陳言/文 東京の田町駅を出発し、左に向かうと慶応大学があり、右に向かうと40数階建ての高いビルがあり、人はこれを「NECスーパータワー」と呼ぶ。1990年代、田町近辺には高層ビルはこれしかなかった。これがかの有名な日本電気株式会社(NEC)の本社ビルである。

NECは国際的にもメジャーなICTメーカーの一つだ。中日国交正常化以前、テレビによって中日国交正常化交渉中の情報をすぐさま日本の民衆に伝えることができるよう、日本代表団が中国入りする前、NECの衛星通信方面の専門家があらかじめ北京に入り、衛星中継の回路を敷設し、日本の民衆に中日外交交渉の具体的情報をすぐに知らせたものだ。

あっという間に中日国交正常化から50年が経ち、この期間中、NECの業務にも大きな変化が起きた。1970年代にはNECは中国の電話交換機の最大の供給業者だったが、現在ではこの会社はすでにクラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、5G、AIなどのハイテク技術の世界クラスの企業へと進化している。特にスマートシティ建設、健康・介護、企業デジタル化モデルチェンジなどの方面における成績が際立っている。

NEC中国の総裁である塚本武氏は2018年4月に中国へやってきた後、絶えず新たな市場を開拓し始め、中でもスマート介護方面で積極的な成果を得ている。中国の消費者は今までNECのコンピュータ等の製品になじみがあったが、現在推進中のスマート介護業務についてははっきり認識しているわけではない。このため、筆者は塚本総裁にインタビューを行った。


インタビュー

Q:日本企業(中国)研究院
A:塚本武

Q:NEC(中国)の建物に入ると、今までは主に通信・電子製品方面の展示を目にしたものですが、今ではITやインターネット技術に基づくソリューション方面の内容が多く、特にスマート介護方面の内容が充実しているようです。これはNECの中国業務に比較的大きな調整が行われ、スマート介護などが全体業務の中でより際立つようになってきたように感じさせます。

A:われわれは世界的なICT(情報通信技術)企業です。1970年代、われわれは北京に移動式衛星地上ステーションを設立し、後には中日海底ケーブルを敷設し、北京と武漢のPCMマイクロ波通信設備の注文を受け、それから後は半導体製造、モバイル通信、交換機、光通信設備、コンピュータソフトなどの多くの分野で中国と密接な協力を行ってきました。

21世紀に入ってからは、NECのソリューション事業が正式に中国で展開されました。中国社会が直面する問題のうち、日本が先行して体験した経験があるものは何か、これは私がずっと考えてきた問題です。中国社会の高齢化現象はますます深刻になっていますが、日本は中国よりも3、40年早く高齢化社会に入り、高齢化問題に対応するソリューションにはNECのICT技術がたくさん使われています。われわれのソリューション事業と中国社会の需要をつなげ、スマート介護方面でわれわれが貢献することが、2018年に私が中国に赴任した後の仕事の中でも重要な内容となったのです。

Q:ここ数年、上海の中国国際輸入博覧会、北京の国際サービス貿易交易会などでNECのスマート介護方面でのソリューションが詳細に報道され、私自身も以前に数回塚本総裁を取材しました。NECの今までのソリューション提案はソフトやシステムに重きを置いていたように思いますが、今ではソフトやシステムはハードの検査・測定設備としだいに結びつけられ、特に最近発表された活動能力検査測定一体機は、輸入博覧会などの会場で多くの観衆を引き付けています。NECはどうしてこのような製品を開発しようと思ったのですか?

A:ICT企業として、われわれは最先端のビッグデータとAI技術をもっています。例えば3Dセンサー設備と画像識別技術により、人が歩く時の姿勢を測定でき、歩行姿勢の特徴をデジタル化処理することにより、全身の活動能力方面の36項目の評価測定結果を得ることができます。歩行者は自分の年齢と性別を入力すると、すぐさま測定結果が得られます。特に同じ年齢で同じ性別の人とビッグデータで比べてみると、自分の活動能力が一目瞭然です。こうしたデータにより、関係するソリューションを出すこともできます。例えば、歩く姿勢から転倒リスクを早期に発見し、予防措置を採るなどです。もし続けて測定すれば、歩行者の一定時間内の身体の変化を比較することができ、フィジカルトレーニングをより歩行者のニーズに合致させることができます。

Q:NECの活動能力検査測定一体機では、特につまずいて転ぶのを防ぐ役割が強調されているように思われます。

A:はい、そうです。高齢者がつまずくのは障害物があったせいだと思われがちですが、実際にはつまずきや転倒は、歩行速度や歩調、歩幅、脛骨の傾斜の左右差、つま先の方向の左右差、つま先を上げる高さなど自分自身に内在する要素と関係があります。3Dセンサーと画像識別処理により、関連パラメーターを得た後、歩行者、特に高齢の歩行者に歩くとき、運動するときに気を付けるべき事項を伝え、効果的につまずきを防ぐことができるのです。

日本の関連調査報告を見ると、高齢者の転倒は、47.3%が歩行中につまずいたことによって起きたもので、階段の上り下りの時に起きた転倒は16.9%に過ぎず、比較的強度のある運動の際に起きた転倒は15.2%、その他の運動では20.3%です。ここからも高齢者が転倒するのはつまずくことが主な原因となっているのが見て取れます。もし歩行中のつまずきを効果的に防ぐことができれば、かなりの程度高齢者の転倒という現象を防ぐことができるでしょう。

当然、活動能力検査測定一体機は老人ホームや高齢幹部活動センターなどで使えるだけでなく、スポーツジムなどの専門サービス機関でも使うことができます。スポーツジムなどで使用者の測定結果を蓄積し、過去データの統計をとって、グラフとして出せば、使用者の身体変化を確認でき、指導あるいはトレーニングプランを作ることができます。

群馬県中之条町で、かつて似たような歩行改善の端末設備を使い、高齢者の歩行活動について10年余り調査とトラッキングを行ったことがあります。設備による歩行の改善により、高齢者の健康意識が向上し、健康状態の維持が続いて、現地の医療費の支出が顕著に下がったことが分かりました。

ここ数年の間、私は多くの地方自治体の会議に参加し、世界工業インターネット大会、中日経済協力会議ヘルスケア・サブフォーラムなどの場で講演を行ってきましたが、中国市場のスマート介護に対する需要は非常に高いと感じると同時に、NECの関連技術および中国戦略も詳細に説明してきました。今後、われわれはスマート介護の方面で中国の関係各方面と非常に幅広い協力の余地があると思います。

作者は日本企業(中国)研究院執行院長

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