『必読』ダイジェスト この2年間、サプライチェーンの寸断、海運・石油価格の高騰、金融緩和、農産物価格の上昇、消費の低迷などが、世界経済と中国経済に交互に打撃を与えてきた。こうした外部環境の変化は、上場企業の業績、ひいては時価総額に必然的に反映され、上昇したり低下したりした。

財経データを研究するネットメディア『読数一幟』がA株、香港、米国の中国上場企業の業績データを調べたところ、2021年には中国で最も儲かっている上場企業の構造はおおむね変わらず、金融企業が依然上位の座をキープし、全体的な利益規模は引き続き拡大していることがわかった。

その間、いくつかの興味深い変化が見られた。例えば、アリババ(阿里巴巴)が脱落し、同時に2匹の「ダークホース」――中国石油(ペトロチャイナ)と中遠海控――が出現した。この2社は過去しばらくの間、エネルギー価格の上昇とサプライチェーンの逼迫の受益者で、前者の純利益の伸び率は4倍近く、後者の純利益の伸び率は8倍に達した。

以下の表は、2021年に最も利益をあげた企業10社の利益と時価総額の推移を示している。



一、利益の3分の1近くを上げたのは上場企業の0.2%未満

2021年に最も利益をあげた企業10社の純利益の全上場企業の利益に占める割合は33%で、今回の『読数一幟』の統計の範囲に入った上場企業数は5787社に上る。0.2%未満の上場企業で利益の3分の1近くを上げたことになる。

ただ、上場企業5787社すべての2021年の純利益総額は5兆6600億元で、2020年の4兆7600億元から18.7%増加しているのに対し、上位10社の2021年の純利益総額の伸び率は6.4%に過ぎず、上位10社の「ヘッド効果」が弱まっていることを意味している。

別の角度からもこの点は反映されている。2021年に最も利益をあげた企業10社の純利益が全上場企業に占める割合は33%で、2020年の36.6%に比べて3.6ポイント低下した。

二、全体的な時価総額規模の縮小

業績が順調に伸びているのとは対照的に、最も利益をあげた企業10社の時価総額規模が縮小していることは印象的だ。統計によると、最も利益をあげた企業10社の最新の時価総額は11兆9000億元(4月13日現在)だが、コロナ禍前の2019年末時点では13兆8000億元で、2年余りで時価総額は約2兆億元縮小し、14%の減少となった。

時価総額の減少を招いた原因は総合的なもので、マクロ経済の成長という要因と、業界への規制強化がある。また、市場の流動性状況の変化によって引き起こされた時価総額の変動もある。世界的なエネルギー価格と食料価格の高騰、米国内のインフレの深刻化は、米連邦準備制度理事会(FRB)に利上げとテーパリングのペースを加速させ、市場の流動性逼迫が深刻化することになるだろう。

三、アリババの脱落と「ダークホース」時代

2021年に最も利益をあげた企業10社ランキングで注目すべき出来事といえば、アリババがトップ10から退いたことだ。

中国最大規模の電子商取引プラットフォームであるアリババの経営は、過去2年間、少なからぬ課題に直面してきた。2021年の純利益は654億元にとどまり、2020年の純利益1590億元より59%大幅に減少した。2021年の業績は2017年に逆戻りしたことになる。

ランキングを見ると、2020年のアリババの純利益は6位だったが、2021年は15位に順位を落とした。

アリババが脱落した際に、中遠海控と中国石油の2頭の「ダークホース」が出てきた。

中遠海控(中遠海運控股股份有限公司)は中国最大の国有遠洋運輸企業であり、サプライチェーン逼迫の受益者だ。2021年、中遠海控は過去最高の業績をあげ、売上高は前年同期比94.85%増の3337億元に達した。純利益は893億元で、2020年同期比で8倍以上増加した。2002年から2020年までの19年間の純利益の合計は約300億元で、2021年の1年間で稼いだ金額は過去19年間の合計の約3倍に相当する。

中国石油は世界的なエネルギー価格上昇の恩恵を受けている。2021年の国際原油価格は上昇基調となった。ICEブレント原油のスポット価格は年間平均で前年同期比69.7%増の1バレル当たり70.7ドルだ。中国国内では2021年に15回連続で原油価格を引き上げた。原油価格の上昇により、中国石油は2兆6000億元の営業収入、921億7000元の純利益をあげ、国内の石油・ガス業界の昨年の「吸金王(荒稼ぎの稼ぎ頭)」となった。

四、国有大銀行がトップに君臨、イノベーション・エコノミーの色彩は薄い

利益をあげた企業ランキングの上位10社は、銀行5社、保険1社の6社を金融機関が占めた。そのうち上位3行はすべて国有大手銀行だった。

利益を最もあげている企業10社のうち、8社が銀行、保険、中国石油などの国有企業だ。中国平安は混合制企業(国有株の割合は低くないが、絶対的な持株ではない)で、純粋な民営持株企業はただ1社(騰訊:テンセント)だけで、中国経済の基本はあまり変わらない。それはつまり、国有企業、従来型経済の「天下」ということだ。一方、騰訊を代表とする民営経済、イノベーション経済関連企業はわずか1社しかなく、現在の中国のイノベーション型経済の規模と質が不十分であり、上場企業全体に占める割合がまだ足りないことを物語っている。

(『日系企業リーダー必読』2022年4月20日記事からダイジェスト)

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