『必読』ダイジェスト  4月14日、15日、中国の電動自動車メーカーの代表格である小鵬汽車の何小鵬代表取締役とファーウェイ(華為)コンシューマー事業部およびスマート自動車メーカーBUでCEO(最高経営責任者)を務める余承東氏が相次いでソーシャルメディア上に、「上海で操業と生産が再開できない状態が続くならば、5月には中国の全ての自動車完成車メーカーの操業と生産は止まってしまうし、自動車産業のみならず上海のサプライチェーンに関連する全ての科学技術・工業産業で全面的に生産が止まってしまう」とコメントした。

チップ不足

自動車業界に対するチップ供給不足の影響はもはやおなじみの話題だが、2年たった今でも、新型コロナウイルスの拡大がもたらした自動車メーカーを悩ますこの問題は未だもって改善されていない。

チップ半導体業界は環境とサプライチェーンの影響を受けやすい巨大な産業であり、さらに技術的問題の複雑さを合わせると、生産周期が過度に長く、増産における難易度も非常に高い。これも2020年初頭より新型コロナウイルスが世界で大流行してから、チップ不足が一向に改善されないことの根本的な原因だ。

サプライチェーンの波及作用の下、チップ不足はすでに自動車や電子、さらには家電業界にまで影響を及ぼしている。これらのうち、自動車業界は影響を最も受けている業界の一つだが、これには自動車業界に元から存在する「分割およびサイクル」によるチップ購入方式が関係している可能性があり、例えば3カ月繰り上げてチップメーカーに注文を行っているが、その目的は在庫を減らし、臨機応変に操業するためだ。

従来の自動車業界がこのような状態ならば、電動自動車はもちろん言うまでもない。

原材料の値上がり

電動自動車の原材料のうち、動力電池は電動自動車のコストの主要な部分を占める。チップ不足によりチップ価格が上昇しているとはいえ、自動車生産においてそれが占めるコストの割合は限られており、むしろリチウム価格の継続的な上昇こそ、主要メーカー数社が値上げをせざるを得ない根本的な原因となっている。

リチウムの採掘はもともと容易ではない上に、そこに複雑な国際的な地政学的背景と環境保護問題が絡んでいるため、産出量が今後もニーズに応じて増加し続けていくとは考え難い。電動自動車業界にとって、炭酸リチウムは決して唯一値上がりした原材料というわけではない。ロシアはパラジウム、プラチナ、銅といった金属の主要な産出国であり、ロシア・ウクライナ戦争の勃発により大口商品の価格が不安定になり、電動自動車産業における原材料の供給に直接的な影響を及ぼしている。

サプライチェーン危機

産業全体を長期的に悩ます可能性がある前述の2つの問題よりも、新型コロナウイルスの封鎖コントロールによる生産停止の方が電動自動車企業にとっては切迫した危機だ。

何小鵬氏と余承東氏のコメントにより、新型コロナウイルスが産業全体に与えている影響をみんなが理解できた。実のところ、4月より前に幾つもの自動車メーカーが生産停止に追いやられており、例えば従来型自動車メーカーでは、3月に一汽グループが一汽トヨタ、一汽フォルクスワーゲンを含む長春の五大自動車工場での生産を全て停止することを決定している。テスラの上海工場も、新型コロナウイルスの影響により生産を停止せざるを得なくなった。蔚来汽車のこれまでの話によれば、吉林や上海、江蘇など複数の地域の協力会社が相次いで生産を停止したため、同社の自動車生産も一時休止しているという。

チップの供給不足、原材料の値上がり、さらに産業チェーン企業の生産停止というこれら3つの要素が重なり、互いに影響し合うことこそ、今成長期にある中国の電動自動車業界にとって、骨身にこたえる苦痛なのかもしれない。

(『日系企業リーダー必読』2022年4月20日号 ダイジェスト)

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