は一体化された総合的な優位性を確立する面で常に豊かな経験を積むことができる。
同時に、電池自体の蓄電能力の増強以外に、大容量の急速充電の実現も同様に航続力の向上における重要な方向性と見なされている。現在、世界で800Vの高電圧急速充電システムを発売或いは発売を決定している自動車ブランドの大半は中国企業であり、固体電池技術は単体の電池コンポーネントを考慮に入れる必要があるだけでなく、さらに「電池」、「自動車」、「ネットワーク」が一体化したレベルアップがもたらす総合的な挑戦に向き合う必要がある。
しかし、世論では、トヨタの全固体電池は中国企業に警鐘を鳴らすものであり、今すでに世界の新エネルギー自動車競争は「白兵戦」の段階に突入しており、新エネルギー自動車の販売台数で中国国産ブランドは世界をリードしているが、技術革新の方面では気を引き締める必要があり、例えば全固体電池関連の特許取得数の方面で、中国は核心技術においてまだ(世界と)開きがあるという指摘がある。
「美しい恋愛であったが、結婚に失敗」、スバルと龐大集団が正式に提携解消
しばらく前に、龐大汽貿集団股份有限公司はスバル自動車(中国の)株主から撤退し、同社は株式会社スバルの100%出資子会社となった。10年間の誤った「婚姻関係」がようやく終わりを迎えた。
2004年にスバルは中国に進出し、龐大集団はスバルの中国ディーラーの一つだった。同集団はスバルが進出した当初、中国市場を開拓する面で多大なる貢献を果たし、かつては1億元を投じて輸入車ディーラーの中で先立って1万3000平米のスバル北京部品中央保管庫を設立し、スタッフによる24時間対応のサービスセンターを設け、さらにスバル研修センターなどを建設した。当時スバルが販売した車両の2台に1台は、同集団が販売したものだった。
龐大集団のサポートの下、2011年にスバルの中国における販売台数は5万7000台に達し、中国の輸入車の「スターブランド」になった。さらに協力を深めるため、2013年に富士重工株式会社と龐大集団は合弁契約を締結して、共にスバル中国公司に出資し、その投資総額は82億5000万円に上った。
龐大集団はディーラーから株主になり、発言権も大きくなったが、それがスバルの今後の発展にとって潜在的リスクとなった。一つのディーラーに過度に依存することにより、スバルは同集団から度を超えた干渉を受けるようになり、同集団の考えによる「洗脳」の下で、スバルは製品の導入において戦略を誤り、衰退の道を歩み始めた。中国市場への投資不足や徹底し切れなかった現地化、製品マトリクスの不備、電動化へのモデルチェンジのペースが遅いことなどの問題は、スバルが中国で抱える難病と化していた。2014年から2017年にかけて、スバルの中国での販売台数は約5万台から約3万台に減少した。そして2018年から2022年にかけて、約2万台から約1万台とさらに台数を減らし、存在感を徐々に失った。
現在、晴れて「自由の身」になったスバル中国は、戦略の変更を行う面でもはや何の障害もない。もしAscentやWRXなど海外で人気がある車種など、より多くの車種を速やかに導入することができ、同時に市場のチャネルを開拓し、ブランドマーケティングを強化できるなら、現在の困難な状況を逆転することも可能かもしれない。
日清中国がベトナム事業を掌握
6月29日、日清食品の中国子会社である日清食品有限公司は同社の親会社が全額出資するベトナム子会社の67%の株式を取得したと発表した。同社の中国子会社がベトナム事業を掌握し、同社の香港やマカオ、台湾事業のために商品を提供する。
1994年、日清食品は初めて中国に会社を設立し、その後中国市場で大きな成功を収め、2022年に同社は中国で即席麵を450億個販売し、営業収入は約25億香港ドル(約444億円)だった。しかし、同社は東南アジア市場に参入した時に挫折を経験し、特にベトナムで苦戦を強いられた。現在、ベトナムは一人当たりの即席麵の消費量が世界で最も多い国だが、2023年3月時点で前年度と比較して、同社のベトナム子会社の純損失は332億ベトナムドン(約1億9500万円相当)だった。
日清食品有限公司の代表取締役兼CEOを務める安藤清隆氏は、日清ベトナムの買収はグループ内でより臨機応変にリソースを分配し、より良いコスト管理を実現する上でメリットがあり、それによって全体的な競争力を強化することができるという考えを示した。ベトナム事業が日清中国の管理下に置かれることは、日清食品が今後これら二つの地域を統合し、同一エリアの市場とすることを意味している。この観点からみると、ベトナム事業の買収は同社が失敗を認めたというよりも、新たな方向へ一歩を踏み出したと言える。
三井物産と中国企業が電池の回収協力を展開
6月末、三井物産株式会社は中国の上場企業である天奇股份と了解覚書を交わし、双方は電池のリサイクル分野での海外市場のプロジェクト協力において共通認識に達し、今後中国の国内市場を起点として、共同出資によって高規格かつ低排出の電池リサイクルのエコファクトリーを建設し、海外で電池リサイクル市場を開拓し、海外市場における電池リサイクル分野で双方の協力によるウインウインの実現を目指し、グローバル化されたリチウム電池のリサイクルエコシステムの構築を展開する。
2020年に、三井物産は中国企業の格林美と合弁で「武漢三永格林美汽車零部件再製造有限公司」を設立し、中国の動力電池回収市場を共に開拓している。