研究院オリジナル 2023年5月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容および日系企業について多く取り上げた。

地位が揺るがされシャープは中国市場で挟み撃ちに

最近シャープが発表した2022事業年度(2022年4月から2023年3月まで)の財務報告によると、同社の純損失は2608億円で、2016事業年度以来初となる赤字転落となった。シャープは初めて液晶ディスプレイを世に送り出し、初の液晶パネル生産ラインを設けたゆえに、「液晶の父」と呼ばれていたが、今では中国市場で競合他社に後れを取っている。

2015年の初め、中国のカラーテレビ市場における熾烈な価格競争によりシャープは窮地に立たされ、2016年に鴻海集団がシャープを買収したが、その後シャープもカラーテレビの価格競争に参戦した。同年の「双十一(ダブルイレブン・毎年11月11日に開催されるネットショッピングの大バーゲン)」で市場を開拓するために、シャープは「70インチテレビの購入者に60インチテレビを進呈」という戦略を実行に移した。価格戦の戦術は短期的にテレビの販売台数の増加をもたらしたが、シャープのブランド地位が低下し、販売台数は2017年に一時的に上昇した後、次第に減少に向かった。

その頃、中国の消費意識はすでに目覚めており、カラーテレビ市場のけん引役はもはや価格ではなくなっていた。シャープもそのことを意識して「高級路線回帰」のスローガンを掲げたが、その時すでにテレビ市場のハイエンド分野はソニーやサムスン、LG、ハイセンス、TCLなどが山分けしている状態で、新たな技術や新たなコンセプトが次々に出現していた。例えばサムスンやソニー、LGはOLEDテレビの発展に力を入れ、ハイセンスはレーザーおよびULED技術のグレードアップを継続し、TCLはMini LEDテレビや巨大画面テレビを主力にしていた。

シャープのテレビが「8Kの父」という看板を掲げた頃、中国の長虹は8K+ハイリフレッシュレート(リフレッシュレートが120Hz以上)+Mini LEDという合わせ技を採用したディスプレイを発表した。市場調査機構の中怡康のデータによると、今年第1四半期、MiniLEDとハイリフレッシュレートテレビは市場における最も重要な成長分野となっており、ハイエンドディスプレイ技術の「ポジション争い」において、MiniLEDテレビとハイリフレッシュレートは注目の的となっている。

高級路線への転換が(市場の)ペースに追いついていない一方で、低価格路線へのシフトでは小米のような中国国内メーカーという強敵が控えているため、市場においてシャープに残されたスペースは極限まで削られている。


PHEVのアコードにより中国でかつての輝きを取り戻そうとしているホンダ

5月末、广汽ホンダはフルモデルチェンジされた11代目アコードを発表したが、7車種のうち3車種がプラグインハイブリッド車で、ホンダは11代目アコードを「電動化のフラッグシップ」車種に位置付けている。

1999年に中国国内市場に参入して以来、アコードは常に国内の中型乗用車市場で販売台数を大きく伸ばしてきた車種だ。8代目アコードは4年連続でミドル・ハイエンド車の年間販売台数のトップに君臨し、中国の自動車市場で記録を打ち立てた。それゆえ、今回のハイブリッド版アコードの発売は、ホンダにとって自動車の電動化にシフトする上で重要な取り組みとなる。

日系自動車はずっと自動車の電動化に対して心理的な拒否反応を示してきたが、市場に屈服せざるを得なくなっている。今年第1四半期、广汽ホンダの販売台数は11万7900台で、前年比36.2%減だった。もしホンダが主力車種の電動モデルを推進しないならば、今後中国市場での居場所を確保するのは難しくなることだろう。

ホンダが致し方なく市場に追随していることを示すもう一つの重要な行動は、ハイブリッド版のアコードが、日系ならではの「燃料ハイブリッド」路線を捨てて、「プラグインハイブリッド」の「中国路線」に改めたことだ。同車種は日系上位三社(トヨタ、ホンダ、ニッサン)の中型自動車で初めて「プラグインハイブリッド」が採用された。日系自動車はこれまでずっと「燃料ハイブリッド」を堅持しており、そのハイブリッド技術は世界の先端を走っている。ホンダは2013年に初代i-MMDハイブリッドシステムを発表した。しかし、中国の消費者は「プラグインハイブリッド」に傾いており、データによると、2022年、中国でプラグインハイブリッド自動車は新エネルギー自動車の販売台数の22%を占め、その増加率は前年比1.5倍だった。2023年4月、その比率はさらに31.3%まで急上昇し、平均して新エネルギー自動車の3台中、1台はプラグインハイブリッドとなっている。

明らかに、フルモデルチェンジされたプラグインハイブリッドのアコードは、アコードの輝きを保ち、新エネルギー自動車のレースにおいてホンダの現状打破を実現するという歴史的使命を負っており、熱い期待が寄せられている。これに対してホンダも相応の心意気を示している。アコードのプラグインハイブリッドには同社最新の第4世代i-MMDダブルモータシステムが搭載されており、燃料を満タンにすると1000キロ以上の走行が可能であり、スマート化の方面でも向上している。

全日空が天猫と販売で提携

中国のショッピングフェスティバル「天猫618」が間もなく開催される。全日空傘下の「全日空海淘」は天猫国際と密接な提携計画に合意し、日本の特色ある新ブランドや新製品を中国市場で販売する準備をしている。今回、全日空は同社のファーストクラスのみで提供している純米大吟醸の「酒風の森」や新たなタイプの清酒である日本盛の新製品、自社オリジナルの動物ラベルの日本酒などを含む3000種以上の日本の名品を用意している。さらに、現地を訪れなければ手に入らない数々のニッチブランドも準備されており、例えば田部竹下酒造の日本酒「懸け橋」やスパークリングレモン酒の「MIKADO LEMON」、フェイスマスクの「ALFACE+」、ペット用品ブランドの「BESTIES」、ペット用化粧水の「Docpal」、オーガニックスキンケアブランドの「ROSE LABO」などだ。

コロナ禍の2020年、全日空は天猫国際に参入し、越境ECでの成長に着手した。現在、海外旅行がすでに回復したとはいえ、全日空は天猫国際を活用すれば、速やかに中国国内の消費者に接触でき、さらに海外旅行者が「オフラインで商品を見て、オンラインで購入」し、旅行先で沢山の特産品を抱えて帰国しなくてすむようにサポートできることに気づいた。

牧野フライスが武漢のアジア最大の工場で生産を開始

しばらく前に牧野フライス製作所は、武漢牧野自動車装備公司(MJC)の正式な生産開始を発表し、同社は主に立形マシニングセンタや横形マシニングセンタなどを生産し、加工分野は自動車部品や建設機械、農業機械、バイクなどを網羅しており、2025年には工作機械の生産可能台数が1500台に、年間生産高が14億元に到達する見込みだ。同工場はアジアにある5つの工場の中で最大規模を誇る。牧野フライスは1999年に中国市場に参入し、江蘇省昆山市に中国初の工場を設立した。武漢工場は20年以上の歳月を経て、さらなる中国投資によって設けられた工場だ。

武漢は中国の有名な自動車都市であり、2019年2月、中国における電動自動車(EV)生産台数の急速な増加により、牧野フライスは武漢市にMJC公司を設立することを決定した。MJCは主に中国国内の自動車メーカーに対して、EVなどの新エネルギー自動車の関連部品を製造するための工作機械を提供する。同社は中国国内市場を起点として、将来的に二期、三期の工場建設によって、中国に同社の世界的な生産および輸出基地を構える計画だ。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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