研究院オリジナル 2023年6月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係のトピックおよび日系企業について多く取り上げた。
失敗した日本ブランドが中国企業によってビッグブランドに
「カンター・ワールドパネル」のデータによると、今年3月時点で、中国国内乳業企業の新希望公司が販売する「朝日唯品」のミルクは、最近1年間の家庭向け売上高の増加率が288%に達した。「朝日唯品」は新希望公司傘下の高級ミルクブランドで、同社の主力商品となっており、今年は10億元の販売規模に達する見込みだ。
「朝日唯品」の好調な売れ行きは、中国の消費者の日本ブランドに対する人気と大きく関係しており、「朝日唯品」はすでにアサヒグループホールディングスとは無関係だが、多くの消費者は「朝日唯品」を日本ブランドと思っており、高い品質が保証されていると思っている。
2006年5月、アサヒグループホールディングス傘下のアサヒビールは住友化学や伊藤忠商事とともに15億元を投資して山東朝日緑源農業科技有限公司を設立し、高級ミルクブランドの「朝日唯品」を立ち上げた。2016年に長期的な赤字により、アサヒグループホールディングスは朝日緑源を新希望乳業公司に売り渡さざるを得なくなり、同時に「朝日唯品」のブランドも売却した。
「朝日唯品」は、日本ブランドとしての市場での人気の高さ、ミルク自体の品質のどれをとってもかなりの優位性を有しているのに、なぜ最初の頃は惨敗を喫してしまったのか?その原因は日本の会社が終始、効率が高くて整ったサプライチェーンを構築できなかったことにある。例えば、一般の牧場は1トンあたり400元でサイレージを購入することができるにもかかわらず、中間業者の転売により、1トンあたり600元でサイレージが朝日緑源に販売されていたため、当時「朝日唯品」のミルクの価格は中国国内の高級商品の2倍以上だった。しかし、新希望公司が業務を引き継いだ後は、同社が迅速に整ったサプライチェーンを構築したことにより、「朝日唯品」は瞬く間に力強い競争力を発揮し、毎年の売上の増加幅は50%以上を記録し、速やかに黒字化を実現した。
メディカル・ケア・サービスは中国の介護市場でどのように成功を収めたか?
6月8日、日本の介護サービス企業のメディカル・ケア・サービスは再び中国に合弁会社を設立し、AIとロボット技術を組み合わせることにより、療養サービスロボットとソリューションを作り出した。この取り組みは同社の中国市場における新たな探求でもある。
介護産業はかなりの程度、経済や文化、習慣など「現地の要素」の影響を受けるため、早い時期に中国市場に参入した日本の介護企業は「風土に順応できない」という問題に直面した。それゆえ、メディカル・ケア・サービスは中国市場への参入に対して、最初の頃はかなり慎重な態度を示していた。同社がとった戦略は、中国国内企業との協力の道を探すことによって現地化の難題を解決するというものだった。
2014年末、メディカル・ケア・サービスは南通瑞慈医院と合弁会社を設立し、南通に最初の中日合弁による老人ホームを建設した。その後、同社は続けて、広州や北京、天津、蘇州、成都などの地区にも合わせて7つの機関を開設し、医療サービスと介護サービスを組み合わせた介護施設や都市中心部の高級総合老人ホーム、認知症ケアセンターなどを設け、さらに不動産、文化、旅行を組み合わせた療養サービスなど、様々なタイプの機関やサービスの運営を試すことによって、徐々に中国市場について理解を深め、中国市場における著名なプロジェクトを育もうとしている。
メディカル・ケア・サービスが中国市場で安定した発展を遂げることができている重要な要因は、中日双方の優位性や能力を上手に融合していることにある。中国人の職員が市場開拓を担い、正確かつ効果的に市場ニーズをつかむことができている。日本のチームは設計や運営サービスを担当し、空間計画やサービスの詳細において日系サービスの専門性や細やかさを発揮している。中国と日本の職員が常にコミュニケーションを取り続けることによって、中国にとって最もふさわしいプランを共に見いだしている。
パナソニックの見解:中国は優先的に考慮すべき市場
現在、市場と政治がもたらす多重の要素からの影響を受け、一部の日系企業は中国を撤退しており、世論は中国のパナソニックもすぐにそのチームに加わると見ている。その証拠と言えるかもしれないのは、パナソニックが中国で早い時期に立ち上げた電池の合弁企業であるパナソニック蓄電池(瀋陽)工場が2023年5月に生産を全面停止したことだ。これより前の2022年に同社は上海の乾電池工場を閉鎖し、2021年に同社は中国のソーラーパネル市場から撤退し、同社のA7サーボモーターの生産ラインも日本に引き揚げ、同社の空調も東南アジアに移転した。これらの状況はいずれも証拠として引き合いに出されている。
しかし、事実はそれとは異なる。パナソニックが閉鎖した一部の工場は自社の製品構造の調整に起因しており、瀋陽の蓄電池工場の閉鎖は、パナソニックエネルギーが正式に鉛蓄電池の生産業務から撤退して、純電動自動車用リチウムイオン電池業務に力を集中することを決定したからであり、そのため工業用鉛蓄電池を生産している瀋陽の蓄電池工場は閉鎖されることになったのだ。
中国市場はパナソニックにとって非常に大きな存在であり、今年3月末までの会計年度において、中国市場における同社の売上高は9647億円で、同社の総売上高の11.5%前後を占めた。
4月27日に上海で開催された見本市の「AWE 2023」で、パナソニックは2023年を「再始動」の1年と定め、2025年に中国家電市場でナンバーワンの外資ブランドになることを目標に掲げた。2022年度から2024年度までの3年間で、同社は500億円以上を投じて家電生産工場を建設することを計画しており、それには嘉兴のキッチン家電工場、広州の空調工場および美容家電工場などが含まれる。
6月14日、小米はパナソニックと戦略的パートナーシップを結ぶことを発表した。小米はこれまでずっと、パナソニックが製造する製品を高品質の代名詞とし、世界の消費者からの信頼を勝ち得ていると評価してきた。「小米の設計+パナソニックの製造」というモデルの下でお互いの長所で共に補完し合い、共同で世界市場を開拓する。
少し前に、パナソニックの楠見雄規社長は東京で取材を受けた時に、地縁政治により他の地区に強大なサプライチェーンを構築する必要性が高まっているとはいえ、中国は依然として当社が大いに重視する市場であり、「我々はこれまでと同様に、中国での業務を引き続き発展させ」、「間違いなく、中国は優先的に考慮すべき市場」だと語った。
日本の放射能汚染地区で製造された食品を販売した中国企業に処罰
近ごろ、広東省佛山市順徳区楽従鎮人民政府に、佛山市順徳区の匯洋行百貨有限公司が日本の放射線汚染地区で製造された食品を販売したという苦情が届いた。調査を経て、同百貨店は2023年初に、長野県で製造された「不二家のネクター」、群馬県で製造された「ORIHIROのこんにゃくゼリー」、新潟県で製造された「ブルボンの豆乳ウェハース」を仕入れたが、上記の3つの食品は日本の放射線汚染地区で製造されたものとして取り締まりの対象となった。関連規定により、佛山市順徳区の匯洋行百貨有限公司に罰金が科せられた。
広東省の現地メディアの話によると、上記3つの食品の製造地は、中国国家質量監督検査検疫総局の公告である2011年第44号文書『日本からの輸入食品・農作物に対する検査・検疫管理を一層強化することに関する公告』の規定で、明確に食品の輸入が禁止されている日本の放射線汚染地区だ。言い換えると、これらの商品は中国が輸入を禁止する商品に属する。これらの禁止令は未だに解除されていない。