研究院オリジナル 2023年2月後半、中国メディアの報道や評論は以下の日本企業および出来事を多く取り上げた。
米国による対中チップ包囲網は日本企業にとって災難かそれともチャンスか?
1月に米国政府とオランダおよび日本の両政府は、チップの製造・生産において対中包囲網を構築することで合意し、日本は2023年の春に規制を実施することで妥結したと発表した。メディアによると、その規制にはニコンと東京エレクトロンも含まれる。しかし、その後まもなく、中国企業である上海積塔半導体公司の設備入札で、ニコンがDUV露光装置を、東京エレクトロンがコータ・デベロッパをそれぞれ受注した。露光装置の大手企業であるオランダのASMLは収穫がゼロだった
中国市場は世界最大の半導体チップ消費市場であるため、日本企業にとって捨てがたいはずだと中国の言論界は見ている。キャノンやニコンはいずれも伝統ある露光装置の企業だが、米国や欧州にずっと抑えつけられていたため、ASMLにまでも追い越されてしまった。ニコンやキャノンはこれまでずっと中国市場で積極的に営業を展開するも、ASMLから市場シェアを奪う上で困難に見舞われていたが、ここにきて日本企業にも新たなチャンスが訪れたようだ。ニコンにはさらに多くの注文が舞い込む可能性があり、キャノンも中国市場でさらに多くの顧客を開拓する意思を示している。
消費者を混乱させる中国と日本の2つの無印良品
最近、無印良品(上海)商業有限公司が北京無印良品家居用品有限公司を商標権侵害で提訴していた裁判の第二審判決で北京の無印良品が敗訴した。上海無印良品は2005年に良品計画が中国市場に設立した子会社であり、北京無印良品は北京綿田紡績品有限公司の持株会社だ。両社は商標の問題により長年裁判で争っている。
実のところ、問題は主に商標登録の類に属するものだ。北京綿田紡績品有限公司は第24類商品(綿織物、タオル、シーツ、掛け布団など)の中国語簡体字「无印良品」の商標を有する。しかし、上海無印良品は第16類、第20類、第35類における「无印良品」(商品サービス項目はティッシュペーパー、家具、広告販売などを含む)の商標権を持つ。2019年、北京無印良品が日本の無印良品を商標権侵害で提訴し、日本の無印良品が敗訴した後、同社は第24類商品の名称を簡体字の「无印良品」が入った「无印良品MUJI」から「MUJI無印良品」に変更した。
このような情況により、消費者の間では両社が入り乱れて区別がつかなくなっている。ECプラットフォームで「无印良品」と検索すると、検索結果には「无印良品MUJI公式旗艦店」と「无印良品旗艦店」が表示されるが、前者は日本のmuji無印良品に属し、後者は北京綿田紡績品有限公司が運営している。オフラインでは、両社の装飾やパッケージは酷似している。
中国における花王の人事異動は長年抱える問題の解決となるか?
花王グループの公告によると、3月24日付で西口徹氏が中国董事会主席兼総裁を退任し、竹安将氏が後任を務める。世論は、今回の花王の人事異動により同社の中国での運営戦略にも変化が生じると見ている。
花王が正式に中国に進出してから、すでに30年もたつが、進出直後から現地化の速度が遅く、中国市場における販売や営業モデルに通じていなかったため、最初の約20年間は赤字を計上し続け、2011年に上海家化集団と提携してからようやく好転の兆しが現れた。
資生堂やコーセー、ポーラといった日本の同業他社とは対照的に、花王は中国における高級スキンケア製品消費の最盛期に乗り遅れた。2021年3月に、花王は正式に高級ブランド「SENSAI」を中国市場で販売することを発表した。そして同年9月、中国最大のオンラインショッピングモールである天猫(Tmall)に旗艦店を開設した。しかし、SENSAIは今に至るまで、免税店以外のオフライン店舗がなく、同ブランドの広告や宣伝も時代遅れ感が否めない。これまでと同様に従来の制作技術とカルチャーなどの方面に重きを置くことは、現在の消費者を納得させるためのカギではない。中国メディアは一様に、花王は歴史文化の蓄積と科学研究能力に欠けているわけではないが、同社が中国市場で抱える問題は、やはり相変わらず、如何に中国市場で現地化を図ることができるかだと見ている。
ファナックが上海に設けたロボットのスーパー工場
上海市宝山区に位置するファナックのスマート工場の第三期プロジェクトが年内に完成する見込みだ。同プロジェクトはファナックと上海電気集団が共同で手掛けているもので、敷地面積が431ムー、総建築面積は30万平方メートルであり、ファナックが日本以外の国で所有するロボット基地としては世界最大だ。同基地は今後、世界の先端を行く工業ロボットやスマート機械製品、対応するIoT、AIなどのスマート製造技術およびサービスを提供する。現在、中国は世界最大の工業ロボット市場であるのと同時に、アジア最大のロボット採用国だ。中国ロボット産業連盟のデータによると、2022年1~12月に全国の一定規模以上の工業企業での工業ロボットの累計完成生産台数は44万3000台で、9年連続で世界最大の工業ロボット消費国となった。