『必読』ダイジェスト 米中貿易全国委員会(USCBC)が7月16日、2025年『中国商業環境調査』レポートを発表。この調査は3月から5月にかけて130社の米国会員企業を対象に行われたもので、そのうち半数以上の企業が中国における年間売上額が5億ドルを超えている。
過剰生産能力に悩む米企業が大幅に増加
調査によると、対象となった米企業のうち42%が「中国の過剰生産能力の不利な影響を受けている」と答えているが、昨年の25%に比べ大幅に増加している。
米中貿易全国委員会のショーン・スタイン会長はメディアに対し、今年は2016年以来初めて「過剰生産能力」が回答企業の「10大試練」に入ったと語っている。「リターンが減少すると同時にリスクも上昇している。……中国政府にとって投資の減少は意外なことではないはずだ」
調査結果によると、中国の過剰生産能力問題はすでに鉄鋼などの工業分野に主に影響を与えているのみならず、医療や消費品などを含めたより広い経済分野へと拡大している。工業と製造業の分野において、過剰生産能力の影響はとくに顕著で、影響を受けている企業の割合は92%にものぼる。「影響を受けている」とした企業の81%が、「自分のいる業界では価格の下落現象がすでに起きており、利潤率も縮小しつつある」と回答している。
レポートによると、「投資と生産が中国の経済成長の中でより大きな割合を占めるようになるにつれ、過剰生産能力に関する憂慮はいままさに深刻化しつつある」という。
地政学的な憂慮
調査結果によると、今年米国企業が中国において直面している「十大試練」のうち、三項目が地政学と直接関連している。なかでも「中米関係」は二年連続トップであり、「関税」は昨年の8位から今年は2位へと上昇している。
4月2日以降、関税税率は上がり続けていて、さらに中米二国間交渉が断続的に行われていることで、企業マインドは打撃を受けているとレポートは指摘する。
88%の企業が、「業務のなかで中米関係の緊張による影響を受けている」と答え、昨年の79%よりもさらに上昇した。また、68%の企業は「関税が直接経営に衝撃を与えている」と答えた。製造業と科学技術企業が受ける影響がことのほか顕著であり、その割合は90%に迫っている。
約40%の企業が、「すでに米国の輸出規制政策の影響を受けている」と答え、「売上損失」、「顧客関係の中断」や「業務上の信頼が間歇的に損なわれている」などの問題を経験している。
「輸出規制の影響はもはや半導体産業からより広い分野へと広がっている」とレポートは指摘する。2025年には半数近い企業が、「輸出制限のために注文を失った」と答え、そのうちの56%が「その注文が中国の競争ライバルの手にわたった」としている。
ショーン・スタイン会長は、「米国の輸出規制は“きわめて正確に”行われる必要がある、なぜなら米国企業がひとたび市場から撤退すれば、欧州や日本あるいは中国の企業がたちまちその穴を埋めてしまうからだ」と呼びかけている。
ビジネスに対する自信が低下
「今年は中国で新たな投資を増やす」と答えた米企業はわずか48%で、昨年の80%をはるかに下回った。米中貿易全国委員会のカイル・サリバン副会長は、過半数の企業が今年中国で新たな投資を増やす計画について「まったくない」と答え、「これは史上最高の割合で、われわれが今までに見たことのない新たな状況だ」と語った。
これと同時に、三分の一(34%)を超える企業が、過去一年間で、過去の在中投資計画をすでに一時停止あるいは縮小したと答え、この割合は昨年の26%と比べて上昇している。
このほか、27%の企業が、「業務の一部を中国から撤退済みあるいは撤退計画中」と答えているが、2024年のこの数字はわずか19%であった。今後五年間の中国における業務の見通しには、29%の企業が悲観的な姿勢で、この調査が始まって以来最も高い数字となった。
それでも中国を放棄することは望まない
同時に、調査から明らかなのは、「多くの米企業は短期的には新たな投資計画をストップさせてはいるものの、長期的には中国市場の開拓に力を入れていく」ということだ。
80%以上の企業が、「中国における投資は中国本土市場へのサービスのため」としている。ほとんどすべての企業が、「中国における業務がなければ、企業が世界における競争力を維持することはできない」と考えている。
「中国は世界の製造とイノベーションの中心であるため、米国企業は中国における運営によって独特のビジネスチャンスを得ている」と調査レポートは言う。「米企業にとって、競争が熾烈な中国市場において運営能力を維持することは、依然として極めて重要である。これは彼らに中国において日増しに増えつつある中間所得消費者層の恩恵を受けさせ、また企業が世界における競争力を維持するために必要な新たな技術と新たなやり方を試す実践の場を提供している」とショーン・スタイン会長は語っている。
「貿易の緊張情勢と関税が北京とワシントンとの関係を複雑化しているものの、米企業は中国市場を放棄しないだろう思われる」と、フランス通信社(AFP)はコメントしている。
(『日系企業リーダー必読』2025年8月5日の記事からダイジェスト)
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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