『必読』ダイジェスト 中国米国商会は3月1日に「2023年中国ビジネス環境調査レポート」(以下レポートと略す)を発表した。調査は1000社近い会員企業を抱える中国米国商会(以下商会と略す)が2022年10月中旬から11月中旬にかけて行ったものだ。
商会のマイケル・ハート代表は3月1日に行われた調査レポート発表会において、「アンケート調査が行われたのは、中国のコロナ政策が大幅に緩和される前とはいえ、商会は2023年2月初めにも簡易アンケートを行っていて、その調査結果はこのレポートの結論と類似するものであり、このレポートは基本的には在中国米国企業の最新の見解を反映しているものだと言える」と語っている。
74%が「サプライチェーンを移動する準備は進めていない」と回答
レポートによると、2022年末の段階では、74%の米企業が生産・買付などの一部のサプライチェーンを中国以外に移転させることを考えていない。
しかし、依然として24%にのぼる米企業が現在考慮中、あるいはすでにサプライチェーンを中国から移転させはじめていると答えている。この割合は前年に比べると14%高くなっている。
在中国米国企業のサプライチェーンや生産能力の移転に影響を与える主な要素として、中国のコロナ政策、中米貿易摩擦、地政学的リスクの上昇などがあると、レポートは指摘する。
コロナ政策の影響を引き続き受けながらも、売上高予測が2022年よりも高いとする在中国米国企業が32%あった。しかし、2019年~21年と比べると、この割合は近年で最も低いレベルとなっている。
なかでも中国における利潤状況に楽観的なムードを示すのは、サービス業に従事する米企業だが、消費業界の米企業は相対的に悲観的である。
中米関係の緊張が最大の問題とみなされる
2022年、米企業が在中国経営における5大問題とみなすものは、「中米関係の緊張」、「コロナ政策」、「法律・法規と施行のずれ」、「労働コストの増加」、「監督管理・コンプライアンス・リスク」である。
なかでも、中米関係の緊張は、3年連続米企業にとって中国ビジネスにおける最大の問題と見なされている。
このレポートではさらに、今後2年の中国業務の展望について、アンケートに回答した米企業が、各方面すべてにおいて悲観的な見通しを抱いていることが示されている。レポートで調査が行われた7つの分野――中国国内市場の成長、競争圧力、コスト競争力、利潤潜在力、管理環境、中米関係、中国経済の回復において、楽観的な態度を示した米企業の割合は、前年に比べるといずれも下がっている。
中米両国関係の全体的な展望においては、46%の米企業が、「中米関係は2023年に悪化するだろう」と答えている。「中米関係は今年改善する」と答えたのは13%に過ぎなかった。
一年前には「中米関係はこの1年で悪化する」と答えた米企業は24%に過ぎなかった。それより前の2020年末以前には、「中米関係は改善する」と楽観視していた米企業は45%もあった。
中米関係の緊張を緩和するため、在中国米国企業が現在米国政府に期待する5つの行動とは、多い順で、「激しい言葉や対立的な行動を避ける」、「結果志向で政府間の定期的な対話を実現する」、「米企業のために公平な競争環境を獲得する、米国公民以外の被雇用者に米国へ戻る道を提供する」、「米国と中国の市民に対する正常なビザ発行サービスを回復させる」というものだ。
同時に、これらの米企業が中国に最も期待を寄せる5つの行動とは、「コロナ政策の緩和」、「激しい言葉や対立的な行動を避ける」、「米企業が中国において公平な競争環境を得られるようにする」、「外国籍人員のビザや就労許可証発行手続きの簡略化」である。
中国を一番の投資先とする米企業の割合が初めて低下
米企業の対中投資の方面では、このレポートによると、米企業の中国の投資環境に対する評価が2022年に急低下している。今では45%の米企業が「中国の投資環境が悪化しつつある」と答えていて、前年同期よりも31ポイントも増えている。過去5年間、この割合は21%を超えたことがなかった。
ハート代表によると、今回の調査における最大の発見は、「中国を一番の投資先とする米企業の割合が初めて下がったこと」であるという。
レポートによると、2022年、中国が一番の投資先であると答えた在中国米国企業の割合はわずか14%で、2021年の22%よりも低く、三大投資先の一つであるとした在中米国企業の割合は31%で、2021年の38%よりも低かった。
この両者を加え、2022年にトップ3の投資先として中国が入っている米企業は半分にも至らず、米企業の在中投資の「戦略的優先意向に初めて重要な変化がみられた」とレポートは指摘する。
レポートによると、55%の米企業が、2023年に「中国における投資計画はない」、「あるいは中国における投資を減らす」と答えている。この割合は前年に比べ21ポイントアップしている。
「対中投資の優先順位が下がったと同時に、中米関係は依然として米国本社の現在の最大の気がかりとなっている。このため、米企業の経営陣が本社の全世界の経営陣あるいは役員会との話し合いの中で、中国がいまだ投資に値するところだと説得するには、困難を伴うことだろう」と彼はさらに語っている。
(『日系企業リーダー必読』2023年3月5日記事からダイジェスト)