『必読』ダイジェスト 超人口大国である中国とインドにとって、2023年は中国の人口がゼロ成長になる可能性があるという特別な年であり、インドは今年4月に中国に代わって人口1位の大国になると予想されている。

また、昨年はインドの方がよく話題となった。
まず、経済だ。昨年のインドの1〜3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比7.7%増で、世界10大経済体の中で第1位だったが、中国は3%だった。国際通貨基金(IMF)の予測によると、昨年のインドのGDP成長率は7.4%に達し、世界平均を大きく上回った。

次に、産業だ。日本経済新聞社の中国語サイト「日経中文網」は、昨年のインドの新車販売台数が少なくとも425万台(最終予測は440万台)に達し、日本の420万台を抜いて世界第3位の軽自動車販売市場になると報じた。

インドの自動車販売台数は過去2年連続で2ケタ増となり、世界1位となっている。生産台数は、インドが昨年初めて500万台超を生産し、世界4位となった。

自動車産業だけでなく、電子製造産業も存在感を高めている。

アップルは中国のコロナ対策によってiPhoneの生産能力が低下したことを受け、最新のiPhone14の生産ラインの一部をインドにシフトした。このことをきっかけに、中国の産業界では、iPhoneは中国から離れていくのではないか、という大きな議論が巻き起こった。

現在のインドにおけるiPhoneの実質生産能力は約5%。JPモルガンの予測によると、2025年までにインドで生産されるiPhoneは世界での生産の約25%を占めるとみられている。別の有名ベンチャーキャピタルは、今後5年間でこの数字が35〜40%に上昇するとみている。仮にインドが30%の生産能力の増加分を飲み込めば、その中の主な部分は中国の口から吐き出すしかない。

実際、中国とインドの力関係、製造業シフトなどの話題については、やや古い話になってしまっているが、今日、もう一度整理する必要がある。インドの産業経済発展の構想はいったい何なのか。なぜインドの方が中国よりも警戒すべきなのか。

インドの輸入代替

2014年からモディ政権は国内のナショナリズムに迎合し、輸入関税を引き上げることで中国からの輸入品を抑え、外国企業を誘致して輸入代替を図るようになった。

そう、インドは中国が輸入代替によって台頭するという古い道を歩んでいるのだ。

後発産業大国にとって、輸入代替は以下の2つの面で役割を果たす。1つは、「市場と技術を交換する」またはM&Aなどの形で輸入品の大規模な現地生産を完結することだ。2つは、サプライチェーン分野が生まれることだ。

多くの人はハイテク企業の工場が自国に拠点を置くことの意味を理解していないだろう。数万人の雇用を創出するだけでなく、その国のサプライチェーンを間接的に高度化する「スピルオーバー効果」を生み出すことに最大の意義がある。

アップルは世界1位の科学技術企業だが、同社の産業チェーン(中国では通称「フルーツチェーン」)の一員になるためには、まずサプライヤーが業界TOP5を達成しなければならず、またアップルのほぼ「変態」というべき技術的要求に直面しなければならず、一部の要求は業界トップの量産技術の水準を上回ることもある。次に、アップルはサプライヤーとともにデバイスを研究開発しており、両者間の多くの特許には「クロスライセンス」が存在する。アップルの指導と厳格な要求のもと、現地のデバイスメーカーは、巨大なイノベーションの可能性を探ることによって、細分化された分野の輸入代替を完成させることができる。

この点で、インドは中国を成功例と見ている。

京東方(京東方科技集団、BOEテクノロジーグループ)はサムスンのOLEDパネルの独占を打破し、今では世界の液晶パネル市場の4分の1を占めている。舜宇光学科技は大立光電(大立光電股份有限公司)や玉晶光電(玉晶光電股份有限公司)などの中国台湾メーカーを抜いて、iPhone14の広角7Pレンズのサプライヤーとしては最大規模になった。

一方、中国サプライヤーの製造能力と研究開発能力の進歩により、中国の新興科学技術企業はハイエンド製品の設計、ルート及びコア技術の研究開発に専念する力を持つようになった。例えば、シャオミ(小米)のエコチェーンにあるスマートブレスレットやセグウェイ、空気清浄機、DJIのドローンなど、製品に含まれる多くの高品質部品はアップルの産業チェーンにおけるメーカーからのものだ。

だから、2014年にインドは高関税によって、企業が組み立てから部品、高付加価値デバイスに至るまで、インドに工場を段階的に移転せざるを得ないようにすることを目的とした「段階的製造プログラム(PMP)」を提案した。一方、産業規模が最も大きい携帯電話業界はPMPの第一歩であり、その後、家電やカメラなどの分野にも広がっている。

例えば、インドのノイダ(New Okhla Industrial Development Authority、NOIDA)には、すでにOPPO、サムスン、伝音科技(トランシオン)などの携帯電話メーカーや巨大なサプライチェーンが集積している。生産ラインも簡単な組み立てから、バリューチェーンの高いSMTパッチへとアップグレードしつつある。サムスンや華星光電など携帯電話向けパネルの生産ラインの一部もすでにインドにシフトしている。

インド携帯電話・電子機器協会のデータによると、PMP実施後、インド本土の電子産業の生産額は2016年の371億ドルから2020年には750億ドルに倍増した。

だから、アップルが中国から生産能力の一部をシフトする機会を、インドが逃すことは決してあり得ない。

特筆すべきは、現在のインドの最大市場は依然として国内がメインで、輸出額はGDP総額の12%程度にすぎないが、中国の最高期の輸出比率は30%を超え、ベトナムはさらに90%を超えている。輸入代替によって自国製品が国内需要を満たすようにし、その後貿易障壁を徐々に崩していき、輸出に弾みがついた時こそ、インドが本格的にテイクオフする時だということだ(続く)

(『日系企業リーダー必読』2023年1月5日記事からダイジェスト)

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