『必読』ダイジェスト 消費は依然として不振であり、中国の社会消費品小売販売総額が2カ月連続下落する事態が起きている。2022年12月15日、国家統計局が発表したデータによると、11月度の社会消費品小売販売総額は3兆8615億元で、前年同期比で5.9%下落したが、10月度の下げ幅はわずか0.5%だった。1~11月の社会消費品小売販売総額は39兆9190億元で、前年同期比0.1%の下落だった。
12月8日、米国の調査会社、マッキンゼー&カンパニーが発表した中国消費者レポートによると、新型コロナウイルス感染症の影響下で、「中国の消費者は出費に慎重になっている」
マッキンゼーは2005年から定期的に中国の消費者動向を調査し、2年に1度レポートを発表している。今回の調査は、2022年7月に中国の44都市とその周辺農村部のおよそ6700人を対象に調査したものである。
マッキンゼーレポートによると、コロナ禍の影響で57%の回答者が「不時の必要に備えてある程度のカネを蓄えたい」と希望しているが、この数字は2014年以来最高であり、2019年の調査結果に比べて9ポイント高かった。
この調査から、中国の消費者の62%が今年の支出を昨年並みとすることが明らかになっている。2019年にはこの比率は47%だった。また16%の消費者が今年の支出を昨年比5%増とする回答しているが、この比率は2019年には32%だった。さらに、2022年と2019年に、支出削減と回答した消費者の割合は22%だった。これはさらに多くの消費者が2022年の支出を変えはしないが、出費を増やしもしないことを意味している。
同調査から以下の点も明らかになった。出費を抑制するために高所得層(世帯年収が34万5000元超)は買い物頻度を減らすことを選択し、低価格帯のブランドあるいは商品に鞍替えすることはせず、比較的に低所得な消費者(世帯年収8万5000元以下)もまた生活の質は維持し、社区(コミュニティー)の団体購入やネット通販等の方法に切り替え、割引商品あるいは同一ブランドの低価格ラインの製品に乗り換えている。基礎化粧品を例に挙げると、ハイエンド基礎化粧品ブランドがスターター・キットの商品をネット通販で販売する場合、値引きや「一つ買ったら一つおまけ」等の販売方式で50%近い割引価格で販売した。
マッキンゼーのグローバル理事・パートナーの許達仁氏は、「消費者は非常に賢くなり始めており、お気に入りの商品やテクニカル・スペックがどのように研究されて来たかを良く知っている」とした上で「以前はブランド力による販促や宣伝が消費者に大きな影響を与えたが、今では消費者が個別の商品の効能がどこにあるのか追究し始めている」と語っている。
将来展望について、マッキンゼーのシニア理事であるダニエル・ジスパー氏はかなり楽観的で、「中国の消費の勢いは2023年には盛り返し始める」と考える。同氏は次のように解説した。今年、コロナ禍によって中国人は貯蓄を促され、2022年前期9カ月に中国国民の貯蓄残高は14兆元に増加し、インフレ率は欧米、欧州を下回る2%台を維持している。同氏は「この貯蓄が将来的な消費の伸びの基礎になる」と考えている。
また同レポートは次のように予測している。2025年までに、中国の上中流階級(世帯年収が16万元超)が7100万世帯増加、その総数は2億90万世帯に達し、中高所得層、高所得層の世帯が占める割合は2021年の39%から54%に上昇している。全社会の所得構造に質的な変化が起き、非常に良好な消費の基礎が形成されていると思われる。
またジスパー氏は次のように認識している。マッキンゼーによる中国の中長期的な見通しは極めて楽観的だが、消費者マインドが2023年のどの時点で反発するのかについては彼らも予測困難である。同氏は「短期的に見て、企業はさまざまな状況に備える必要があり、情勢が好転すれば、消費者は蓄えたカネを消費に振り向けるのは可能性が強い」と考えている。
(『日系企業リーダー必読』2022年12月20日記事からダイジェスト)