研究院オリジナル 2023年4月前半、中国メディアの報道や評論は以下の日本企業および出来事を多く取り上げた。

高齢化が急速な中国が日本の製薬企業の楽園に

近ごろ、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長兼CEOは中国メディアからの取材時に、同社が今後も引き続き中国市場への革新的な医薬品の導入を積極的に推進すると語った。同社は2025年までに15品目以上の革新的な医薬品を発売する予定であり、今のところ10品目の同医薬品を成功裏に世に送り出しており、そのうちの7品目は首尾よく中国の国家医療保健目録に組み入れられている。

1994年、武田薬品工業は正式に中国市場へ進出し、その後約30年にわたる発展を経て、同社は2022年に中国市場でベストテンに入るグローバル製薬企業になったが、同社はそれだけでは満足していない。巨大な人口基数と急速な高齢化により中国は、世界のすべての製薬企業にとって経営戦略の要衝となっている。2022年5月、同社は2021年の財務報告を公表すると同時に、中国市場を初めて「成長市場と新興市場」を兼ね備えた市場に格上げし、同社にとって中国は日本と米国に続く3番目に大きな独立国の市場となっており、その重要性はさらに大きくなっている。同社の目標は2030年までに、中国市場を自社にとって世界第2位の市場にすることだ。

中国は市場というだけでなく、さらにイノベーション医薬品の臨床研究の肥沃な土地でもある。2022年6月、武田薬品工業は自社のアジア太平洋開発本部を正式に上海市浦東に設立することを発表し、このことは同社の中国における開発戦略の全面的なアップグレードを象徴している。現在、武田薬品工業は中国で多くのイノベーション医薬品の臨床研究を行うことができる。

JOLEDの破産は中国に対する大きな贈り物

3月末に、JOLEDの破産が正式に発表された。同社の負債額は337億円に達し、2023年時点で日本における最大規模の破産案件となった。同社は2015年に、ソニーとパナソニックのOLEDパネル部門の合併によって設立され、日本のOLEDパネル業界発展の希望と目されていた。

OLEDの産業配置において、JOLEDは自社の独自性を有していた。韓国が推奨する蒸着法とは異なり、同社は主に生産コストがより低い印刷OLED技術の開発に注力し、OLEDにおける韓国の独占的な地位に対して挑戦した。しかし、同社は安定した生産の面で常に困難に直面し、コストおよび時間が想定を超えた。

ディスプレイの新技術の開発は往々にして周期が長く、大きな投資が伴うため、JOLEDのように全体的な規模が限られ、大株主がかなり保守的な企業には向いていない。中国メディアは、JOLEDの破産は日本のパネル産業の終焉を宣告するものだが、中国企業にとってはチャンスとなるという考えを示した。なぜなら、中国も印刷OLED技術の路線を選択する意思があるからだ。JOLEDの破産は巨大なライバルが減ることを意味するだけでなく、さらに、JOLEDの開発力が日本のパネル企業であるJDIに引き継がれた後、JDIは次に中国企業の惠科との提携を計画しており、JDIのeLEAP OLED技術を用いるウェハ工場を建設し、2025年に量産を実現することを目標に掲げている。

中国には資金が潤沢で、威勢の良い業界大手の企業が多く、印刷OLEDの分野ですでに一定の産業基盤を備えている。例えば早くも2012年に、BOEは17インチ印刷OLEDディスプレイを発表し、TCL華星もJOLEDの株主になり、生産ラインに大規模な投資を行った。業界では、JOLEDが去った後、中国企業が印刷OLEDの量産・商業化の最も大きな希望になるという見方がある。

監督管理の圧力によりソフトバンクはアリババの株式を売却、ほぼ投げ売り

メディアの報道によると、ソフトバンクグループは自社が所有するアリババ株の大半をすでに売却したという。今年2月、アリババが出した公告によると、ソフトバンクが所有するアリババの株式は、同社の役員に名を連ねる上で必要とされる15%のラインを下回ったため、ソフトバンクはアリババでの取締役会における立場を失った。昨年、ソフトバンクは記録的とも言える290億ドル相当のアリババ株の売却を断行した。20数年前、馬雲氏と面会し、会談してから数分もしないうちに、一時日本一の富豪だった孫正義氏はアリババに対する2000万ドルの投資を決定し、投資回収率が何千倍という投資神話を作った。

ソフトバンクは、アリババの株式を売却した理由についてはっきりと答えていないが、不確実なビジネス環境に対応するための「防衛策」であることだけは示しており、業界内では、監督管理の回避か現在の危機の解消が関係している可能性があるという見方がある。昨年以降、中国政府はアリババに対する監督管理を引き続き強化している。今年3月末に、アリババは重大な再編を実施することを発表し、この再編はアリババの創業24年以来最も重要な組織改革と見なされており、今回の改革は過去のアリババがもはや存在しなくなることを意味する。

RCEPのボーナスを十分に享受するべく、日本の農産物企業は積極的にEコマースモデルに転換

日本の特色ある農産物は中国でも人気が高い。『地域的な包括的経済連携協定(RCEP)』によると、中国は日本の農産物1273種に対して段階的に関税を撤廃しており、日本からの農産物全体の約86.6%を占める。日本の水産物、加工食品、特色ある酒類などにもゼロ関税待遇を供与するという。RCEP発効の初年、日本の清酒、焼酎、ホタテ貝などの商品に対する中国入国時の関税を以前の40%から36%に下げている。日本酒造組合中央会(JSS)の最新データによると、2022年の日本から中国への清酒の輸出額は141億6400万円で、2位米国の109億3000万円との差をさらに広げ、中国への輸出額は現在、日本の清酒輸出総額の約30%を占めている。

ビジネスチャンスは限りないとはいえ、日本企業からすれば、中国の消費者の消費習慣は日本の消費者のそれと異なり、特に現在中国ではオンライン販売が主力であり、販売手法が尽きることなく次々と現れており、日本企業もついて行けない状態だ。新たなEコマースプラットフォームや中国の消費者の消費習慣に合わせて、如何に継続的に調整や連携を図るか、この点こそ日本の農産物企業が直面している課題であり、日本政府と関連組織もこれに対して積極的に行動している。

しばらく前に、日本貿易振興機構(JETRO)の上海事務所は国税庁と共同で、JETRO史上最大規模の日本産酒類BtoBマッチングイベントを上海で開催した。元々の計画では50カ所のブースが設けられる予定だったが、同イベントの情報が発表された後、参加を希望する企業が続々と現れたため、ブースの数を当初予定数の1/3以上増やした。同イベントでは日本企業、輸入業者、蔵元など68社が1000種類以上の日本産酒類を持ち込み、新商品や新しい味の商品、爆発的な人気を誇る酒類も少なくなかった。

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