『必読』ダイジェスト ドイツの日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』は2022年12月8日、「中国は独自のロボット帝国を構築中」と題する記事で、中国の産業用ロボットの優位性を高く評価している。要約は以下の通り。

中国では、ときに工業革命が静かに進行する。東部港湾都市の青島市に本拠を置く家電メーカーのハイアール・グループは、「自社工場をまもなく完全に自動化する」と発表した。顧客が新しい洗濯機のカラーをピンクに選択し、氏名と家族の写真を書き加えると製品カスタマイズの準備が整う。ロボット・アームが部品棚から顧客の指定したそれぞれの部品を選んで洗濯機を組み立てるという流れだ。選択できる組み合わせは50種類に及ぶ。

その速さは人の作業スピードをはるかに凌駕する。ハイアール社によれば、ロボットは組み上がった製品の排水・脱水機能をわずか4分間で検査できる。自動化前、この作業は三人の手が必要で、10分間かかっていた。ハイアール社が製造した洗濯機はドイツの評定で優秀な点数をとっただけでなく、価格もほとんどの競合製品より安い。

実際、「工業革命4.0」――生産工程のロボット化――が中国の生産現場にもたらした革新は他のどの国よりも大きかった。昨年、中国の産業用ロボットの販売台数は、世界の他の地域の合計とほぼ同じだった。中国は経済の自動化でドイツや日本などの高所得国を追い上げ、最新データによれば、西側の多くの経済大国の先を走っている。

国際ロボット連盟(International Federation of Robotics)が先ごろ発表したレポートによると、中国では、現在、従業員1万人あたり322台のロボットが配備され、世界最大の経済大国である米国の274台を上まわっている。

人口学者はここ数年、「中国は、今後、輸出用商品の生産ラインに配置すべき何億人もの職工を出稼ぎ労働者に頼ることができなくなる」と警告してきた。ロボットは人の労働を代替し、生産性を向上させることができよう。

自動化のトップを走る韓国は、従業員1万人当たりのロボット数で中国の3倍を誇る。しかし世界の工場を自認する中国も自動化ランキングで5位につけ、韓国につづくシンガポール、日本、ドイツの後を追う。

この10年、自動化の進展を注意深く見守ってきた企業管理コンサルタントのゲオルグ・スティラー(Georg Stiller)氏は、「中国の工場に装備されたロボットの数には驚くべきものがある」と述べ、「中国は強大な製造基地だ」と指摘する。

多くの中国企業が過去2年間、産業用ロボットを大量発注した理由の1つに、半導体が世界的に不足し、正確な納期がわからないことがある。一部のメーカーは、「中国でロボットの販売台数は来年減少する可能性がある」と予測する。「しかし、世界4大ロボット・メーカーと国内メーカーから得たデータによれば、販売台数の増加は確実で、それは2022年第3四半期まで続く」とする。

一部のメーカー、たとえばスイスのABBロボティクスなどは、今春、上海工場で6週間操業停止したが、同社は、最近、上海浦東新区に最先端工場を立ち上げた。中国で上海電気との合弁会社を有する日本の産業ロボット製造の最大手ファナックは、中国の他の地域にも生産拠点を持っているため、コロナ期間中にもかかわらず前年比40%の売上増を達成した。

産業ロボットは人間の労働よりも信頼性がある。しかし、複雑な作業工程でロボットは未だ人の精緻な能力に及ばない。スティラー氏は、「欧州の家電メーカーでも多くの組立工程では依然として人力に頼る部分が多い」と語る。それは、「ロボットを使って新製品を立ち上げるためには、その都度、長い時間をかけて複雑なプログラムを組み直さなければならないからだ」と指摘する。

こうしたなか、国内のロボット・メーカーは仕事量の多い単純作業の自動化に注力している。たとえば世界でもっともカフェが多いことで知られる上海市では、深圳に本社を構える越疆科技有限公司がカウンターの内側で仕事をするスタッフをロボット・アームに置き換える準備を進めている。同社のロボット・アームは香り高いカプチーノを迅速に抽出できるだけでなく、アイスクリームまで作ることができるのだ。

(『日系企業リーダー必読』2022年12月20日記事からダイジェスト)

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