『必読』ダイジェスト 「中国における人口の減少は、製造大国の地位を脅かす」というのが意見の主流である。『日本経済新聞』の推定によると、中国において今後10年間に約2億3400万人が定年を迎えるのに対し、労働市場に送り込まれるのはわずか1億6600万人で、労働力は9%減少するという。このように「人口ボーナス」が消失すると、経済の推進は容易ではない。
1月31日付の台湾紙『中国時報』に掲載された「今後10年間、中国の教育ボーナスはより大きなものに」と題する記事では、「労働力の切り替えという概念から中国における人口変化の意味をしっかりと理解すべきだ」という見方が示されている。中国大陸における今後10年間の定年退職者数は2億3400万人、そしてこれらの人々に替わる者の人数は1億6600万人であるが、これは全く異なる2つの概念だ。
記事によると、この代替される2億3400万人は一般的に優れた教育を受けていない人々である。1978年末、中国大陸の人口はすでに10億人近くに達していたが、非識字率は約25%だった。そして、これら労働者の集団が、「農民工」の立場で中国大陸における改革開放初期の大規模な労働密集型産業の需要を満たしていた。そして、その後の10年間でこの人々を代替したのが、これまでと全く異なる「00後(2000年代生まれ)」世代だ。この世代の労働者は優れた教育背景を有している。中国大陸では1999年から「大学募集定員拡大政策」が実施された。2015年、中国国内の識字率は96.4%に達している。2022年には大学の新卒生の数が1000万人の大台を突破した。これら質の高い労働者はまさに、産業のレベルアップにおけるハイレベル人材需要を満たすことができる。
従って、今後10年間に中国大陸では9%の労働力が失われるが、総生産力は減らないどころか、むしろ大幅に増加することだろう。これこそ「教育ボーナス」であり、インドのみならず、米国でさえもこれには遠く及ばない。
記事で引用された米国ジョージタウン大学セキュリティおよび新興技術センターがまとめた2021年の分析報告によると、2025年までに、中国大陸の理工学科(即ち、米国の教育システムであるSTEM、つまり科学、技術、工学、数学の4つの分野)の博士課程卒業生の数は米国の約2倍になると予想されている。その時点で、米国の理工学科の博士課程卒業生の数は約4万人であるのに対し、中国大陸では7万7千に達するという。
記事は、米国の大学のレベルは依然として中国大陸を超えるもので、研究領域もはるかに先を進んでいるとはいえ、製造面での実践において、ハイエンド製造、例えば半導体産業で求められる大勢のエンジニアの方面で中国大陸が提供できる人数は米国を大きく上回っている。金融およびサービス業の急速な発展の影響を受けて、米国が養成したSTEM教育の卒業生では需要を満たすことができない。この点は米国の泣き所であり、米国が製造業の回帰を進める上での主要な障害ともなっている。
記事は、「今後10年間で、1億6600万人の優れた産業の大軍が生産に投じられることにより、ハイテク企業に対する魅力が非常に高まる」という見方を示している。サプライチェーンがインドに移転するとしても、その多くはローエンド製造又は組み立てに属するものであり、ハイエンド製造の部分においては、依然として中国大陸に極めて大きな優位性がある。
(『日系企業リーダー必読』2023年2月5日記事からダイジェスト)