『必読』ダイジェスト 1月4日に英『フィナンシャル・タイムズ』中国語版サイトに王丹氏のエッセーが掲載された。その主な内容を以下のように抄訳する。2022年の年末、ネット上のホットニュースの一つが、「この一年、インターネット業界においてここ10年で最も大掛かりなリストラが行われたこと」であった。しかし、より重要な問題は、「インターネット業界が中国の労働市場を代表するか否か」である。インターネット業界が再び拡張期に入れば、中国の雇用圧力はこれにより緩和できるのか。
インターネット業界のリストラの影響は限定的
市場は通常、インターネット業界のリストラの影響を誇張する。IT産業(インターネット、電信、ソフトウェア、情報技術などの業界)が国民経済に占める割合はとても小さい。中国インターネット業界の最新データによると、2021年の中国インターネットのトップ100企業の従業員数は164万で、全国の雇用の0.3%に過ぎない。インターネット業界の経済への直接的影響も限定的である、2021年、中国トップ500企業のうち、インターネット企業はわずか12社で、トップ500企業の収入全体の2.8%を占めている。GDPに対する直接的貢献は2.2%だ。インターネット業界の現在の失業状況について知るすべはないが、リストラ規模を30%で推算したとしても、影響を受けた労働力はほぼ50万である。そのうちの多くが高学歴人材だ。2020年、IT業界の就職者のうち、71%が専門学校ないしは専門学校・大卒以上の学歴で、教育レベルが最も高い業界の一つである(金融業とほぼ同じ)。
事実上、IT業界はいまだ中国で人材が最も不足している分野で、リストラ圧力は一時的なものだ。ITはコロナ禍以前、ずっと成長が最速の業界であった。2021年、統制強化という背景のもとでも、ITの新規就業者数は32万にも達していて、前年同期比7%増であった。2022年にはトップ企業のリストラが大々的に行われたものの、大量の中小企業、スタートアップ企業が新たな就業ポストを提供している。
軽視されている建築業と製造業
2023年、雇用問題が最も深刻となるのは、建築業と製造業であろう。2020年、IT業が創出した新規雇用数は1130万人で、中国の総雇用数の1.7%を占めていた。製造業はその9倍、建築業はその6倍の雇用を生んでいて、あわせて中国の雇用の29%を占めている。この二つの業界の平均教育レベルは比較的低く、製造業のうち62%の被雇用者の教育レベルが中卒以下で、建築業では76%に達する。これは、ひとたび業界が縮小すれば、大部分の労働者の転業教育の難易度が非常に高いことを意味している。
建築業はインフラ整備と不動産建設に依存しており、拡張の余地はもはやかなり小さい。2023年には地方政府の財政状態の影響を受け、インフラ整備が力を発揮する余地はあまり大きくないだろう。不動産は2023年には部分的なリバウンドがあるだろうが、2016年頃の繁栄を取り戻すことはありえない。この二つの業界はコロナ前から縮小し始めていたが、当時は上向きの消費市場が生み出した大量の低技術サービス業の雇用があり、多くの転業した産業労働者を吸収した。例えば、2019年に建築業の雇用者数は440万減少し、製造業は346万減少したが、個人経営の卸売り・小売業で778万の新規雇用があり、ホテル・飲食業界で262万の新規雇用があった。
しかし2023年には、サービス業はもはや十分な産業労働者の雇用を受け入れるポストを提供することはできないだろう。住民所得と財産の縮小が消費の復活に影響し、都市サービス業の全体需要に影響を与えている。新たに提供されるポストはコロナ禍以前には及ばないと思われる。
製造業の雇用の苦境は、産業アップグレードや外需の低迷に由来する。中国の製造業は2013年にピークに達した後、雇用は年を追うごとに減少している。ますますコスト高となる労働力に替えて、オートマチック化やロボットの広範な利用が進むだろう。
もう一つの制約要素は外需の不足だ。世界的な経済衰退のため、欧米の需要は2022年下半期から下落を始めている。さらに産業チェーンの再配置がある。地政学的衝突がもたらす関税や制裁のリスクを避けるため、グローバル企業はグローバル産業チェーンの再配置を真剣に考慮し始め、少なくとも一部の生産ラインを中国本土からその他の市場へと移そうとしている。この直接的な結果こそが、国内の雇用の減少である。
ローエンド産業チェーンの外部への転出も続いている。生産の最終段階をその他のアジア国家に移す選択をする企業がどんどん増えている。最大の受益者はASEAN諸国で、現地の比較的ローコストな労働力を利用でき、同時に関税を回避できる。
(『日系企業リーダー必読』2023年1月5日記事からダイジェスト)