研究院オリジナル 2023年4月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容および日本企業について多く取り上げた。
中国の観光客が日本に再び殺到
4月に入って、日本航空や全日空、中国南方航空、中国東方航空、中国国際航空などの航空会社が増便を開始した。日本航空は3月26日から日中往復便を4倍に増発し、全日空は3月に中国路線の便数を昨年同期の2.5倍に増やした。このような相次ぐ増発は、中国人による訪日旅行市場が徐々に回復していることを示している。日本のメディアの報道によると、3月の中国大陸からの旅行客数は前月の2倍に増加し、7万5000人に達した。
4月下旬に、日本のアニメ映画『スラムダンク』が全国で公開された。当時同アニメを見ていた少年たちはすでに中年になっており、この世代が旅行消費市場の主要なターゲットとなっている。ノスタルジックな気持ちが中国人旅行客の日本旅行熱を急速に高める後押しとなっている。大手OTA各社(オンライン旅行会社)のホームページ上では、「訪日旅行」の宣伝や広告がどんどん増えている。
しかし、現在ビザが訪日旅行を阻む主要な障害となっており、日本の単年、3年、5年のビザはそれぞれ資格の範囲が異なるとはいえ、いずれも要求される条件が高くなっている。この他に、昨年7月から、日本政府は全国における旅行での宿泊に対して、一日あたり一人1万1000円の補助金を出しているが、これにより日本のホテルの価格が高騰し、日本に対して長らく熱い思いを抱いている中国人旅行客も「とても行けない」と感じているという。2019年、中国国内から訪日旅行を行った旅行者の数は959万人に達し、海外から日本を訪れた旅行客全体の30%を占め、これら旅行者による消費額は全体の40%に達した。以前と同じ水準にまで回復するかどうかは、現時点ではまだ分からない。
電動自動車の発展におけるトヨタの新たな構想、中国市場の「訓練兵」が世界市場に「出陣」
中国の全国乗用車市場情報連合会が公表した2023年1~3月期のメーカー卸売販売台数ランキングで、日系三強のトヨタ、ホンダ、ニッサンは程度に差があるとはいえいずれも下落したが、その中でも日産の下げ幅が最大で、39.9%に達し、トヨタは7カ月連続で下落した。この状況はガソリン自動車の時代が終焉に向かっていることを改めて示している。
日系三強はこの状況に如何に対応すべきか?2023年の上海モーターショーで、トヨタ、ホンダ、ニッサン各社は自社の最新電動自動車を展示し、中国市場における新たな方向性を示したが、特に人々が新鮮さを感じたのはトヨタの方向性だった。
トヨタはすでに、日本の自動車産業チェーンおよび日本のリソースはトヨタの全面的な純電動化へのモデルチェンジを十分に後押しできておらず、中国市場での国内電動自動車企業との競争において優勢になれないことを認めている。しかし、世界市場において、トヨタはすでに何十年も努力を重ねており、グローバル化されたサプライチェーンの配置やチャネル・ネットワーク、ブランドの知名度、政府と企業間のコネクションなどの方面で、中国企業と比べると圧倒的な優位性を持っている。トヨタの戦略は、中国市場の「訓練兵」を世界市場に「出陣」させることだ。中国市場での技術と成熟した産業チェーンを足がかりに経験と技術を蓄積し、続いて世界市場を奪取することを狙っている。トヨタ中国本部の上田達郎本部長は、「BEV、スマート運転席、自動運転技術の方面で、中国市場をトヨタの世界的な発展をけん引する駆動力にする」という考えを示した。
新たな方向性に基づいて、トヨタはかつてないほどの大ナタを振るった改革を断行しており、トヨタ中国の意思決定は、もはや以前のように日本本社部門に報告する必要はなく、また同社は中国戦略において本社の指示を仰ぐことも求められておらず、「商品とエリアを中心にした経営の新体制」が提起されている。トヨタは中国で全く新しい開発体系を築き、中国を核心としたスマート化および電動化の開発体系を形成している。トヨタ中国の中国国内におけるサプライチェーンの現地化の比率も大幅に向上しており、例えば、同社のbZ3はトヨタとBYD、中国第一汽車集団によって共同開発された車種だ。
過度に積極的な対中輸出規制、日本の半導体企業が恐れるダブルパンチ
米国の対中チップ規制戦略に呼応して、日本もしばらく前に『外国為替及び外国貿易法』を改正して、半導体の輸出規制を強化した。同規制の範囲は6種23品目にわたる半導体製造装置に及ぶ。中国メディアは日本の対応は過度に積極的だと批判した。米国の輸出規制は11種の堆積装置であるのに対し、日本は堆積装置だけでなく、さらにリソグラフィやエッチング、熱処理、洗浄そして検査の装置をも規制対象にしている。いくつかの輸出規制がかかっている品目は、「軍事的用途に使用可能な製品」の範疇を大きく超えており、そのうちの一部の装置もハイテク技術を含んでいるとは言えないものだ。例えば、枚葉式洗浄技術は90~28ナノメートルのチップに応用されている技術だ。
中国メディアによると、外向型の経済体である日本にとって、中国市場には戦略的な意義があり、中国は世界最大の半導体輸入国で、毎年の集積回路の輸入額は約6000億ドルであり、日本の半導体製造装置の輸出全体の4割を占める。現在、日本のチップ市場は需要不足であり、日本が打ち出した規制措置は日本の装置製造会社にとって打撃となる。同時に、日本が規制の「急先鋒」の役割を担ったため、日本の半導体企業は中国からの報復的な反撃措置を受ける可能性がある。
川崎重工と中国山東重工が水素エネルギーで提携
近ごろ、中国の山東重工業集団と川崎重工は東京にある川崎重工の本社で座談会を開催し、山東重工業集団の譚旭光代表取締役や川崎重工の橋本康彦社長が参加し、双方は戦略的提携をいっそう進める点で共通認識に達した。
山東重工業集団は中国では先進的な自動車および装置の製造企業であり、同社傘下の濰柴の高馬力エンジンや法士特の大型トランスミッションの売り上げは世界ナンバーワンだ。山東重工業集団は主に水素エネルギーの方面で川崎重工との提携を希望している。日本は水素エネルギーの研究において世界をリードしており、川崎重工は日本の水素エネルギー開発の分野で「フロントランナー」の地位にあり、2022年に同社は、世界で初めてクリーンエネルギーである水素を燃料とした船舶用水素ボイラーの基本設計が完成したと発表した。
中国は水素エネルギーの資源大国であるのと同時に、最も潜在力を持つ市場の一つでもあり、世界の低炭素化のトレンドに追従しており、提携によって両社の今後の見通しは好ましいものとなる。実のところ、川崎重工はこれまでずっと山東省で産業配置を実行してきた。2022年に同社は初めて30兆ワットクラスのガスタービンの国際注文を受けたが、同注文は山東省濰坊市から寄せられたものだ。川崎重工はさらに濰坊市エネルギー集団との合弁で山東浜崎動力(集団)有限公司を設立し、エネルギー装置技術の開発や末端装置の組み立て、エネルギー装置のデジタル化へのモデルチェンジなどの分野で提携する。
国内市場の飽和により、日本の宝石企業は中国市場を開拓
しばらく前に、日本の有名な宝石企業であるStar Jewelryは上海で初めて店舗を設立し、同社は2025年までに中国で5店舗を開設し、全店舗を合わせた年間販売額を10億円規模にのせられるように力を尽くすという考えを示した。
現在、日本国内の宝飾品市場は飽和傾向にあるのに対し、中国市場の購買力は非常に力強い。中国の宝飾品業界協会が発表した報告によると、2021年に、価格的要素を除いて、中国の社会消費財小売総額は前年比で実質10.7%増加し、一定規模以上の企業が有する金、銀、宝飾品類も前年比で29.8%も増加し、増加の伸びが他の品目を上回った。実のところ、Star Jewelryより前に、多くの日本の宝石企業が中国市場にすでに参入しており、例えば日本の高級宝石ブランドのTASAKIは中国国内に宝石店を約30店展開しているが、2021年末に海南省三亜の国際免税店街に設けられた免税店を含むこれらの店舗は一級および二級都市に分布している。